2001年3月21日 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 御中         「保育所定員の弾力化等について(案)」に関する意見                         全日本自治団体労働組合(自治労)                            中央執行委員長 榎本 庸夫 1.はじめに  今回、政府行政改革本部規制改革委員会の提言を受け、厚生労働省が「保育所定員の弾力化等について(案)」に関する意見募集手続きをしたことに対して、以下の通り考え方を整理し、見解とします。  私ども全日本自治団体労働組合(自治労)は、地方自治体の職員を中心に、自治体関連民間サービス業の労働者等が加盟する労働組合であり、そのなかに保育労働者も加盟しています。自治労は、「保育を必要とする子ども」たちへの保育サービスの保障をめざし、子どもと接する保育労働の現場を核に運動を推進しています。  私ども自治労は、公的な保育サービスの基本について、     @基本的な保育ニーズだけではなく、多様なニーズに対応できること。     Aサービスの質が確保されていること     Bセーフティー機能が確立していること     Cそこで働く者たちのワークルールが確立していること の4点にあるとして、規制緩和のパブリックコメントを含めた政策判断をしてまいりました。  また、児童福祉施設最低基準の第4条第1項で「児童福祉施設は、最低基準を超えて、常に、その設備及び運営を向上させなければならない」となっていることを重く受け止めながら、今回の「保育所定員の弾力化等について(案)」に対してもこの基本をもとに判断し以下の各項目について、意見を述べます。 2.「屋外遊戯場の設置について」に対する意見  従来の通知の再通知ということであれば、現状維持ということで、そもそもこの通知の必要性がないと考える。  屋外遊戯場の代替について改めて再通知をするのであれば、代替による問題を克服したり、補うような内容を盛り込むべきである。また、最低基準上の園庭の面積要件についても再通知すべきである。  屋外遊びは子どもの育ちにとって必須であり、子どもが長時間過ごす保育所において、屋外遊戯場を代替させることが、子どもにとって肉体面も精神面にとって問題がないとは証明できない。そうである以上、待機児童問題の存在などの、例外的、暫定的、時限的な緩和にとどめていることを明確に示すべきである。  園庭が同一敷地内にないことによるデメリットを補う手段、移動手段の安全性の確保、保育内容に対する監査等について、明確な基準が必要であることも併せて通知していくべきである。  今回の対策で屋外遊戯場のない保育所を認可した都道府県、政令指定都市、中核市においては、近い将来にその園の代替地を確保、移転するような方策を検討するよう働きかけるべきである。  また通知文には児童福祉施設最低基準第4条を明記すべきである。 3.「乳児室及びほふく室の面積について」に対する意見  現状の最低基準が「乳児室1.65uまたはほふく室3.3u」と定められており、この基準自体が曖昧であり、解釈に混乱をきたしている。  今回の案では明確化するということだが、最低基準の解釈が「かつての乳児保育指定保育所にかかる面積基準(5u)」でないことだけ明らかにされたに留まり、具体的には曖昧なままである。  むしろ、現状の1人あたり乳児室1.65uという基準は、ベビーベッドをおくと残るスペースはなく、あらためて乳児の保育環境がいかにあるべきか検討し改善が必要である。  また、子育て支援相談室などの転用を促しているが、子育て支援センター事業を促進してきたことを「余裕スペース」と評価することは不適切である。  今回の対応をとるにしても、将来的に子どもが育つ施設環境をどうするのか、展望も併せて示すべきである。  また通知文については児童福祉施設最低基準第4条を明記すべきである。 4.「保育所入所定員の弾力化について」に対する意見  定員の弾力運用に対して、保育所最低基準との照合、監査体制に不安が残り、年度後半以降の25%超えて入所を認めることは問題が多いと考える。仮に定員の弾力運用を実施する場合には児童福祉法最低基準の遵守を厳に指導すべきこと、時限的であることが必要である。  また、年度当初からの定員超過の運用が常態化している保育所においては、認可定員の変更を改め、積極的な対応を求めるべきである。また定員の弾力化運用にともない、保育単価の区分設定の改善もあわせて行なうべきである。  また会議等において厚生労働省による、定員超過を奨励するような提起は慎むべきであると考える。定員超過は保育所の整備が遅々として進まないことに対する緊急避難かつ地域的・時間的に限定した対応であるべきだ。保育所の入所率の高低で取り組みの積極性や保育所運営の効率性を推し計ることは、保育の質の確保という視点から問題である。 5.「短時間勤務の保育士の配置について」  年度途中の入所に伴い最低基準上定数増となる保育士について、短時間勤務の保育士の比率制限を撤廃することは、実際のニーズに対応しながら弾力的に保育士を配置するために一定やむをえないと考える。  短時間勤務の保育士の規制撤廃を訴える政府行政改革本部規制改革委員会の本質的な立場は、保育士を常勤雇用とすることをコスト負担と見なし、それを軽減することである。  短時間勤務の保育士に安易に依存した保育所経営は、保育方針やカリキュラムの職員間共通理解、保護者と子どもの生活実態を踏まえた対応、信頼関係づくりなどに一貫性が失われ、結果的に保育の質の低下をきたしかねない。保育の専門性を確かなものにするためにも、専門職としての常勤保育士を配置し、それにふさわしい雇用形態を基本とする姿勢は今後も堅持すべきである。  やむを得ず短時間勤務の保育士を導入する場合でも、現状の常勤保育士によって確保してきた勤務時間数を下回らない配置など保育の量と質を保障することを基本に、給与水準等、ワークルール確立のための仕組みや、研修の確立が必要である。 6.「公立保育所の業務委託先についての要件の設定について」に対して  委託先の基準については、関係法規(児童福祉法、社会福祉法、児童福祉施設最低基準等)や昨年の規制緩和策で出された関連通知すべてを遵守させ、子どもの人権、生活環境、保育内容を守るために、保育内容等の実績や継続性への保障を検証させることが必要である。また業務委託を行なう場合には、住民、、学識経験者の参加、さらには既設のものの委託に際してはそこの労働者代表と保護者代表等の参加による選定委員会を設置して検討させることが必要である。  昨年の認可保育所の民間企業参入の際にも指摘したが、民間事業者の参入拡大を行なう場合には、倒産や業務放棄など突発的な事態に対しても継続した保育の保障を可能となる対応策を構築すべきである。また経営主体が多様化することが前提の制度で保育の質を維持・向上を図るために、子どもの権利が保障・擁護されるシステムを含んだかたちでの社会福祉施設・事業に対する第三者評価や苦情解決の制度を早急に確立することが必要である。 7.抜本的な待機児童問題の解決を  今回のような規制改革委員会の提言を推進する社会・世論の背景として、大都市圏を中心に慢性化しつつある待機児童問題があり、この問題を解消する行政施策が求められている。規制緩和は抜本的な待機児童解消策としての実効性に疑問があると認識している。  国や自治体が積極的に保育所新設に取り組む必要がある。また、児童福祉施設最低基準の保育水準を下回らないことを前提に幼稚園等の既存の公的施設などの活用や、あり方含めた検討が必要である。                                   以  上