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2023.01.16

1/16 議員のなり手不足の処方箋を考える

少し古い話になりますが、年末12月21日、総務省が自治体の制度変更をする考え方を整理する審議会「地方制度調査会」で、議員のなり手不足の対応策が答申されています。(NHK記事
統一自治体選挙を前に、前回統一選以降の自治体議会、自治体議員に起きている問題意識がこの時期に提言されて制度変更の動きになっていくもので、今回はこれが課題かという感じです。
問題意識としては、なり手不足、社会構造に即した議員構成ではない、ということですが、その答申として、①休日夜間開催、②議員へのハラスメント対策、③介護や育児の休業制度の明確化、④住民への情報公開、⑤住民からの参加、⑥議会の位置づけの明確化、⑦議員になることへの休暇制度の整備、⑧公共事業の請負業者を想定している兼職規制の緩和、⑨議会のオンライン化などを内容にしています。

朝霞市を含む近隣市でも議員のなり手不足は深刻で、新たな挑戦者も、住民の多くを占めるサラリーマン階層から参戦することはほとんどありません。以前は地主やその親族が立候補していましたが、その後継者たちからの立候補も途絶える傾向にあります。その候補者不足の間隙を突くかたちで、近年は、社会転覆こそめざさないものの、反社会的な行動を厭わないような政治勢力が政治進出する足がかりにされています。あまり使いたくない言葉ですが、「普通の人」が出てくるのは既成政党のルート、という皮肉な結果になっています。

なり手不足の解消の結論から言うと、議場で議論して決定することに意味を見いだせて、議員という仕事に意味があると思わせることがなければ、なり手不足はおさまりません。これは今、日本社会で、PTA、町内会、管理組合、NPO活動、労働組合、生活協同組合など、共同解決が必要な課題を取り扱う団体の仕事全般に言えることです。日本人のライフが、会社組織の仕事と、核家族かなくなって、その他の人間社会の営為に必要な共同活動が機能不全に陥っています。結果、多くの社会問題がツィッターみたいなところで文句出るだけで、解決されなくなっています。

先日、北海道のある市議会議員がツィッターで、議会に取られる時間を減らせば、議員のなり手不足は解決する、報酬も下げられる、という問題提起をしているの目にしました。議事の効率に配慮は必要ですが、それが自己目的化すると、余計なことを言わないという文化の強い日本社会ではシャンシャン総会となりやすく、議会の役割は低下し、ますます議員になることの意味が低下します。その結果は、議員が静かになれば、正規職員公務員の(待遇の話ではなく、仕事の価値の置き方として)都合最優先の自治体運営しか残りません。議員は一般人ではありますが、選挙をくぐって報酬を受け取って市民の政治的営みを代わりにやる責任もあります。

全国各地のPTAが「一人ひとりの活動の負担を少なくするように」役割を細分化して全員に役割を振るような運営をして、ルポライターなどに問題を指摘されています。その細分化されすぎた役割や、負担の「ずるい」格差がおきない調整を複雑にすることで組織が官僚化し、PTAを運営する側が運営する面白みややりがいがなくなっていることも紹介されています。その役をやることに意味とやりがいがあるのだ、と思えるような改革をしなければ、役をやることで言われる「お客様」たちからの嫌な言葉が足をひっぱり、日常の仕事の忙しさに対応することの方がどうしても優先するので、そうした公的な活動、その最たるものの議員など、なる人はやっぱり出てきません。

議会業界全体として、議員たちが議論して、最善の結果を出した、という仕事と成果に対する満足感を形成しない限り、ろくな議員候補はなかなか出てこない、と断言してよいと思います。特に、マイナスとなる状況や危機となる状況を乗り越える力のある政治家を地域に養うためには、負担軽減の議論では、人材は育たないと思ってよいと思います。

それとともに、日本社会では、職場で机を並べる同僚が政治家をやっていることに恐怖感が強いのだな、と思うことがあります。昨年、私も仕事の場ではない活動で「この場に政治家がいるから」ということを言われたことがあります。その感覚がある限り、賃金労働者にとって、在職立候補など日本社会では夢のまた夢、いくら議会に取られる時間をへらそうが何しようが、多くの人には頭からムリムリということになります。結果、退職する覚悟をしないと、議員になれないなぁと思うところです。
先進国なら多くの国である、賃金労働者から在職立候補するための、労働組合→社会民主主義政党経由の政治リクルートシステムが、1990年以降、さきがけと小泉純一郎による労組抵抗勢力論で破壊され日本では機能不全になっているので、そのあたりもまた、課題だろうと思います。
そうしたことが解決した上での、なり手不足の解消なのではないかと思います。

地方制度調査会の答申ですが、世俗で言われていることにそのまま直結して回答を出したという感じです。上記の「議員は何のためになるのか」という問題意識がないままに、兼業規制の解禁だの、職としての明確化だの、オンライン制度の充実だの、思いつきの手段を並べたという感じもしています(もちろん委員たちが長時間議論はしているのでしょうが)。
ありもしない兼業規制の解禁など、焼け太りのように市役所の仕事を請ける土建屋さんたちを議員にしろ、という話で、どうかしているとしか思えません(今でも相当役所に依存した仕事でもしない限り制限は受けないし、委託なら対象外です)。

●一方でなりたいなりたいという人がいろいろでねぇ、という感想。地方議員になって、持ち場でいい仕事しているのに、そのしんどさに耐えられなくて「上に」と幻想を持つ人も。私も含めて、全体として自爆体質の人が多い世界です。

●議会のオンライン化は推進しておく必要がありますが、主はリアルなコミュニケーションだと思います。あくまでも手段です。

●土日夜間議会はありがちな提言なのですが、実際に議会を傍聴している人の少なさを考えると、効果は少ないと思います。近年議会の録画公開が定着しているので、その方が活用されている感じがします。議員のなり手も、土日しか議会に来られない人に合わせれば、今度は土日に働いているサービス産業に従事している人はどうなんだという話になり、いたちごっこな話にしかなりません。議事の都合の調整に拒否権発動されることも頻発するでしょう。
土日は、一般市民の多くが仕事を休みにしており、議員は、市井のいろいろな人の話を聴く時間として使いて、議場での議論での反映や採決での判断材料にした方がよいと思います。

●第31次地方制度調査会から、自治体の改革というより、時々の流行のツールを自治体に押し込むみたいな議論のスタイルに変化しています。箝口令みたいなのが出ているのか、議論の過程も表に出ることがなくなり、かつての地方分権をリードしたような面白みがなくなっていると思います。そのなかでの、自治体に考えさせない、中央集権的な政策のオンパレードなのかなと思います。

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