2012.12.10

12/10 嘉田代表「消費増税の前に無駄をカットすべき」の誤り

二本未来の党の嘉田代表が、「消費増税の前に、行政のむだをカットするべきだが、民主党政権が行った『事業仕分け』のように、個別の事業を対象にカットしようとすると、関係団体から反対されるので、やり方がだめだ」と言っているようです。

とんでもない間違いだと思います。消費税増税に反対するのは国民から富を奪い景気を悪くするから、というのが消費税増税に反対している政党の言い分だったと思います。
しかし、一方で消費税増税をしないために、財源づくりのために、支出の切り詰めを「事業仕分け」のように強引にやれば、マクロ経済としての観点では、国民からすでに奪っている税源という富を国民に返さなくすることになる意味を持つので、増税と同じ効果になります。また、ミクロ的には、国民の前のお白州で、仕事の中味も効果もわからない有識者が無駄だ無駄だと一方的に袋だたきにするやり方は、やられた側に根深い怨念を抱えていきます。それは風がやんだ途端、みんな裏目裏目に出てくる結果となります。

そして、節約すれば増税はいらないという考え方は、真っ先に最も発言力のない社会的弱者を直撃します。小泉構造改革のときには、母子家庭への補助の大幅削減や、障がい者福祉への利用高比例の自己負担の導入が行われましたし、介護保険の給付のカットも行われました。生活保護バッシングは今でも続いています。

それはどこかには必ず無駄はあると思いますが、それを1つ1つ潰している間に、財政はどんどん悪化して、増税しないより最悪の結果になっていくと思います。また無駄ゼロというのは終わりなき話で、どのタイミングで無駄がゼロになったのか、証明することは不可能です。


無駄ゼロは、公務員の賃金を終わりなく下げ続け、福祉のコストを切り詰め、年金をどんどん切り、無料の医療や介護をやってくれる人に政策が飛びつき、そして賃金デフレみたいなことを続けていくことになります。繰り返していけば、それは貨幣の評価がどんどん下がり、無政府共産の貨幣社会の終焉しかありません。誰もが納得する無駄ゼロはその状態にたどりつくまでありえません。そこで初めて消費増税が認められるわけです。しかし貨幣社会がない無政府共産なのですから、消費増税なんてこと自体があり得ません。つまり、無駄をなくすまで消費税増税しません、というのは、無政府共産社会がやってくるまで消費税増税をしません、と言っているか、その逆に、途中段階で財源調達をまじめにやろうとすればいつか国民を裏切ることをします、と言っているに等しいことになります。

増税反対を言うのは結構ですが、それを節約すれば何とかなる、というのはあまりにも安易な論理で、民主党がいつか来た過ちを、日本未来の党はどうしてここまで見事に繰り返すものかと思っているところです。

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2012.11.30

11/30 「未来の党」の基本政策は40点

自民党が右旋回、それに維新に対して、退潮確実な民主党がこれまた徐々に経済政策を右旋回。そういう中で誕生した「未来の党」については期待したいものがあります。
政局的立ち位置は、これから大いに期待し、可能性を秘めているのではないかと思います。

しかし、昨日公表された政策については40点ぐらいの評価しか与えられません。
全体的には、あれだけ実現可能性をめぐって自民党に攻撃された2009年民主党マニフェストの問題になっているところがかなり再掲されています。
選挙後、もし未来の党が政権協議に入ることになったときに、必ずこの問題は障害になり、未来の党はかなり激しく攻撃されていくのではないかと心配しています。

まずいところをとくに3点指摘しておきたいと思います。

①社会保障政策がまったくなっていない。15点。人生トータルでの社会と個人の関係がきちんと描かれていなくて、子ども手当、保育バウチャー、介護のみの地域包括ケア、最低年金制度など、パッチワーク型政策が、スケールを大きくして書かれているだけで、希望的観測にすぎません。
突然出てきた、保育バウチャーは、まさに小泉構造改革の中核的思想です。未来の党に流れてきた民主党の議員がそういう価値観、技術論でよいとしているのか、私は耳を疑っています。問題意識をもっているベンチャー型保育事業者の話は聞いていても、働きながら子育てしている人の話などを聞いていない、そんなふうに思います。
社会保障に関しての論理的な政策提言をまったく踏まえられていないと言ってよいでしょう。

②反増税が問題です。ここは0点。
国民の半分ぐらいは、高齢社会が安心できる社会になるために増税容認論なんです。しかし今の自民・民主の増税容認論は、財政問題からくる国家機関の維持だけに関心を払った増税推進論しかないわけで、そこに一石を投じる政党がないことが問題です。反原発、反TPPまではいいのですが、ここに反増税が加わったら、社民党や共産党との差異化はまったくできないと思います。また景気との関連で語るのは大きな間違いです。
増税を実施した民主党現執行部に対する対抗意識だけではダメです。国民のためになる増税以外認めない、というぐらいの表現にトーンダウンしないと、論理的にやりこめられ破綻します。

③卒だか脱だかわかりませんが、原発政策が各論ばかりです。ここは50点。
「発送電分離」とか「東電破綻処理」とか、是非論が分かれる細かい技術論や東電だけをスケープゴートにする感覚の言葉にこだわりすぎて、脱原発のロードマップが全然ありません。もっと大きな話をまずしてほしいと思います。
私は脱電力社会、できるだけ電力を使わなくても文明水準を維持できる社会システムを構築していくということから話をスタートさせていく必要だと思うのですが、技術論でしかない発送電分離とか、東電破綻処理ということに安易に飛びつくと、電力料金だけが関心のテーマになって、地域発電も盛んになる一方、下手をすると安い電力ということで消費者から遠く離れた分離された発電会社によって、原発運転が再開され、その発電量の巨大さから、市場を支配する危険性を感じています。

●増税をきちんと言わなければ、弱者切り捨て政策をやらざるを得ないし、弱者が置き去りにならない社会を実現しようとしたらそれなりのコスト負担を国民に要請しなければならないと思います。税金払うのいやだというところからスタートすれば、小泉構造改革や、初期民主党が事業仕分けでやったように行政のリストラをせざるを得ず、それは弱者切り捨てをせざるを得ません。
弱者をいためつける増税反対というのは論理的に間違っているのです。
増税が景気うんぬんありますが、増税と現物給付の社会保障をリンクさせていれば、中立です。問題は借金返しに大半を使った場合です。
それをふまえて、弱者切り捨てをした方が景気が良くなるのか、大半の人を底上げして行き詰まりをなくした方が景気がよくなるのか、公党なんですから、判断すべきところだと思います。

●未来の党には、小沢一郎的な思いつき政策をぶちあげて週刊誌にコケにされるようなことがないよう、きちんとシンクタンクを整備してもらいたいものです。

●こんな小沢一郎色の強い政策を出されると、ますます次の総選挙の投票先に困惑します。政治家の一員として、こんな選択肢しか示せない状況に有権者のみなさまに申し訳ない思いでいます。

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