戻り露ですが、水源地に降ってほしいものです。
●21日に参議院議員選挙が終わり、予想どおり民主党が大敗し、お約束のように野党第一党内の責任のなすりあいが始まっています。
民主党は、24日に役員会に次ぐ意思決定機関である常任幹事会を開き、菅直人元首相に対して、民主党の公認を取り消した大河原まさこ候補を応援したということで、「除籍」として党から追放することを提案したようです。
私は、①公認を選挙直前に取り消された大河原氏を応援したことに対する「反党行為」と「除籍」の量刑のバランス(量刑妥当性)、②大河原氏を公認して取り消すまでの民主党執行部の側の問題、などから、今回の提案はあまりにもむちゃくちゃだと思っています。
これに対して、菅元首相は必死に反論しているようですが、私はこういう政治的狂気にとりつかれた組織は、決着つくまで止まらないと思います。佐藤優氏も小泉政権期にスケープゴートになった政治家にそう助言してきたようですが、身近におきるとそうだなと思わざるを得ません。
今回「除籍」されなかったとしても党員資格停止や発言権を奪うような処分が下され、そのことをめぐって何もできない状態にされるだけではないかと思います。意図は選挙の後処理ではなく、とにかく菅氏を追い出したい、というポスト菅世代の総意なのでしょうから、そんなところに居留まってもしょうがなない、自分から離党するのもばかばかしいので、「除籍」させればいいのではないかと思います。
では、菅氏を追放し、また一部離党者も出てくることでしょうから、残った民主党がどこへ行くのでしょうか。マスコミや政治評論家の「野党よまとまれ」の大合唱のもと、みんなの党の一部を巻き込みながら維新への合流をせざるを得ないのではないかと思います。維新と、前原的価値観が合流して「坂の上の雲新党」になっていくのでしょう。
あまりある民主党への愛党精神から鈴木寛さんを応援した民主党の若手自治体議員が、かなり声高に菅氏の追放を求めている(中選挙区制時代の選挙を知らないからほんとうピュアなものです)ということですが、肝心の彼らもどこに連れて行かれるかわからない政局になってきているということだと思います。
そもそも今日の菅追放劇から逆算して、大河原公認取り消しが行われたのではないかと穿ちたくなるぐらいの流れです。
その「坂の上の雲新党」が成功するのか、私は否定的です。維新側の度重なる国益を損なうような失言が治るとも思えませんし、民主党側の今回の蛮勇ふるった勢力も、処分をちらつかせるだけの非民主的な運営が体質的にあり、まともな統治能力を持っていると思いません。一時勢力を伸ばすでしょうが、どこかで限界が来ることでしょう。どうなるにしても歴史の評価にたえられないことが明らかになる時が来ると思います。
旧民主党的な価値観、源流は社会党を追放された江田三郎さんあたりにあると思うのですが、世間に解釈されている「リベラル」なもの(私はネオリベラリズムも含むこの言葉に違和感があり、先日ワーク&ウェルフェア派と書きました)を継承する政治グループを、あと2~3年かけてまとまりにしていき、受け皿をつくっていかないといけないのではないかと思います。
●民主党が逆風の選挙が何回かありしまたが、そのときに、民主党の選挙を支えたのが大河原さんの出身の地域政党・生活者ネットワークです。民主党が街頭演説部隊しか用意できないなか、電話かけなど嫌がる仕事を引き受けてきたのが生活者ネットワークの活動家たちで、そういう人たちへの敬意のない政争はほんとうに良くありません。
●twitterなどでは、民主党を心配する文化人などを中心に、鈴木寛さんが比例区に回れば、あるいは大河原さんが比例区に回れば、よかったのに、とおっしゃる人がいます。いまさらたらればの話も仕方がないのですが、これはかなり無理な調整です。
参院の比例区は個人名投票をかき集めなくてはならず、これがさして政治に深い理解のない有権者にはわかりにくい話で、誰も個人名を書いてくれないというのが現実です。労働組合だって2~3年前に候補者を決めて、しつこく運動をして、それで組合員の2~3割しか個人名を入れてくれないぐらいですから、公示日直前に移ったのでは大惨敗となるもので、そのことが引退勧告になります。
大河原さんの場合で言えば、大河原さんがしたかったことを民主党というステージでできるような仕組みを用意して、しばらく非議員の政策責任者として処遇することが妥当だったのではないかと思うことがあります。ただし今日のこの粛清劇を見ると、そんなお花畑の話でまとめられた話ではなく、大河原さんが利敵行為として立候補させて菅元首相の追放するための助演として必要だったのではないかと思わざるを得ません。
●もちろんこんなポスト菅世代が跳梁跋扈する民主党にしてしまったのは、結党直後からの菅氏の振るまいにあったことは否めません。あるいは寝首をかくであろう質の悪い子分たちをかわいがってきた面は否定できません(このことは何度もブログに書きました)。処分強硬派の長島昭久代議士など、もともとは菅氏→最も優秀な後継者山本譲司氏を経て、今の地盤を継承しているんですから。もう今から名簿返せなんて行っても後の祭。非合理的ですが、因果応報な面は否定できないと思っています。
●24日の常任幹事会には鳩山由紀夫氏が民主党離党後の発言をめぐって処分を行う提案をしようとしたらしくて、何とも頭を抱えました。また、抗議集会でも開けばいいものを、処分で何とかしようとしているところに、ポスト菅鳩山世代の思考回路が見えるというものです。
党を離党した人が、離党した後の発言をめぐって、政党が処分するというのは、私的自治を超える違法行為で法的思考全般にももとることです。例えば、日本からアメリカに国籍を移した人が、国籍を移した後、アメリカの領土内で、日本の法律にしか抵触しない違反をしたからって日本政府が逮捕できるのか、という問題です。ちょっと考えればわかるのですが、自分たちが天下国家と思い込んでいる志士たちには気づかないということを物語っています。
私も労働組合の関係で一時党員であったことがあります(民主党政権誕生前ぐらいに離党したと思う)。そういう私が、参院選で大河原さんを応援したことが「反党行為」で処分にかけられるかも分かりませんね(笑)。
●そもそも政党助成金をもらっている天下の公党が、国民に影響の大きかった元首相まで務めた人を追放する、辞職を迫るということなら、ホームページなりに、常任幹事会で具体的にどのような提案したのか、情報公開すべきなんじゃないでしょうか。人には情報公開や説明責任を求めているのに…。