9/16 待機児童数が絶対に正しい数字になることありません
厚生労働省が、待機児童数の数え方を変更するようです。自治体や保育関係者からクレームがついたからって、計算方法を変更する、というのはムダだし、そんなことに労力使うなら、というごろついた思いがあります。保育関係者ほど、待機児童数の数え方に問題あり、という議論に盛り上がりますが、それを計算するには、あまりにも変数が多くて、いつも無駄な議論だと思っています。
こうなったのは、世田谷区長はじめ、待機児童数でワーストをもらっている自治体関係者が、待機児童数の数え方がおかしいと騒ぎだしたのが発端ですが、私はそんなことで厚労省に力入れてクレーム入れている暇があったら、不動産屋や保育事業者、保育士養成学校などをまわって、少しでも待機児童を解消する努力をしてもらうべきでしょう。
待機児童数というのは就労や親族介護看護、就学など親などによる「保育を必要とする」子のうちから「保育園入園が決まらなかった」子の数です。その過程では危機的に困っている人だけ抽出するために、転園希望だったり、認可外保育で実質的に保育が行われたりする人を差し引くのですが、それが自治体によって基準がまちまちだと、不利な評価になった自治体関係者が怒っているのです。
まず、その加算減算がどの自治体も一律の基準でできるものなのでしょうか。
さらに、待機児童数を数える出発点にある「保育を必要とする子」は、役所に認められた子どもの数からスタートします。それを全国画一的に定義できるのでしょうか。「保育を必要とする」と認定されなかった子どもの数は最初からどこかに行っていますが、それを定義することは地域事情によりけりで本当は不可能です。
とりあえず「保育が必要」と認定された子どもの数から数えていることに何の疑問も感じていないで、その先の加算減算のところで待機児童数の数え方がおかしいの何のと言っても、永遠の研究テーマでしかないように思います。
働くということが実に多様だし地域性があるということを飲み込むと、そもそも待機児童数は相対的な数字でしかありません。自治体間で正確に比較して優劣をつけるような種類のものでもないし、そのようなことをしても待機児童問題は解決せず、数字を少なく出すことができた自治体の自己満足に過ぎないわです。
数字を示されると、どこか科学的で正しいもので、その確信を裏切ってはならない、と考えるのは、受験秀才的な信仰です。
しかし「待機児童数」が全く無意味かというと、そうではなく、その自治体内においての基準として、問題解決に向けては必要で有効です。他自治体と比較するにしても、変数が多くて相対的な数字なんだと飲み込んで、自治体の仕事の相場を把握するのに使う限りにおいては、使える数字だと思うのです。でもそれは問題解決に向けて自治体が動くことが前提ということです。
いずれにしてもそんな数字に自治体や厚労省保育課が神経すり減らす労力があったら、財源調達することに力を注いだらと思うものです。
●数値目標みたいなキラーワードに縛られると、こういうことが起きるのです。
●保育園が充実しているかしていないかの、自治体間で客観的に比較する数字は、そこの自治体の未就学児に対して、保育定員の比率、保育園の整備率しかないように思います。
待機児童数が少ないのに、保育園の整備率が悪い自治体は、専業主婦が多いので、最近の目黒、世田谷、杉並みたいに、おかれた環境や子育て世代の住民意識の変化があればいつか待機児童問題が深刻に発生します。
待機児童数だけ見て、需要追随で保育園を整備したって後手後手に回るだけなのです。待機児童数というのは諸々の変数の結果でしかないのです。厚労省の統計の責任にして自治体の保育行政が免責されるような問題ではないのです。
もっときついこと言うと、首長が厚労省に「待機児童数の数え方が」などと言わせて、注進もしない無能な管理職は、問題が起きると解決する前にオレのせいじゃない、と考えるタイプと思われます。保育職場からはもちろん、数字を扱うような部署や、トラブルの多い部署の管理職をやらせてはいけないように思います。
待機児童の定義、厚労省が見直し作業
自治体ごとのばらつき是正、年度内に結論
2016/9/15 19:45日本経済新聞
厚生労働省は保育所に入れない待機児童の定義を見直す。「特定の保育所のみを希望している場合は数えない」など自治体ごとに定義にばらつきがある現状を改め、正確に実態を把握する狙い。ただ希望する認可保育所に通えていないのに現在の公表数字に入らない「隠れ待機児童」も対象に加われば、政府が目指す2017年度末の待機児童解消は遠のくことになる。
厚労省は15日に有識者や市区町村の職員などでつくる検討会を立ち上げた。年度内に結論を出し、17年4月時点の待機児童数から新しい定義を適用する見通しだ。
待機児童は原則、保育所に入りたくても入れない子どもの数を指す。厚労省は2日、今年4月時点の全国の待機児童数を2万3553人と公表した。
ところが東京都の認証保育所など地方が単独で運営する保育所に入っているケースや親が育児休業を取っている場合のほか、特定の保育所のみを希望しているときなどには厚労省公表の待機児童数には入らないことが多い。こうした子どもは隠れ待機児童と呼ばれ、4月時点で約6万7000人いる。
各自治体の数え方にもずれが出ている。「特定の保育所」の考え方について、例えば東京都新宿区では第3希望までに入れなかった子どもはすべて待機児童としている。一方で大阪府吹田市は利用者の希望ではなく、自宅から直線2キロ圏内に空き定員がない場合に待機児童としている。これまで厚労省はこうしたずれを容認していたが、利用者が自治体間の比較ができないという問題が生じていた。
15日の検討会では「利用者が近隣の自治体を比べやすいように、定義を統一すべきだ」という声があった一方で、「全国で定義を完全に一本化するのは難しい」という意見も出た。厚労省は今後、自治体にアンケートをとり、どこまで統一できるのか探る。
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