5/28 保護者と政府の間でいったりきたりするお金の論争しかない「こども政策」
岸田政権の打ち出す「少子化対策」の財源倍増が迷走しています。
岸田首相が消費税増税しないと言ってしまったので、消費税以外の財源を探さなくてはならなくなりました。
続いて医療・介護などの社会保険料を増やすと言ってみたものの、社会保険料こそ子育て世帯にずっしりかかっている負担なので、社会的批判を浴び、28日の新聞記事では茂木自民党幹事長がしないと言い出しています。
その次は所得税・住民税の子どもに対する扶養控除の廃止ですが、最近は、年少扶養控除を廃止した経緯が過去の話になり、わからなくなっているなかで、年収高めのSNS発信者たちによって批判に晒されています。その力を利用して某野党党首が扶養控除廃止に噛みつく状況で、これも決断しにくくなってきているのではないかと思います。
子どもが産まれないと社会保障は維持できない、なんて話をして、高齢者の医療費や介護利用料の自己負担分を引き上げることも言われていますが、それで出てくる財源などせいぜい数千億程度で、とても子育て予算倍増という規模にはなりません。むしろ、高齢者やその予備軍の将来不安が恐怖感から消費を控え貯金に走らせ、生産活動に回るお金が減っていくことで、現役世代の雇用の機会を奪っていきます。デフレをもたらした小泉構造改革の再現です。
結局、どこからも財源が作れない、というなかで、とりあえず予算を「倍増させる」という矛盾を解消するために赤字国債に依存することになり、子育て政策として勝手に大人たちが使った予算を、当の子どもたちが将来ずっしり負担させられる状況です。
「桃太郎電鉄」という、全国各地旅して物件を買って利殖していくゲームがあります。1ターンごとに負けたプレイヤーに「ボンビー」というのがついて、「お前のためだ、使ってやろう」と財産をむしり取っていく罰ゲームがありますが、そんな展開になりつつあります。
●野党党首が、盛んに子どもの扶養控除の全廃の方針に批判を加えているのですが、これが児童手当に置き換わる場合、子どもの貧困をなくしたいなどと言っている野党にとって批判しきれるのか疑問です。
所得税の納税者の8割ぐらいが5%~10%の所得税率でおさまっていると言われていますが、その人たちから扶養控除を取り上げたとき、地方税込みで子ども1人年7万円の負担増ですが、一方で児童手当が月1万円であれば12万円の給付増です。残り2割のバラモン層に寄り添うのかという感じの批判だと思います。
子育て世帯への現金給付は、子どもの貧困問題が出発点です。様々な負担免除や給付がなくなる住民税非課税より上、世帯世帯年収400万円ぐらいまでを想定した問題意識が出発点なのに、年収1000万円ぐらいの人の感覚ばかりが話題になります。
●私がもっと腹立たしいのは、親と政府の間をいったり来たりしているお金の損得の話ばかりに、政党間の「子育て支援」の政策論争が行われていることです。親に現金をつぎ込んで「産めよ殖やせよ」インセンティブの話ばかりしていて、よい結果が出るのだろうかというのは疑問です。
こどもを力づけ、子育てしている人を支えるというのはどういうことなのか、何に寄り添っているのかさっぱりわからない議論ばかりです。選挙運動ばかりやって子どもを見ていない人たちと言われても仕方がありません。
もっと地域に子どもの居場所を、そのためのスタッフを、子どもが相談して問題解決を手伝ってもらえる大人を、子育てでパニックを起こしている家庭によりそうスタッフを、収入のない親のもとに産まれても、給食や教材を受け取るときに肩身の狭い思いをしない社会を、子どもに住居がなくならないように、ということがより「子どものため」ではないのかと思います。こどもにとって当たり外れの激しい、家庭に押しつけるだけではない子育て環境を作っていくことだと思うのですが、その話を具体化することは後回しで、扶養手当と児童手当の話ばっかりです。
具体的なこどもや子育てしている人への支援で、あちこちヒアリングしている小倉少子化担当相とその周辺という状況で、みみっちい自分たちの収入層の損得の話ばかりしている野党国会議員には、誰がいるんだろうか、と思うばかりです。
子どもに直接的な支援をしている団体や活動者からどんな政策提言を集約して、政策に変えているのか、全然見えてきません。
お金のやり取りに終始した政策論争の先、政権とっても、自民党政権がやりちらかした財政ギャップを埋めるための増税を押しつけられるだけになるのではないかと見ています。
●政策化が終わったら一瞬で関心がなくなる負担の損得の話よりも、地域で子どもの支援に関わっている人や団体の声を拾い、集約して政策化の努力をすることが、野党の足腰の強化になるし、その情報が政党の政策スタッフに流れ込んで、政党の政策スタッフのなかで揉まれて次の国政選挙の公約に反映されていくといのうが、地方議員を含めての政党のブランディングになるのではないかと思うのですが・・・。
●財源の話では、消費税1%で2兆円です。全ての給食無償化で5000億円未満、大学の学費が増える原因なとった21世紀初頭の予算カットも5000億円ぐらいと言われています。全国の自治体が1700余りで、ここに子ども関係のスタッフを雇え・非正規職員の処遇改善しろと5億円ずつ配っても9000億円です。すべての人から集めることになります。働き盛りの世代や、病気であったり介護を必要とする高齢者を狙い撃ちにした負担増ではありません。
こういう数字の前に、増税するのも選択肢だと思いますが、少なくとも消費税減税して景気対策ちちんぷいという話ではないと思います。
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