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2017.11.20

11/20 神の座に入れ替わった「現金」の魔力の前のリフレーション政策

Ono_syouhiteimei大阪大学の小野善康名誉教授から、30日発売の「消費低迷と日本経済」をお送りいただきました。

小泉政権の新自由主義の緊縮経済も、安倍政権のリフレーション政策もあまりうまくいかない原因を、需要不足から解き明かすとともに、とくに安倍政権のリフレーション政策の何がまずかったのかを解説しています。
成熟社会になって、単純な物欲が低下しているなか、現金保有願望が高まっていて、いくらお金を刷って市場にばらまいてもうまく使ってくれない。処方として、将来不安をなくすこと、低賃金労働におかれている公共サービスの労働者の賃金改善をすることをはじめとしてとにかく需要側に目をつけて取り組むことが必要、ということ。
興味深いのは、抽象的な概念である現金保有願望は、宗教の域に達しつつあるというような説明は、経済学でも教養を持って見る視点が必要ということを感じさせます。
政治の側では、経営者になるわけでもない人にとって、貯金がなくてもむごい人生にならない、ということをきっちり証明できる制度設計をしていかないとならないということではないかと思います。

🌑2001年、ブレア風味の新自由主義に毒されかかっていた私を引き戻してくれたのが、小野先生の著書「間違いだらけの構造改革」。誰もが痛みしかない改革をしょうがないと思い込んできた時代に、全然違う改革の処方を提示して、今読んでも秀逸な本です。

今回の「消費低迷と日本経済」は小野先生が得意とするところの、現金保有願望をどのように脱出させて、適度な消費を生み出すところから生産力を有効に生かす社会に転換するか、という提言です。さらに安倍政権が、アベノミクスの核にあるリフレーション政策への批判も盛り込まれています。現金流しても消費して大丈夫というメッセージがない以上、通貨供給量をただ増やしても資産価格の上昇しか起きない。その結果が豊かさの実感のない好況、ということなのではないか、という説明がされています。
需要創出に関して、登山が趣味の先生の、日欧の山小屋の比較は面白くて、質の上がらないサービスに、我慢の論理か、不満をクレームとしか扱わない日本が、うまく需要を引き出せないで、みんなが幸せになれない思考パターンに陥っているという指摘は、何かと身につまされる話です。

2000年代初頭の「間違いだらけ」とスタンスを変えたのは、
・当時は現金バラマキ型の福祉を想定していたのか、福祉だけでは景気がよくならない、と書かれていましたが、保育や介護などの福祉労働者を通じた有効需要の創出効果を断言するようになっています。
・国債への評価。2000年代初頭は国内消化できているので大丈夫、という評価でしたが、現在はここまでの残高になると暴落したり、ハイパーインフレーションや悪性インフレを誘発しかねない、
・グローバリゼーションへの対処の処方を提示している、
という点です。

教養人としての素養がある先生にして、お金が交換手段ではなく信仰の対象になっていて、お金を保有することが、万能の杖を得た気分にさせる、という第2章の指摘は面白いところです。
経済学も信仰みたいな世界です。信じたい説にふりまわされる、特に増税がからむと単に政治的思惑で言っている話を強弁するために信じたい説にすがりつく。そんな経済学の論じられ方のなかで、あえて常識や思い込みと違うと、面白そうに指摘し続ける小野先生の姿勢はなかなかです。大変な理論武装しているのに、話し相手がする細かい勘違いや間違いを指摘しないことも、私のような無学な政治家には頭が下がる先生です。

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