9/19 自治体の決算審査ってなんだべ?
自治体議員がSNSで「決算審議」「決算審査」で忙殺されている姿ばっかりになるこの季節です。
政策活動も政務活動も棚上げで、なんだかわからない「決算審査」で忙しそう、というのが支持者である一般有権者の感覚だろうと思います。
一般の人向けに自治体の決算審査って何だろうか、ということを書いていきたいと思います。
まず「決算」なので、前年度の会計を確認して、承認するかしないか(「認定」するかしないかと正式にはいいます)を市民の代表として判断します。この点は、企業の決算や、NPOや町内会、労働組合などの総会での決算と変わりません。
少し色合いが違うのが、前述の社会の諸団体と違って、自治体の事業報告は議案として出てきません。したがって前年度取り組んだことの事業報告の確認も、決算審査のなかでやります。ですから会計的に合っているかどうかだけを審査してはダメで、地域経営の大局的な視点から、個々の事業の適正性や成果まで確認していく作業をします。行政が判断できる十分な資料を出してくるとは限らないので(2~3年前まで朝霞市役所もひどかった)、その場合はとにかく裏取り情報収集にあけくれます。市の全事業はできないので、会派や、同じ委員会の議員と、得意不得意の分野を暗黙の分担をしながらやっていたりします。
それで、自治体議員は、議案をもらって質疑、討論するまで、延々と資料と格闘し続けます。短い議会で1ヵ月、長い議会だと11月に委員会審査して、12月に採決しますので、3ヵ月にわたる作業になります。
企業やNPOの決算・事業報告のようにさらっと審議が終わらないのです。その理由として、
①自治体の運営が強制的に徴収している税金で成り立っていること、
②企業は事業と利益、NPOは理念と事業を共有している仲間によって運営されているので、予算が決まって正しく執行していれば異論が出ることは少なく、あっても内部で処理できますが、自治体の仕事の成果は、地域や政治的スタンス、年齢によって市民の期待や要望や受け止め方はまちまちで、いろいろな評価が可能であるし、終わってみていろいろな立場から評価して次年度以降の政策決定に反映すべきであること、
から、使ってしまった予算が正しく執行されているだけを判断していればよいか、ということではなくなっています。
決算で何をしているかというと
大局的には、
・自治体経営が経理的な正しさだけではなくて、地域全体の幸福度を上げているか、
・自治体経営が、持続可能な体質で行われているか、そのなかで課題解決や未来への変革のための冒険を正しいやり方と規模でやっているか、
・自治体経営に、経理面以外も含めた不正(手続きの飛ばし、人権侵害、合意形成の手抜き・トラブルの放置)が行われていないか、
・自治体経営が、長期的な目標や大きなアジェンダに向かっていっているか、
・そうしたことをきちんとやらせる仕組みが整っているか、
・優先順位を取り違えた仕事をしていないか
を確認し、詳細では
・個々の事業が、理念に沿った事業展開になっていたか、結果に近づいたか、
・個々の事業が、問題や副作用を起こしていないか、
・個々の事業の、目標と成果が説明できるようなものか、とくにアウトカムという効果に着目した成果が確認できているか、
・個々の事業がうまくいかないときに、その目詰まりとなっているものは何か、他のやり方があるのか、
を確認していく作業です。
経理的な正しさを二の次に書きましたが、基本的に経理面は、監査委員が詳細な確認をしているので、それを信頼するのがベースです。また監査委員は見つけたすべてではありませんが、目立つ問題点や構造的な問題がある経理的な問題点は報告書として議会に提出しています。ただし1943年以来、自治体の監査委員の任命は議会から市長に取り上げられている制度なので、市長に甘い委員を選ぶことは可能で、監査委員としての信頼性は日頃から見ておく必要があります。
議員は、市民の代表として決算を認定していくので、財政運営や市役所の経営に対する市民の納得性というのが基本的な視点です。市民から市役所の運営に不満の声があれば、それが合理的なものなのか、単なる願望なのか日頃から整理して、合理的な不満の声は、決算のときのチェックの視点にしています。
決算を議会が多数決で不認定にした場合ですが、市長は、議会に対して、改善案を示さなくてはならないことになっています。採決で反対するときには、反対理由が改善点が明確になるように整理していく作業があります。
また決算全体としては可としても、特定の部分に問題があるときには、附帯決議を付けることもあります。昨年、朝霞市議会では附帯決議が2案あって、1案が可決されて行政事務の見直しにつなげています(十分ではありませんが)。附帯決議を出すには、決算案の審議全体を見て、議員が文案を作成することになります。法律的な文言様式もある程度は整えて提出しなければなりません。何を指摘しているかも明確であった方がよいです。
そして決算審査のときに、賛成理由、反対理由を最後に議員が言いますが、それらが行政事務の改善になっているのが、次の予算案が出てきたときの視点となります。行政から率先して「ここ改善しました」と報告されることもありますが、多くはしれっと予算案に反映させているので、予算案の審議でも、決算でどの議員からどんなこと指摘されて直っているかな、と確認していくことが求められます。
そして議会なので、多人数の議論によって多面的に問題点を考えて、言葉にしていくことが必要なことです。監査委員や市長のような一人でやる場所ではないのです。
以上のようなことが13年市議会議員をゃってきての、自治体議会の決算審議の意味かなぁと、様々な文献を見たりしながら確認してきたことですが、①このようなことは誰も教えてくれないので、気づかない議員はただ終わったことにたるい議論をやっているなぁ、としか思えなかったりします。②自分自身が完璧にできているとは言えません。また議場では相手あっての話なので、相手が何の問題意識もなければ、議員と委員長と行政だけの議論になっていくのだと思います。
そして、(発言したかどうかは別として)決算議案ときちんと向き合った議員は、間違いなく、自治体の政策の全体像や、政策決定のバランス感覚が鍛えられていきます。それをしなかった議員は、企業の経営者や労働組合の経営分析でも担当したことでもなければ、首長になったりしたときに大変な苦労をするのではないかと思います。
●まだまだ気づいていないやるべきことがあるかも知れません。朝霞市という市役所の弱点を13年見て、それをチェックするために、地方自治の知見のある方々の書いたものや講演したものと触れながら見つけてきたものです。財政破綻寸前は経験しそのときの教訓が大きかったですが、一方で大々的な汚職には直面したことがないので、もっと見ておくべきものがあるのかも知れません。
いくつかの自治体議員選挙を手伝っていますが、選挙ポスターの公営掲示板から考えさせられることがいっぱいあります。あんなにたくさんの欄が必要なのかということです。必ずいくつも使われない欄があってムダなんです。
