12/30 放課後児童クラブの職員配置と規制のありか
25日の閣議で、放課後児童クラブの職員配置規制が、国として基準を残しつつ、自治体の条例改正で緩和できる制度に変更することが決められ、今後法改正と政令の改正で実施に移されます。このことをめぐって放課後児童クラブに係わる方々から不安視されていますが、朝霞市としては12月定例市議会で、私を含む何人かの議員の質問に対して、職員配置基準を変える条例を提出することはない、と明言しています。
現状より職員配置が割り込むことは基本ありえないと考えていただいて結構です。
ただこの改正に関して、国に対して抗議をする動きがあるのですが、どうもずれた議論があるなぁ、と思うところがあります。
改正の内容は、職員配置の規制を国が一方的に規制してビタ一文ずらしてはならない、という内容から、国が規制案は示すし基本はこれでやってもらいたいが自治体が独自に条例を設定したら、(下にも上にも)規制を独自設定できる、という内容です。国が示す基準を「従うべき」→「参酌すべき」と書き換えることになります。
これは子ども子育て支援法で、各自治体が放課後児童クラブの設置基準を条例化するように義務づけていて、盛り込む内容は官僚が決める政令で定めるとなっています。その政令のなかで、地方自治法で必ず自治体が「従うべき基準」と、基本トレースしてもらいたいが自治体独自で変えてよいとする「参酌すべき基準」で定義して規制を制御していて、その規制の制御の変更が行われたということになります。
この規制緩和は、最低の職員配置の2人体制に見合わない人口減地域の放課後児童クラブの運営や、逆に大都市部で20人からの放課後児童クラブを設置しにくい自治体、職員確保に困難だと音を上げた自治体などの声におされて、知事会、市長会、町村長会を通じて緩和要望をあげれたものです。
国の内部でも様々な議論があり、規制緩和と親和的な内閣府と、念願の放課後児童クラブの最低基準を作った厚労省との間で温度差もありながら、国の基準は残しつつ、自治体の条例で変えられるとしたところに決着したのだろうと思います。
これに対して、せっかく作った最低基準に穴が開いたというのが、放課後児童クラブの運動団体に係わる人たちの見解で、それはその通りで もっともなことです。自治体の行政に経営者意識だけが優先して危機意識が足りないとこうした条例を提案するし、同様に議会もポカだったら、職員配置を安易に下げた議案を通してしまいます。
当然、よほどの事情がない限り、子どもを見守る仕事はワンオペでやるのは危険(それでいうと小中高のクラス担任制も相当危険)だと思います。
当事者や運動をやっている人がそう認識して、今後も運動を展開することは大事です。
そのなかで、法律の実務を担う地方議員や弁護士会がこの改正に反発し国に抗議していたりして、それはおかど違いなのではないかと思う点もあります。もちろんいずれも子どもを見守る人を減らしてはならないという思いから出ているものなのですが。
地方議員ですが、自らが条例制定の主役に躍り出て責任が出てくるのですから、国に抗議する前に、自らの自治体でおかしな条例改正はさせない、と言明すべきだと思います。地方議員は、一般質問で要望しているか、意見書をめぐって政争ばかりしている感じで、条例に対しての判断は行政依存で労力を使っていないのではないかと思われるフシがあります。自治体議会としても、市民への規制の強化・緩和に関して、もっと敏感にならなくてはならないところだと思います。また、そこの自治体議会の状況がトライできる環境にあるなら「参酌すべき基準」になったのですから、その自治体の放課後児童クラブ全ての職員配置基準を上乗せして規定することに取り組んでみたらと思います。
意見書を出している弁護士会も、政令で制度がコロコロ変えられる制度に対して何ら問題を考えず、「従うべき」から「参酌すべき」基準に変更されたことを問題視しています。政治的自由や国民主権から描かれる法体系としては、本来、「従うべき」は最小限であるべきで、それほどの基準なら、法律で制定しておくべきことではないかと思ったりもします。外国人労働者受入拡大でも問題になりましたが、政令で広範囲にルールを規定してしまう問題は大きいと思っています。そこが攻防戦のしどころかと思うところです。
今回は「参酌すべき基準」となるため、望ましい基準自体はなくなっていません。それより下回る基準は利用者に、それより上回る基準は事業者に、その不利益に対する説明責任が必要とされることになります。穴はあきますが、実際に採用できる自治体は限られているのではないかと見ています。
ここから先に必要なのは、悪い条例改正にならないように、利用者や利用者団体は、より多くの自治体議員に放課後児童クラブの望ましい姿について共有を図っていく運動が必要なことと、地域では、小学生以降の子どもの学校以外での過ごしをどう作りたいのかイメージづくりをしていくことが必要ではないかと思います。
自治体議員や地域に放課後の子どもの過ごし方に対するイメージが貧困なので、国に頼って規制してもらいながら、放課後児童クラブの職員配置という限られた場面でしか攻防戦を展開できないのではないかと思っています。
やがて、中学生になると過剰な部活に子どもを押し込めてしまう結果になっているのではないかと思います。
●安全や福祉の質に影響を与える基準を考えるのに、広範な国民合意を求めるところに基準を置いた方が運用しやすいのか(法律)、官僚の裁量に委ねる仕組みにした方がよいのか(法律の委任による政令)、自治体のなかの合意に委ねる仕組みにした方がよいのか(条例)、悩ましいところです。
●保育所には最低基準があった、ということが言われますが、これは保育行政が、2000年の地方分権改革前は国が包括的に自治体に委任している事務の一環として厚生省が「通知」によって自治体に規制できた仕組みを使ってきたものです。
2000年の地方分権改革以降は、保育行政は自治体の固有の事務に定義しなおされたため、最低基準を定めた「通知」は法律に基づかない自治体への規制として、長く法的拘束力の有無が論争が続いていました。地方分権の専門家と福祉専門家とが激しく論争を続けてきたものです。厚労省は、認可保育所の補助基準として最低基準の職員配置を条件にしてかろうじて縛ってきたし、自治体側も新たに安全基準を検討する手間があったり、この時期は保育士の採用も比較的容易だったことなどから、抜け穴として都認証保育所や県家庭保育室制度など自治体独自の保育制度を作って、厚労省の補助を受けずに緩和した制度を運用してきた歴史もありました。
2015年に子ども子育て支援法が施行され、それに基づく政令としてようやく保育所の最低基準と同等の職員配置規制が法的根拠を持つようになっています。
●保育所こそ、政令の「従うべき基準」で、「小規模保育施設C型」をはじめとする保育士を配置しないで済む保育所を制度を、保育所・幼稚園含めて1施設しかないような自治体にまで制度を作らせています。2015年の子ども子育て支援法施行にともなう条例制定のときに、子どもの安全のために違法となる立法の可能性を覚悟して修正案を出しましたが、修正案の合法性をめぐって反論もあり大変頭を悩ませた問題です。国が「従うべき基準」があって安全ということばかりではないのです。
●例によって厚労省批判を展開する議論もありますが、「主犯」は地方3団体、「共犯」は内閣府です。
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