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2019.11.22

11/22 財政力指数が高いことが余裕があるとは限らない

市内でいくつかの政治家が「財政力指数があるからもっとお金を使えるはず」という論理で宣伝を繰り広げています。3分の1ぐらいあたりで、3分の2ぐらいはずれの議論です。

財政力指数は、総務省が決まった計算式で計算した、その自治体を運営するための最低のコストを分母に、その自治体の税収のうち75%分を分子として、その比率を計算するものです。1を超えると自治体を運営するコストを上回る税収があり、1を下回ると運営コストを下回る税収しかないというものです。
この比率が1を超える自治体は全国1700自治体のうち、86自治体のみです。朝霞市を含めてその他は、1を下回る団体で、足りない分は地方交付税交付金を受け取っています。
問題は、この「最低のコスト」を賄う比率ですから、最低のサービスをするための体力を示す数字でしかありません。朝霞市では、介護や国民健康保険、水道などの特別会計を除く430億円の財政規模のなかで、280億円程度が「最低のコスト」に当たります。
残り150億円分の事業は、税収のうち25%「自由に使ってよい財源」と、各種補助金、借金、雑収入などで補って、市は運営されています。
一方、「最低のコスト」で収まらない事業もたくさんあります。このなかで、朝霞市で特に財政を圧迫しているのは、児童福祉費の自治体負担分です。子どもに関わる「最低コスト」の計算は、すべての人口で計算されているものが大半で、子どもの人口で計算されているものがあまりありません。その結果、全国平均の人口あたり1.3~1.4倍の子どもがいる朝霞市では、単純に言うと自治体負担分が通常の自治体の1.3~1.4倍の持ち出し負担が必要でからです。これを抑制しようとしたら、子育て世代の流入を制御するために住宅建設に制御をかけるしかありません。
国では子どもの数が増えないと経済成長も税収も増えないと深刻に受け止めていますが、自治体では、高度成長期以来、子どもの多い自治体は豊かという先入観で地方財政で特別な手当てがなく「子育て貧乏」ということが起きています。一方、高齢者福祉の多くは、人口ではなく高齢者数に比例して「最低コスト」が算定されています。
近隣市では、住宅を建てる場所がなくて、子育て世帯が思うように増えず、その結果、かえって財政に余裕ができて、子ども政策のメニューを豊富化させて、市として児童相談所まで作ろうと検討しているところがあります。

その他、わくわく号の運行(1億)や、様々な予防接種の推進、子ども医療費の無償化(5億)、わくわくどーむの運営(1億)などが、最低コスト以外の自治体の仕事です。また、東京都に近いので、「東京都ではこんなこと自治体でやっていた」と言われて始めた仕事の多くが、最低コストの以外の事業になっています。

そういうことで、朝霞市は資金繰りではカツカツの運営が続いています。そのため、学校図書室の司書が年収100万円を割り込んで雇っていることや、学校教材費を十分公費でまかなえず集金が多い、市民にメリットを示しにくい建物の修繕が後回しになり建物が雨漏りがしている、などということが起きてきます。

この構造を変えるには、物やカネで歓心を買うような行政サービスを整理して、国が制度化して財源の手当てがある程度見通せる、生活の幹の部分を支えるサービスをきちんと強化することがまずやるべきことです。そこで浮いた財源で借金を返す努力をして、5~10年後の借金返済のための現金流失を抑制して体力を養うしかありませんが、そのことは当面は自治体の独自施策を縮小することにつながり、政治家としては悩ましいものです。ただ少なくとも物やカネをばらまいて政策効果が不明確なサービスは、誰が何と言おうと整理する努力が必要です。

また最近は多忙化している公務員が、楽をしたり、物品購入年度だけの支出決裁の手間を回避するために、安易にフルメンテナンス契約の物品購入や賃貸契約をしているケースが頻繁にみられます。結果的には、公務員をもう半人~1人相当雇えるほどの割高な物品購入だったりします。安易な論理に飛びつくと、長期的には割高な財政支出を公務員に決断させてしまいます。

●市議選を前に職員人件費が話題になっていますが、来年度から非正規職員もこの人件費というカウントに入ってきます。人件費を削減するとどのような悲劇が起きるか考えてもらいたいものです。埼玉県庁に雇われている児童相談所の非正規職員が、今勤労意欲を失うような改正を提案されているようなことが起きます。
朝霞市では市職員に労働組合を通じた正当な要求・交渉もないのに、正規職員の地域手当が周辺市より低いという理由でお手盛りしていた時期がありました。私は労使合意のない人事院勧告以外の賃金は、上にも下にもあってはならないという立場からやめさせようと議場で批判しましたが、翌年度から国の地域手当の朝霞市の基準が変更になり、そのなかで吸収されていきました。現在、正規職員の賃金は人事院勧告どおりです。つまり全国の中堅・大企業のサラリーマンの平均水準となっています。非正規職員は半日勤務の職員が膨大にいるため、多数は年収100万円前後です。
自治体の仕事で高額な物を買うのは、公共工事ぐらいです。ほとんどの仕事は、人の頭と手を使う仕事です。人件費批判は、職員の能力よりも、物を買え=もっと公共工事を、という議論につながりかねません。裏技として、民間委託などをごりごり推進すると、人件費を抑制したように見せられます。そのことを毎年入札や見積合わせでやると、地域で低賃金労働を蔓延させることにもなりかねません。
そういうことになってよいのだろうか、と思います。
そんなルサンチマンを役所にぶつけるだけの人件費批判より、払われた人件費が有効に使われるような評価のあり方、研修のあり方を模索しないと、有効な自治体、問題解決ができる自治体運営がされません。ただ貧乏に耐え最小限の仕事しかせず、そのなかで声の大きな人の言い分しか聞かない公務員の働き方しか生み出されないのではないかと思います。

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