4/4 議員に上司から部下に取るような統制をかけるのは難しい
疑惑の渦中にいて弱り切っていると伝えられる安倍首相の妻が、ある地方議会にしか存在しない小政党の党首に泣き言漏らしたことから、その政党が注目されて、同党所属議員である同僚の朝霞市議のツィッターの発言が話題になっていて、問題だと騒がれています。
私のところにも、同僚議員として何とかならないのか、という様々な方のお問い合わせをいただきますが、法律上はどうにもならないし、下手に手を出せば、議会の側が最後は損害賠償請求までされる危険性があるのです。
結論から言うと次の選挙で有権者が判断するしかないということです。
よい機会ですので、議員の議会外の問題行動にどうして統制かけられないのか整理したいと思います。
自治体議会が議員に制裁を科すことを「懲罰」と言い、地方自治法133条では、以下のように定めています。
第133条 普通地方公共団体の議会の会議又は委員会において、侮辱を受けた議員は、これを議会に訴えて処分を求めることができる。
第134条 普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。
また朝霞市議会会議規則では、
第160条 懲罰の動議は、文書をもって所定数の発議者が連署して、議長に提出しなければならない。
2 前項の動議は、懲罰事犯があった日から起算して3日以内に提出しなければならない。ただし、第49条第2項又は第113条第2項の規定(注:秘密会とした会議での秘密漏洩)の違反に係るものについては、この限りでない。
と書かれており、議会が開かれている間しか懲罰を求めることができない制度となっています。また最高裁判所の1953年の判決等では、議会の処分権は議会の会議にしか及ばず、議会内ではない発言は議会の処分を求めることができない、となっています。
法律や判例に反した処分を行って当該議員が不利益を受けた場合、市役所相手に損害賠償と利子と判例によっては法的費用が加算請求訴訟が起こされるリスクを背負います。
議会外のツィッターの発言に処分を求めることができないのです。大変心苦しく思いますが、本会議や委員会での問題発言でなければ制度としてはどうしようもないということになります。議会閉会中でもありその求めもできないことになります。
民主主義の制度で選ばれた議員が問題発言をしたとき、ハラスメントに類するものに及ばなければ私は処分することはできるだけ避けるべきだと思います。議会は多数決の論理で動きますが、安易な処分が行われると、それは多数派による抑圧を可能にしてしまうからです。
議会のなかの問題行動を理由にしか処分を求められないのは、議会の中は議会の自治、議会の外は一般社会のルールと切り分けるからです。企業の雇用関係と違うので、議会内では議員に上司はいないことが前提でルールが組み立てられています。選挙で選ばれた発言者を、議会内の誰かが勝手に発言権を奪うことができると民主主義の危機的事態になりかねない、ということからそのように設定されています。
また、市長に苦情を言われる方がいますが、市長と議会の関係は対等となっており、議会はきつい言葉を言えば市長や行政の監視役です。市長が議会運営に手を突っ込むことは、招集など明文化されていること以外ありえないことになっていますし、それが軽微なことでも大問題になります。
有権者の3分の1の投票率で選ばれた市議会ですが、市民が選挙で議員を選ぶことが大変重いことなのです。市外で嫌な思いをされている方は、残念ですが、そういう人を選ぶ自治体なんだ、と、シティープロモーション的理解をしていただくしかありません。
●市議会議員選挙という大選挙区制においては、1%の得票で再選され、こうした悪目立ちしている現職議員を落とすということも結構大変です。50%の市民が反発すれば簡単に落選する衆議院小選挙区の候補者とは大違いです。
●日本社会全体がサラリーマン化しているなかで、そして日本企業が従業員の私生活まで管理させられ責任を負わされる文化のなかで、議員のような特殊な仕事も、ついつい組織には誰か上司がいるかのような感覚におちいりやすいものです。政治の世界に原則上司部下はない、ということを押さえていただけたらと思います。
●一方で、議員の日常的な活動で、議員の地位があるからやっている問題行為を誰が教育し、統制するか、という課題が残りますが、同志的結合である政党や会派の役割ではないかと思います。今回の場合、政党に対応を求めることは難しいと思われますが、あとは市議会の同じ会派の方々の判断だと思います。特に当該議員は与党第一会派のメンバーです。市役所や市長にとって、与党議員と野党議員の峻別が厳しい朝霞市議会では、行政は与党である当該議員の求めが、野党議員である私よりしっかり聞かなければならない立場であり、政策影響力の強い立場から、市民にとってその重みはあるのだろうと思います。
●議会外のことは一般的な法律と書きました。議員といえども一般的な刑法や民法が適用されるのは言うまでもありません。
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