1/10 3000円配るために全国で100億円
国の 来年度予算、いくつか筋悪な話があります。その一つが、消費税の逆進性の緩和のために、子育て給付金を3000円配るそうで、全国で1000億円使うそうです。
その一方、学校の教職員の人件費は、退職分以上に人を減らさせるみたいで、3100人、直接の補助金で40億円をカットするようです。以前は、小学校1年生の35人学級をやめさせる、という案だったものです。
OECDの報告でも、日本の学校の先生は拘束時間が長い割に、勉強する力を子どもにつけさせるための時間が他の国より少ない、という結果が出ていました。そんな状態はきちんと物量を投下して解決しなけりゃならないのではないかと思うのですが、逆のことをしています。
学校現場から人を引っこ抜いて、子どもに勉強させるための有用な雇用を減らして40億円浮かせた一方、1000億円使って、1回飲んだら、1回ガソリン満タンにしたら、競馬や競艇だったら2~3レースやれば消えてしまうような現金を、子育ての名のもとに配ってしまうのです。
教育のためにも、雇用情勢のためにも、景気にも全く良くない判断です。
仮に1000億子どもに使うにしても、その金額で完全に問題解決できる使途に使うべきです。児童相談所の職員配置は足りているのか、児童養護施設の職員配置は十分なのか、低学年の補助教員がちゃんとつけられているのか、雇用も創りながら、国民が伸びきれない課題を解決するための使途ならいくらでもあるはずです。
道徳教育の強化とか偉そうなことを言う安倍政権ですが、自堕落を促すようなこんなとんちんかんな政策決定が、道徳的なのでしょうか。
私も昔から問題にしていますが、都議の音喜多さんが問題にているのはこの事務コストです。
この3000円配るコストが、普通にただ封筒に入れて配ればこんなにはコストがかからないのですが、最近の役所は何でも電算機を通してシステム改造して事務をやらないと気が済まない。今年限りの配布なのに、朝霞市でも、これだけで300万円~1000万円近くの改造コストを電算機のシステム会社に払うハメに陥ります。
私は配り間違いのロスがあったとしても、払うべき人のリストを作って、蛍光ペンで消し込みながら、本人確認して現金を窓口で渡してしまう方が効率的ではないかと思いますが、財政が悪かろうが現金がなかろうが「こういうもんだ」というところから来る発想法。発想が不自由でダメなんでしょうね。
さらには、どんなに高いシステム改造やっても、国が払ってくれるので、その自覚がない。その裏側で教員配置が悪化しているのです。
他にも、郵便で申請書を送って戻して、支払通知を送って、銀行に振り込み手数料を払って、それぞれ膨大なコストがかかっています。それで3000円を配るのですよ。
何かバランスが狂っているとしか思えません。
来年度予算では、介護報酬の切り下げもまたひどい話です。
介護労働者の低賃金ぶりは有名で、結果としてなかなか良い人材が集まらない、結果として職場の雰囲気が悪化して、崩壊状態にある、ということは昨年あたりに出た新潮新書でも話題になったはずです。
介護報酬を切り下げたら、介護労働者の賃金改善なんかできません。そういう声を受けて、また自民党的な「親心」として、「介護労働者の処遇改善加算」をやるらしいのです。しかし以前同様の加算が行われ、革新政党も含めて喜んでいたら、ただではもらえず、いろいろ制約がかかって、うまく申請できない、ということがありました。そのための事務手続きもバカにならなくて、事務職員の残業も増えたとも聞きます。
国民に向けてはどうせ介護保険なんか使えないんだろう、というメッセージを出すことになります。そうすると、介護施設の青田買いや、民間の介護保険に加入したりして、結果として個人としてはかなり非効率な介護コストの負担をしなければいけない社会になるかも知れません。
介護施設は玄関やパンフレットに「財務省出身者の利用おことわり」ぐらい出した方がよいのではないかと思いますね。