2/21 教員逮捕「事故」の報告書が説明されました
21日本会議終了後、10月の教員逮捕事件の報告書ができたというので、市議会全員協議会(議決の必要のない案件を扱う会議)で教育委員会から説明が行われました。一般的な性犯罪だけではなく、顧問をしていた部活動を通じての長年の生徒への精神的な抑圧、ハラスメントが行われ、それらの相談案件が放置され続けてきたことから、教育行政の根幹に関わる大問題となって、改めて再発防止の報告をする事態になっています。
一同違和感だったのは「教職員事故を受けた再発防止策の検討報告書」というタイトル。今回の話は、性癖の抑えができなかった教員がわいせつ行為をやったということに留まらない事件で、部活動を中心に周囲に支配的な関係を構築するなかでハラスメント的関与を続け、子どもを不登校に追い込んだり、心に深い傷を負わせるような関わりかを続け、果てに生徒に性的加害を加えたという、構造と継続性のある事件で相当に根深い問題です。それを「教職員事故」と片付けることが専門用語なんだと説明する教育界の文化に、議員の大半が違和感を持ちました。
ハラスメントを「厳しい指導」と「行きすぎた指導」とわかりにくい定義を行い、厳しい指導はOKで行きすぎた指導をしなければいいんだ、行きすぎたというのは一様に定義できない、という話で、世間でのハラスメントの理解とかけ離れた状態なのが驚きでした。
教育委員会からは、子どもたちには「加害者にならない、被害者にならない教育をする」という説明が繰り返され、教員に加害者がいて、生徒に被害者にならないとはどういうことなんだ、と怒る議員もいました。私もそう受け止めています。
田原議員、小池議員、西議員、飯倉議員、利根川議員から問題点や疑問点、おかしな表現について指摘が続きました。
私からは、
①「事故」報告書には「人権」という言葉が一つも出ていないことを指摘しました。12月議会で市長が今回の事件を受けて子どもの人権相談窓口を設置する、と答弁し、人権侵害が続いたという認識があったにもかかわらず、あえて人権という言葉を使わず、人権に背を向け続けているとしか思えません。教員に倫理を持たせるらしいのですが、倫理という正義がときに上下関係を押しつけ、今回の教員犯罪の背景にあるような支配関係が肯定される、それを相対化する概念として子どもの人権という考え方が必要ではないか、ということを指摘しましたが、書き直すことにはなりませんでした。
②「事故」報告書を書くにあたって、リスク管理に関する参考図書や専門家の明示を求めましたが、教育委員会内部にある県教委、市教委、指導提要以外は参考にしたものはないということで、ハラスメント対策としてはあまりにも我流な報告書のとりまとめだと確認しました。
③部活動での勝利至上主義が教員にプレッシャーをもたらした、というロジックになっているなかで、勝利至上主義をどうするかという記述は報告書にありませんでした。教育委員会からは、勝利至上主義が問題という答えはありましたが、勝利至上主義をどのように緩和していくか、副作用を無くしていくかという具体策は答えがありませんでした。
④報告書は犯罪を行った教員がプレッシャーを受けたというような書き方です。それに対して、事件の状況は、部活動で賞を取ることを繰り返すなかで教員の非道な指導に周囲の教員がプレッシャーを感じて何も手を出せなかったのではないか、と疑義を示しました。
⑤子どもへのケアを心のケアだけしかしていない問題点を指摘しました。リーガルサポートもあるべきだったのではないか、という指摘をしましたが、次の本田議員がコンプライアンスの問題ではないか、と指摘するまであまり意味がわかっていただけなかったようです。
⑥これから導入が拡大していく部活動の外部指導員に対して、指揮命令系統の外にあるなかで、今回のような事件を起こさないためのコンプライアンスは徹底できるのか、すべきだと意見を申し上げました。
⑦12月定例市議会で、私が住民相談から指摘した問題案件などに学校教育部長が存在したと同意したにもかかわらず、問題として取り上げられていないことを指摘しました。
同じ会派の本田議員からは、
①ハラスメント案件や児童虐待として認識すべきなのに「行きすぎた指導」となっているのは問題ではないか。世間的に通用するか。
②コンプライアンスの問題を、生徒の自己防衛法の教育などにすり替えていないか。
③犯罪を行った教員が様々な副業をしていたことは把握されていたのかと確認し、一部、正規の手続きは取られていると答えられていました。
④報告書の作成に改めて第三者入れるべき、と指摘しましたが、教育委員会内部の組織運営のための資料とし、「内部統制」のためなのでいらない、と突っぱねられました。
⑤教員の在籍履歴の記述から、最初の第五中学校在籍が記述されていないのはなぜか、と問うと、あわてて掲載する、と答えました。事実関係の記述すら正確なのか疑わせるやり取りでした。
続いて外山議員、田辺議員からも意見や質疑が続きました。
最後、飯倉議員から、今回の全員協議会での議員から指摘された意見をうけて欠落しているところが多いので修正すべきではないか、市民に公開に耐えるのか、公開すべきではないか、と問うたのに対して、教育委員会内部の組織運営に使うのが主目的なので修正はしない、公開も校長会に徹底してから、という答弁。後ろ向きなので、私から、教育委員会で議決し、さらにはもう直さない決定稿というのであれば政策決定過程という言い訳もできずに公文書なのだから、情報公開の対象ではないか。この状態で直ちに市民に公開せよ、と求めると、執行部でしばらく意見調整があった後、HPなど公開する、と答えがありました。
●折しも市議会で、任期満了を迎える教育長の再任人事が市長から提案されています。その状況でもあることから、人事問題になりやすいのですが、私は一歩引いてトラブルシューティングの観点で「事故」報告書をチェックしました。従来の教育委員会の予定調和的な文章よりは踏み込んでいるものの、そのなかで不十分な調査、調査や再発防止の我流なやり方、自分たちに都合が良く甘い言葉に逃げる態度など、この報告書で了という判断にはなりませんでした。
●一番の課題は、性的加害の前に十年以上も様々な生徒への暴言、精神的なハラスメントに関して訴える生徒や保護者がいたにもかかわらず、握りつぶされてきたか、ということが解明されるべき問題の一つです。
●この事件を受けて、12月定例市議会で市長が言明し、今回提案されている予算にも(他市の子ども相談機関や子どもオンブズマンの運営経費に比べたら微々たる金額で)実施が決められている、子どもの人権相談窓口政策を担当する課は、説明要員として来ませんでした。再発防止の重要な鍵にもかかわらずです。教育委員会以外の相談窓口とされたこども未来課も来ませんでした。
相談窓口が第三者機関として問題解決に当たれるかの確証を得ることは、今回の「事故」報告書のなかからも、今回の全員協議会のやり取りからも読み取れませんでした。また他議員の問いの答えのなかで、子どもの人権相談窓口も、教育委員会の答弁では連携していくというような第三者性を損なう関与をしていくような答弁があったので、それでは意味がなくなると牽制入れました。
こうした機関を設置するなら、子どもの人権をどう守るか、という子どもの権利条例や子どもへの暴力防止条例みたいなものが必要なのですが、ないので、安心できる相談機関だと証明しきれるものがありません。
●この報告書のとりまとめ、10月に事件が起きたにもかかわらず2ヵ月以上も内部で事件を放置し、12月定例市議会開始後の12月28日に着手し、3月定例市議会開会日に公開するという、政治的にやりましたよ、という存在なのではないかとも見ています。
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