10/10 県議会の条例改正が止まりました
すでに盛んにマスコミで報道されていますが、県議会の虐待禁止条例改正案は、取り下げとなりました。子どもの自立と子育てしている人の息苦しさを解消していくためにはこれでよかったと思います。
私や、私と政治運動をしている支援者のところにも、盛んに問い合わせが入りました。
県議会自民党の記者会見を1時間拝見しましたが、前提、考え方、提案内容の間違いは認めず、説明の仕方、解釈の設定の仕方の間違いしか認めていないので、引き続き12月以降の定例県議会に再提案される可能性が高いとみておいた方がよいと思います。
せっかく取り下げをしたのですから、改めて自らが設定した児童虐待に対する解決策にバイアスがかかっていなかったか十分検証して、過去の立法過程の積み残しという法整備的な視点だけではなく、問題解決として妥当だったのか、埼玉県という立地やおかれた生活環境に妥当なのか、改めて整理してほしいと思います。
議会改革の観点では、議員立法のあり方に検証材料を与えたと思います。記者会見では、パブリックコメントの実績を伏せ、研究者からのヒアリングはぼかし、国会の法制局が求める立法過程を踏んだのか、気になる場面が何度かありました。「政策法務」というのですが、県民の自由を制限し、義務を課すことの色が強い条例ほど、このダンドリをしながら、自由で民主主義を前提とする社会を壊さないように気をつけなくてはならないのではないかと思います。革命政権なら別なのかも知れませんが。
また、立法過程の公開性の確保も課題だと思います。提出までに、何から何まで敵対党派と話し合え、というのも党派間の政策競争を失わせますし、提出された議場での議論がなくなって、議会の公開性の問題にも関わりますが、一方で児童虐待の対応というようなセンシティブで党派を超えて問題を認識し対処すべき条例の場合、敵対党派も含めて検討し、多面的な批判に備えておく必要があるのではないかと思います。
埼玉県民には、やはり地方選挙は重要と口を酸っぱくして言いたいです。
国政選挙では投票率も高く、特定の政党が猛威を振るっている選挙でも、だいたいバランスのよい判断をしているなと見ています。
しかし、地方選挙では投票率が半分になり、コネクションワールドの中にいる人ばかりが出てきて、今回のようなバイアスが修正されないまま県民生活に影響を与える判断がされてしまうリスクが出ています。かつては、余計な議論なんかするなというタイプの議員が議場を占めていたので、余計なことは起きませんでしたが、近年、良いことやろうという議員が増えたなかで、今回のような暴走議案が出るということがありえます。
埼玉県民の「天下泰平・鼓腹撃壌」みたいな政治センス、何かと政治的文脈に結びつけてギスギスする地域よりよいのかなと思ったりしますが、もう少し政治への関与・監視が必要です。
県議会自民党は、パブリックコメントで反対意見はなかった、と言うのを自分たちの提案の正当性を示すことに使っています。
朝霞市でも感じていますが、近年パブリックコメントに提出される意見がほとんどありません。その結果、行政は一時期より説明しようとする意欲、市民と課題共有をして前に進むという意欲が低下しているのを感じます。庁内会議で決めた(役人だけで決めた)というのが提案の正統性を示す言葉として平気で使われる場面が増えました。
為政者が作った意見表明の場に、きちんと参画してものを言う、ということが大事です。
今回、埼玉県PTA連合会が厳しい対応をされました。近年、高度成長期のままの動員型のPTAやその連合会の運営に様々な問題が指摘されています。新自由主義の価値観のもとで育っている今の保護者世代からは、そのような中間組織はコスパ・タイパ的な議論から、そもそもいらない、加入自由なんだという意見がSNSでは目立っています。それはそうかも知れませんが、これらの組織に批判されている問題にに対する自己改革は不可欠にしても、こうした中間組織が意見を言う機能はきちんとあった方がよいと改めて確認したものです。
●強引に日本会議や統一教会の意図と結びつける議論がSNSでは流行していますが、今回の動きは自民党県議団の改革派の動きです。変な陰謀論で説明づけると、再提出されその説明が巧妙で、半分ぐらいの県民の心を掴んでしまったときに、その批判は「政治的先入観の単なる戯言」と一蹴されてしまう可能性もあります。敵を見誤るな、ということだと思います。
逆に善意の立法精神が過剰だったということなので、そこからきちんとアプローチして軌道修正を求めるべきものです。過去には県議団の改革派の流れのなかで、弱者救済の様々な条例が作られています。
政局論でいえば、この自民党県議団の改革派の流れが潰れれば、昔の議論させないで人事と権力闘争しかしない自民党県議団に戻る可能性もあります。
ただそれでも、改革派といえどもベースにあるのは「近年の保護者は無責任」と見る価値観があり、これは保守系団体共通の家族観の問題点とは見ています。
●朝霞市選挙区の県議会議員はほっと胸をなで下ろしているでしょう。自民党入りしたいという話が絶えません。一方で子ども関係の市内団体を自らが運営に関与する統括団体の参加に加え勢力拡大しています。そのなかで、今回の条例改正が採決まで持ち込まれれば、加入団体の構成員と自らの政治的進路との間で厳しい判断が迫られたのではないかと思います。
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