9/7 朝霞市の財政が大丈夫かなと思ったときの道案内
市の財務情報を公開させる、これが1期目からの私の取り組みでした。複式簿記で育った私は、自治体の現金会計の財務の安全性を確認することは難題でした。ワークブック・大和田一絋「習うより慣れろの自治体財政分析」を利用しながら財政分析を習得しましたが、当時の朝霞市のホームページには最低限の財政情報(過去5年程度の決算カード+α)しかなく、市役所に直接行って、市職員の手を煩わせて、多くの資料を複写してもらわなくてはなりませんでした。
誰でもが心配になって、その気になったときに財政書類を手に入れて朝霞市の財政を分析できるように、HP上への積極的な公開を進めてきました。上記テキストが唯一に近いワークブックで、そこに必要な資料がHPで公開する妥当な水準と示してて公開してらっています(多少ない資料もあるかも知れませんがご容赦ください)。
その上で、朝霞市は以下の財務情報をホームページ上で公開しています。必要なものはこれだ、と思って探さないと見つけるのが難しいぐらいバラバラとあちこちに掲載されているのが難点で、市当局としても模索しているところだと報告を受けています。
自治体によっては、こうした資料をもとに、市民が自主的に財政白書を作る活動をしているところもあります。
決算関係
●決算カード 1993(平成3)年~2018(平成30)年
一般会計を中心とした財政情報の要約を一覧表にしたもの。総括的な財務の安全性などを把握できる資料
公表時期 恒例では9月定例市議会の開催前の議会運営委員会から議会初日までの間(8月下旬) 今年は8/27
●決算書 2012(平成24)~2018(平成30)年
6つのすべての会計(一般会計と、国保、介護、後期高齢、下水道、水道の5つの特別会計)の収入・支出の全部が報告
公表時期 恒例では9月定例市議会の開催前の議会運営委員会から議会初日までの間(8月下旬) 今年は8/27
●財政状況資料集 2010~2017年
上記決算書・決算カードから朝霞市と人口構成や人口規模が似ている自治体との比較表データなど。県が作成
公表時期 翌年度の6月頃
●財務諸表4表 2008~2017年
地方公会計改革にともない、貸借対照表など複式簿記に擬した決算書を公開
公表時期 翌年度の3月頃
●朝霞市の財政
市民向けの財政説明。毎年改良が加えられています。
公表時期 当年度の12月頃
●施策評価・継続事業評価
財政の裏付けとなる事業計画に対する市役所内の評価
公表時期 恒例では9月定例市議会開会日前後
●交付税算定台帳
国から財政調整で受け取る地方交付税の交付額を決めるための計算書式。
財政指標を計算・分析するときに地方交付税でバイアスがかかる部分を除外するのでその理解に必要。
公表時期 毎年変わるが早いときは当該年度の9月~翌年度の3月
●決算監査報告書
5月31日の出納閉鎖後、監査委員が監査した報告。会計の適正性の判断のほか、監査委員による意見も重要。
公表時期 恒例では9月定例市議会の開催前の議会運営委員会から議会初日までの間(8月下旬) 今年は8/29
予算関係
●予算書 2014(平成26)~2019(令和元)年
自治体がその年に取り組む仕事を金額として表現したものです。
一般会計と5つの特別会計の当初予算と補正予算、その説明資料も掲載されています。
公表時期 3月定例市議会の議会運営委員会~議会初日までの間(2月下旬)
●当初予算編成方針 直近のもののみ
朝霞市財政課がその年の予算を計上するために全庁に示す方針や注意喚起している文書
公表時期 11月頃
●総合計画事業実施計画 2016(平成28)~2019(平成31)年
当該年度の予算を策定するにあたり、事業をどのように実施するか単年度の計画書
公表時期 毎年3月
※予算編成方針の前に、翌年度の事業採択の手続が行われているのですが、その庁内向けの文書はHP上で掲載されていません。
●自治体の財政にあたってびっくりしたのは、前年の数字が掲載されていない資料ばかりだということです。少なくない議員が前の年の決算書や予算書を手書きで写して政策変化を見つけています。前年の数字が掲載できない理由は、総務省が規制して載せられない、ということです。そのために補助資料を増やしてきましたが、それでよいのか、という感じがしています。総務省に問題があるなら、改善してほしいものです。
自治体の仕事は、民間企業よりおそろしく保守的で、ほとんどが対前年比で異常値が検出できます。異常値から原因を分析すると、政策の変更があったり、自治体をとりまく大きな環境変化、事務手続の改善・改悪が見つかるものです。
●課題としては、保育で子ども子育て支援制度、障害福祉で障害福祉給付、介護保険制度の創設などの制度改革のなかで、細目なのに巨額な予算項目が増えて、中身が決算書ではわからなくなっています。市民がかろうじて理解している「延長保育事業」「一時保育事業」「子育て支援センター事業(民営園分)」「就労支援B」「放課後デイサービス」「ショートステイ」などのメニューで何をどうするか把握する必要があり、それをもって自治体の財政はちゃんとしたものか評価できます。その資料が現在のところ一方的な公開がされていなくて、毎年、資料請求しています。
●そうした決算書に現しきれない事業内容の説明は「主要な事業の成果に関する報告書」というものが決算書とともに議員に配布されいますが、これも朝霞市の場合、特徴的な成果を1つ2つ紹介されているだけで、決算額の内訳を解説するようなものになっていない項目が多くあります。まだ改善の余地ありです。一方で「施策評価・継続事業評価」とも重複するので事務の整理も必要なのかなと思ったりします。
良い公表をいくつか紹介すると、p21、子ども医療費無償化の利用状況などは年齢別の利用状況がわかり、子ども医療費の無償化を考えるにあたっての政策判断にも使えます。またそこに掲載されている合計金額が決算書とも一致します。子ども未来課関係の公表資料は決算書の内訳としても事業としてどのようなことを取り組んだか、ということの両面でほどよく書かれている資料になっています。
悪い事例も取り上げたいですが、公開の場で名指ししてしまうとモラルが悪くなるので、直接改善を求めて庁内を歩こうと思います。
●市議会に与党も野党もない、という言葉がありますが、朝霞市の場合、与党と野党には大きな壁があり、政策実現には大きな差をつけられるところがあります。そういう自治体では、与党議員は政策実現が問われる予算書の審議が重要になります。一方、私のような野党として位置づけられている議員は、成果として何ができたのかという決算書の審議が重要になります。次の年に間違ったことをさせない、問題点があれば改善するように促す、良い仕事をしたときにはほめる、そういう役割が大きいと思っています。
与党議員の評価は予算書に向き合う仕事、野党議員の評価は決算書に向き合う仕事で、評価が必要だと思うところがあります。
もちろん、最初に戻ると、市議会は、国会のような議院内閣制じゃないので、与党も野党もないのが普通だ、ということは言うまでもありませんが、市長選挙や市議会議員選挙で推薦もらったのもらわなかったの、ということは政治的には大きな意味を持ちますからねぇ。
是々非々でがんばります。
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