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2017.07.11

7/10 保護者制裁論で充溢した保育園政策の議論~保育園等運営審議会で18時以降の追加保育料が決まる

10日午後、朝霞市保育園等運営審議会が開かれましたが、その提案のあまりにもずさんさ、あるいは困った人への想像力が欠けた内容に、唖然としながら傍聴していました。

今後、7月28日10時からの子ども子育て会議での意見聴取を経て、8月21日頃に開かれる保育園等運営審議会で決定となりますが、内容は
1.18時以降30分ごとの「延長保育料」の導入(2018年度から)
2.希望順位が下がった保育園でも兄弟姉妹が同園になるようにする処理のとりやめと点数加算の導入
3.市内在住で市内勤務の保育士の優先入所の点数加算
の3点です。1点目は昨日の会議で、経済的弱者に配慮することなどを付帯決議として決定してしまっています。

市外通勤者にペナルティーを科す内容ですし、困った状況にある人ほど大変な思いをするものです。また審議会の議論も感情論に任せる内容があり、あまりにも当の利用者が聞いたら唖然とする話もありました。
そもそもの目的が不明確なまま提案した行政の稚拙な対応も、保護者制裁論のような議論が横行する結果となった上、一部については決定にまで至ったということに、朝霞市の保育行政に絶望的な感情を持ったものです。

〈提案に対する私の考えと審議会の議論に対する感想〉

1.18時以降30分ごとの「延長保育料」の導入
 これまで朝霞市は不明確であった延長保育を定義し直し、そこに追加料金を求める内容です。30ごとに200円、月極では2000円となります。
 問題は何のためにこれを始めるのかの説明があやふやで、保育の利用の適正化なのか、市の財政のためなのか、全くわかりませんでした。行政立法というものですから、立法趣旨というものがいるはずです。一体なんの効果を狙っているのか、ということです。人に負担増を求めるときの説得術に関して、市職員の準備のなさにびっくりしたものです。
 しかもこの精算は、市が行わず、園と保護者で直接行うというのです。トラブルが絶えないと思います。さらには、それで園の収入が増えて保育士の勤務条件の改善に使うのかというとそうではなく、これまで払っている「延長保育」の補助金から、その保護者負担分が差し引かれるということになります(補助金額の減額は連動している国や県の補助金も減るのではないでしょうか)。仮に始めるにしても、本来は、市が制度として始めるのですから、市が保育料と一緒に徴収すべきものだと思います。

 この議論をするにあたり、保育園事業者、民生委員の審議会委員から、長時間保育で保護者はラクしている、長時間保育は子どもの愛情欠乏を引き起こして問題児になるかのような発言がありました。私はこのような発言を、社会福祉に係る仕事をしている方々が特別職非常勤職員としてなさっていることに驚いたものです。
 このような発言をする委員の方々は、保育園に預ける保護者がどのぐらいの時間まで働き、どのように帰宅して保育園にたどり着いているのか、ということに関して全く想像力を持っているとは思えません(もちろんこういう提案をする行政もです)。
 一般の正社員の定時退社時間は、17時~17時30分ではないかと思います。そこから通勤時間入れて、18時までに朝霞市の保育園に到着している、ということが可能な通勤先ってどのくらいあるのでしょうか。職場から駅、駅から保育園それぞれ徒歩5分だとしても20分です。駅に入ってすぐ発車する電車に乗って池袋がやっとの距離で、都内通勤などしようものなら毎日ペナルティーとなります。これは残業をすべて断って定時退勤しての実態です。
 早く迎えに来られるのに迎えに来ない問題保護者の話が出てきました。これにも2つあり、本当に問題のある保護者なら保護者のもとに置くべきではないという児童福祉の考え方があります。もう1つラクしたい保護者が長時間預けているというのは、地域の人間じゃないですか。地域で解決すべき問題だと思います。17時まで働いて電車が遅れないかハラハラしながらでお迎えに行く保護者がツケを払わなくてはいけない問題なのでしょうか。
 こうした保護者にとって重要な問題を、保護者に説明もなく、保護者代表に相談することもなく、モラハラみたいな言動で決めてしまった審議会と、それでよしとしている市福祉部保育課に問題おおありです。

2.希望順位が下がった保育園でも兄弟姉妹が同園入所になるようにする処理のとりやめと点数加算
 これは1よりもひどい話です。
 今までは、兄弟姉妹同時に入所した場合、希望順位が下の保育園でもできるだけ同園入所になるような処理をしていて、年間30世帯がこの制度の恩恵を受けています。
 兄弟姉妹を別々の保育園に預けている保護者の苦労はなみなみならないものです。相手は乳幼児ですから、歩くのもおぼつかない、ぐずることもある子どもたちです。それを全く偶発的に入所が決まった2つの園にバラバラに入れるとなると、市内公共交通がほとんど体系的に整備されていない朝霞市では、それだけで通勤時間が1時間2時間余計にかかることもありえます。
 提案理由は、事務ミスを誘発すること、事務量が大変だからだというものです。
 しかし、市職員のその苦労を軽減するために、保護者が1~3年、別々の保育園に預け続け、その労力を毎日浪費することは何とも思わないものなのでしょうか。まったく呆れる提案です。
 市は、転園に優先権を与えるように入所審査の点数加算をするということを代案として出してきましたが、まず1~2歳児ではその希望はほとんど叶えられないでしょう。また点数というのは他の子どもの点数が高くなればはじかれる相対的なもので、問題解決のめどが立っているものではありません。さらに転園をあまりにも軽く考えています。ぞれぞれの園の保育士となじみ、道具などを取りそろえ、子どもどうしの関係性もできたところに、それがリセットされることになります。そのことの子どもの負担をあまりにも軽視しています。
 この提案に対しては、保育園等運営審議会で議会選出の遠藤委員は、強く問題点を指摘しておられ、少し胸をなでおろしたものです。
 公務員の仕事の負荷軽減は重要ですが、セーフティーネットや福祉の大原則みたいなものを踏み外してやるべきものではありません。公務員の数日の仕事の都合のために、「保育に欠けて」保育園に預けている保護者が何年にもわたって毎日苦労するなどということはおかしなことだと考えられないものなのでしょうか。

しかもこの制度が始まったら兄弟姉妹別園の家庭が増えるでしょう。彼らは自分たちの責任でもないのに、18時以降の延長保育料を払わずには迎えに行けないことになります。ひどい市の増収策です。

3.市内在住で市内保育所勤務の優先入所の点数加算
 これについては問題ないと思います。保育士が1人働けるようになることで保育の定員枠が平均5人作れるのですから、推進すべきだと思います。比較優位みたいなものです。

●こうやって保護者制裁論が花盛りの審議会の裏で、そうした発言をした保育園経営者に、保育士確保のための補助金バラマキがトントントンと決まりそうです。名目はすばらしくても、制度への人材確保への信頼感が全く生まれません。

●15年前にこの手の審議会を傍聴して、保護者制裁論や、保育園に預けると子どもがぐれるみたいな議論が横行していてびっくりしたものですが、子ども子育て新制度になろうが、エンゼルプランがあろうが、次世代育成支援行動計画があろうが、底流のところは変わっていなかったということと、保育課職員が保護者のことをこういう視点でみていたのかということを改めて認識させられた時間でした。

●地方分権改革の推進論者は、いつも子どもをやり玉にして議論を進めてきましたが、子どもに発言権がなく、保護者に発言権がなく、こうした環境で保育政策が決まっている状況に、地方分権なんかしてよかったのか、今一度立ち止まって考えてほしいものです。今日、安倍政権のもとで地方分権を空洞化させる政策からいくつか打たれているのも、一般論と個別論の整理された議論に、あまりにも無頓着だったからではないでしょうか。

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