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2019.06.01

5/31 多忙な公共サービスとユーザーとの負担をめぐる合意を考えさせられる~延長保育料をめぐる請願審査から

保育園での保育料以外の別途徴収金のあり方を問う市民請願をめぐって、31日午後、市議会民生常任委員会が開かれ、担当の委員ではありませんでしたが、傍聴いたしました。

市民側の請願としては、市内の特定の法人の延長保育料など別途徴収金が高額でその設定に関して十分な保護者との協議・合意が取られていなくて説明だけで終わらせていることを問題視して、
(1)市の基準(強制はできない)を守ること
(2)法令にある書面同意を守ること
を求める内容で、これをめぐって請願した保育園利用者、問題となった保育園運営法人からそれぞれ参考人を招致して、市議会としてお話をうかがいました。

保育無償化をめぐっての抜け穴である別途徴収金が増える状況、公益事業を営む民間法人として営業の自由と公益事業としての制約・自律の折り合い、利用者の自立支援という役割がある事業での利用者の納得性や権利性、背景にある小さな政府を模索した日本での欧州並みの保育を要求されることの財源の矛盾、保育事業者の経営問題、朝霞市がおかれたベッドタウンという環境からの保育時間の設定など、さまざまな問題が考えさせられたやりとりでした。

保護者側の意見からは、高い延長保育料をめぐって提起した問題を事業者が向き合わなかったことで、議会に持ち込むまでの反発になったのではないかと感じました。
事業者側からは、事業を運営する大変さと、別途徴収金に関する合意形成の方法論の難しさをうかがえた一方、本社機能が集中して税収が潤沢な23区並みの市単独補助や、公立保育園を廃園して民間園への財源を要求されるなど、挑発的とも思える主張をされたのが印象的でした。また延長保育のオペレーションにお金がかかる面ばかり強調されましたが、利用者数や利用パターンによって収支が相当に違ってくると思う問題です。実態がわからないのに納得することを求められて、これはそのまま受け取ってはダメだと感じたものです。

●事業者と個々の利用者が保育園の別途徴収金に合意を取れ、という制度は、国の政令とそれを書きなぞっている市の条例の決めですが、「事業を実施にするにあたっては書面で合意」という規定に、合意できない利用者はどうなるのかということが書かれていません。ここが制度としてバグっている感じがしています。これは民法の改正で、一対多の契約で用いられる約款をどう定義するか苦心している問題に近いものがあります。
福祉サービスの利用は背に腹を変えられないものなのに、この条項は安易に利用者この個別合意に話をもっていき、合意できないときのトラブルシューティングが全く想定されていません。保護者側は合意しないと抵抗闘争をしやすい仕組みがあるし、事業者は合意しない場合サービス供給停止することも可能とも読み取れ、利用者の不安を利用することも想定できます。今回の請願審査で、ある議員から、高額の延長保育料を問題視して納得できない保護者から延長保育料を取れないことに不公平感を示す発言をしているのを聞いているなかで、不公平の問題よりも、合意をどう捉え制度化するかということの法律や条例の想像力不足ではないかと思いました。
利用者の負担を加えるときに、事業者から合理的な説明が行われ、全員は納得できないけど8割方の利用者がOKというようなときに事業者と利用者の合意を決着させる仕組みが必要ではないかと思うところです。別途徴収金のようなものは、個々の契約で合意を取るというより、こうしたことは事業者と保護者集団代表との交渉・合意で動かす制度をシフトさせた方が納得性がある結果となるのではないかと思いました。

●もう一つ、議会の問題でもあるのですが、業界秩序が必要な問題に関して、市議会一般質問や市民のクレーム発の行政職員による行政指導的な手法にばかり解決を依存して、立法的対応を全然取らないことが問題ではないかとも思っています。業者や市民に一定程度強制性をもった制度を運用したければ、独自条例を作っていく作風が必要だと思っています。

●私自身も民間保育園を利用して、こうした場面に直面することがあり、いろいろざわつくものがないとは言えません。

●事業者も利用者も、保育所への公費投入なら青天井に認めるべきという議論がなされやすい昨今、その話はそれ相応の税負担がないとというのが近年の実感です。そこがないと利用者が窓口でしかもの言わない障害者福祉を切ったり、学校予算が増えなくて学校での徴収金が増えたり、いろんなところに副作用が起きます。
土地柄、23区と比較され23区並みの支出を求められていますが、本社機能の集中で税収が青天井に入ってくる東京23区と比較されてもなぁ、と思うことばかりです。競い合って住宅を奪い合って買うのもいいけど、こうした負の側面も考えてもらえればと思います。

●話の本題じゃない感情的な反発を利用してやり込めて、問題解決をせず個人の忍従だけで対応させようとする「呪いの言葉」。上西充子さんの「呪いの言葉を解く」という本が話題になっていますが、保育政策で語られる言葉って、学校教育業界と並んで「呪いの言葉」によくぶつかるなと思います。そこをうまく解毒して読み取らないと、変なことになるなと思うことばかりです。

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