4/16 まとまりつつある国の補正予算をチェックしました
同じ会派の本田議員とオンラインで、ポツポツあちこちから拾ってきた情報から、政府の補正予算の点検を行いました。4月下旬に通過する国の補正予算で、新型コロナウイルス対策の本格的な感染拡大に対応する事業がようやく始まります。そしてこのなかの事業で市町村がやっているものが、朝霞市の補正予算として上げられてきます。今回は、補正予算をめぐって、会派の長である私のところに何の打診もなく、実行までの時間的制約もあるので、市長決裁で決める「専決処分」で市の補正予算が決まり、次の市議会で追加承認的に処理されるのだと思います。
国の今回の補正予算の内容は、5月6日までに流行のピークが過ぎることが前提。もし感染流行が長期化すれば、医療資源や、生活や事業のつなぎのための対策としては、この内容は序の口ということになります。
今回の補正予算では、仕事が休みになったり、ときには失業したり、収入がなくなったり生活が困るであろう国民へのつなぎ資金なのだろうと思いますが、臨時給付金が1人10万円で配られる話が最大の争点でした。内容とまとまった経過はマスコミで伝えられる通りです。元々の政府案がダメだと野党がこだわって、公明党と自民党のかなりの議員が疑義を挟み、最終段階に公明党の山口党首が官邸に乗り込んで、あまり細かい判断がいる制度にするのはやめて、と押し込んだことは政策決定過程としては大変異例で、興味深く見ています。この先、どのように配布するかという事務手続が決まり、恐らく自治体も噛むことになると思います。その場合は手続にご協力をお願いしたいと思います。
【あまり意見の割れなさそうな政策では】
・医療機関の支援、ワクチンの開発、治療薬の発見や開発、入院施設への支払などの予算が盛り込まれていますが、これらは国の直轄まだは県の事業となります。
・学校休業の見返りで、放課後児童クラブの長時間開所などに対する追加予算は最終的に市町村が作業します。また教育のインターネット環境整備も予算がつきますが、子どもの多い朝霞市でオンライン授業が実現できるかどうかは微妙です。
・マスクや防護服の工場を作ったり、人工呼吸器の製造ラインを増やしたりする補助金も盛り込まれています。
・営業支援では、景気が冷えたり外国人観光客や外国での需要を当て込んでいた高級食材のために営農していた農家、資金繰りで詰まりそうな企業向け融資やつなぎ資金などが盛り込まれています。これらの大半は農協、商工会、金融機関などを経由して国の事業として展開されます。
これらは、政治的スタンスの違いがなくても、実施すべきだということで合意が取れそうなところです。
【これどうなのと思う政策として】
全体からすると少数ですが、
・全世帯にマスク配布が非効率です。マスクの工場ができるまではつなぎてやっておくという必要性を政権中枢は考えているのでしょうね。
・5月に新型コロナウイルス対策が完全収束する前提なのか、「GOTO」とネーミングされるインバウンドモード全開の予算があります。新型コロナウイルス対策終了後は長距離の観光は贅沢品になっていると思わざるを得ません。国の政権中枢部の思い込みは激しいものです。
・和牛券はなくなりましたが、高級食材が売れなくなっているので、その販売支援とする補助金。最終的に生き物を扱っている農家を救わなきゃというのは同意するのですが、さて、消費者は誰、という感じです。
・金額は相対的に少ないけれどもそんなにいるのという広報宣伝費が随所に。もちろん必要な政府広報はあると思いますが、どうも選挙を意識した「正確な宣伝」という言い分が強すぎます。
などの予算も盛り込まれています。
●市の補正予算も市長による「専決処分」で通される見込みを書きました。これまで「専決処分」された内容は、次の議会が開かれて、事後承認議案が提出されて、何が決裁さているか知るという感じでしたが、今回は専決処分する次第、その内容を連絡していただかねば、と思うばかりです。
※今までの市長の「専決処分」は、国の年度末の法改正に連動して議会を開く間もなくやらざるを得ないことが多く、内容も市独自で市民生活に悪影響を与えることが少なかったので、そのような運用でもやむを得なかったと思います。
●1人10万円の給付金の問題が政治の争点になりました。
決まった後も、各政党の所属政治家、支援者が「我こそが元々提案していたこと」と本家争いをしていますが、みっともないなぁ、と見ています。それより各党ごとに1人10万円配布の政策効果をどう読んでいるのかということがあるはずなので、推進したり、賛成した理由を語ってほしいように思います。その効果が伝わらず国民がただもらえば麻生元首相の心配するとおり、(普通預金に塩漬けするとおり)タンス預金でしかなくなります。ただ今回は将来どうなるかわからないので、当面、タンス預金にしても誰も文句言う筋合いでもないと思います。
今回のことはこれですが、新型コロナウイルス感染拡大のピーク・収束が見通せないなかで、長期に私たちがいきられる仕組みの作り替えが不可避だろうと思います。
それには、こうした現金バラマキだけではやれないし社会は続かないと思います。まだ政治力がいるのに、成果を争うあまり、今回、1人10万円に決まるまでに政治力を使い過ぎている感じがします。
政治力は、あるコンピューターゲームみたいなところがあります。いいこと、やるべきことすべてが実現できるわけではなくて、使える力に見えない上限があります。政治力が10ポイントあると、1つの政策を実現するのに1ポイントしか使わなければ10個の政策が前に進みますが、1つの政策に3~5もポイント使えば、6~8個の政策しか前に進みません。ただ、政治力を使わないと、政策はチューニングされず、提案する人の思い込みや官僚の統治に楽な政策の割合が増えます。
1人10万円の給付金は、わかりやすい政策とアピール力がある政策だけに、その効果以上に政治が議論に白熱しすぎたように思います。
●ここからは黒川のよくあるおおぼら話だと思って読んでください。
新型コロナウイルスの感染流行は、5月6日頃に治まる説から、かなり長期にかかる説まであります。ワクチン、治療薬がないなかで、免疫がない人がたくさんいるわけですから、ウイルスさんの方で勝手にやめた、ひきこもろう、とプログラムが作動しない限り、こうした生活を強いられる期間が長期化しそうな気配です。
流行が2年という説に従えば、2年間も人々が家から出ない生活を続けるためには、リモートワークの普及という技術的な話だけではなくて、職・住を極端に分離して、通勤電車で人を集積させる仕事をする社会の仕組み自体を見直さなくてはならないようにも思います。ベッドタウンにほかならない朝霞市にとっては強烈な価値観の変化にもまれる可能性もあります。
一方で、農家は食糧を作り、家に籠もっているなかで運送業の人がいろいろなものを運び、ごみは集積所に置いておけば収集業者が焼却炉に持っていってくれる、公共交通はある程度は動き、マイカーで移動しようとすればガソリンスタンドで働いている人がいます。籠もれない仕事の人のおおぜいいます。もちろん医療関係者もそうです。ここ30年、そうした手仕事をしている人たちを、企業も自治体も家庭も契約関係だけでアウトソーシングして、自分たちが配慮すべき世界から外して、結果だけ享受してきました。手仕事を大事にしていくという価値観も取り戻していくことも必要になるのだろうと思います。
2年もこの生活をしていると、人と人との関係は、オンラインと電話でしか繋がれない世界にいることになります。そうしたときに社会がどんな変化をするのでしょうか。一番激烈なモデルは、技術は近代的でも人々が集積して事にあたる室町時代より前の、村ができる前の社会に戻る可能性があります。集まれないのだから機能できない可能性のある自治体議会だって、今まで以上に厳しい評価を受ける可能性もあります。そうなったら私の今の仕事はそこで終わりです。
それぐらいの変化のなかにいる可能性もあります。そうしたなかでの政策決定が今後求められます。1人10万円はやったらいいと思うけど、決まって一件落着感が出てしまう政治力の配分がこれでよかったのかと思います。とくに1人10万円の本家争いをしている政治プレーヤー、支援者たちを見ていると、やれやれです(もちろん、支持者内輪向けには、うちが元々はちょっとは言ったらいいと思うんですよ、でもという感じです)。
●とはいいながらも、近代のなかで育ってきたので、新型コロナウイルス後、この社会システムのフレームは残りつつも、医療や福祉をもっと大事にしてお金を割く社会にしていく、西欧社民主義モデルに移行してくれるのが私にとっての安心感です。
| 固定リンク
コメント