7/14 参院選の数字の分析と朝霞市の姿
7月10日に参院選が行われ、私が応援した候補が当選したり落選したりありました。ご紹介した候補に投票していただいたみなさまにはお礼申し上げます。
新聞やテレビでは、自民圧勝というような見出しが躍りますが、改選議席では、自民党53議席に対して民進党が32議席、与党が70議席に野党が52議席と、今回の改選議席の分で言えば野党は踏みとどまったのではないかと思います(私は与野党比が55~60:45~40ぐらいの比率が最も国会が健全になると思っています)。また1人区では激戦区のほとんどを野党が制する結果となったことも、再生の兆しが見えてきたのではないかと思います。課題は3年後の改選議席で、こちらは与党が圧倒的に勝っている議席で、これが「改憲できる」議席を作り出しているベースです。
ただ、今回の選挙、次の社会像を示すことが弱かったと思いますし、個別政策の訴えもあまりされなかったように思います。与党は民進党と共産党の連立批判と、定義不能になってきたアベノミクスの全面肯定、野党は現政権へのチェック機能の訴えが不十分だったことと、対抗する社会像の提示が不十分だったことが、残念な選挙だったと思います。私もみなさまに何を基準に考えたらよいのか提案するときの言葉を選ぶのに苦慮しました。
今回の記事では、この選挙結果から、朝霞市の特徴となるものをお示ししたいと思います。
1.選挙区選挙の結果
候補者名 政党名 得票数 得票率 朝霞市の得票数 朝霞市の得票率
関口昌一(自民) 89万8827票 29.19% 1万6625票 29.56%
大野もとひろ(民進)67万6828票 21.98% 1万1821票 21.02%
西田まこと(公明) 64万2597票 20.87% 1万1221票 21.02%
伊藤岳(共産) 48万6778票 15.81% 8162票 14.51%
沢田良(おおさか維新) 22万8472票 7.42% 5606票 9.97%
佐々木知子(こころ) 11万8030票 2326票
小島一郎(幸福) 2万7283票 487票
朝霞市でも県でも、民進党の大野候補が民進党の票数とほぼ同じで、選挙区がやや上積みしていることが読み取れます。無党派層で「野党支持」の有権者の上積みが見られます。
公明党は県でも市でも、共産党は県で、選挙区候補が比例区の票より大幅に上積みしていています。伊藤岳候補が共産党の朝霞市の票より1000票程度しか上積みにとどまっています。
おおさか維新も県では比例と選挙区で同じ程度の票数ですが、地域的にみると、おおさか維新の強い地域ではより選挙区候補に票が集まり、弱い地域では比例区より票が下回っています。朝霞市では沢田候補が比例票より1%約500票も上回っています。
朝霞市の特徴としてはやや沢田候補が多いほかは、埼玉県の平均的な結果と同じ傾向です。
県内の特徴でいうと、新座市とふじみ野市が大野候補が4位で伊藤候補が3位に食い込んでいるほか、新座市では西田候補が25%の得票で1位、公明党と共産党の対決が注目されましたが、共産党が上回ったのは蕨市、飯能市、さいたま市大宮区、中央区、浦和区、南区、緑区などが見られます。蕨と飯能は共産党の強さ、さいたま市内は、相対的な結果のようです。
2.比例代表の政党別の選挙結果の分析
比例代表の政党別の市町村別得票を見ると、朝霞市の特徴が見えてきます。
朝霞市では、自民党、おおさか維新、社民党が県平均より高めに出ています。もともと保守的地盤が強固なところに築いてきた民進党の朝霞在住の代議士がなくなったことで、保守の自民への復帰を感じています。さらに自民は絶対ダメだが民進党の失敗は、という新住民有権者の選択肢として、おおさか維新が選択されているのだろうことが県内他都市との比較で見られます。社民党は運動量ではないかと見られます。
一方、公明党、民進党、日本共産党は県内の平均水準より下回っています。公明党や共産党は基礎票より高いので、これは国政選挙になると浮動票が大きく動き、相対的に下回っているものと見られます。民進党は、明らかに復調していますが、伸びがいまいちだったのは、おおさか維新との合計では県平均となることから、同党の伸長によって右側に伸びるのに壁が形成されていることがうかがえます。また、この地域の特徴ですが、国政選挙にしか行かない層に大きく支持されていることがうかがえ、投票率の低さに影響を受けたこともうかがえます。
与党陣営
【自民党】朝霞市は1万8984票、33.63%。県平均32.30%より+1.43%751票。
県内最高率の市 38.95%秩父市1万0902票、町村 44.74%小鹿野町
県内最低率の市 29.38%新座市2万7935票 町村 28.70%松伏町
今回は、自民党支持層から公明党に票だしをしているので、本当の体力はわからない。近隣市では和光市が高めです。安倍政権の経済政策を評価できるアッパー層が多いからではないかと見ています。
【公明党】朝霞市は14.50%、8186票。県平均16%より-1.5%-847票。
県内最高率の市 22.05%八潮市7066票、町村 24.66%松伏町
県内最低率の市 12.69%さいたま市6万9421票(区では浦和区7.97%) 町村 11.17%長瀞町
12月の市議選より少なく、4年前の市議選と同程度の水準です。12月の市議選では公明党が地域活動で党外の票を上積みしているものと見られます。
※県南が強いと思っていたら、行田市、加須市、幸手市など、県北に得票率の高い都市が多い。参院選では共産党と対抗していたので、共産党の強い地域と重なるのかと思ったら、さいたま市大宮区、浦和区が弱くて、民進党の支持率と逆比例する傾向が見られます。
野党陣営
【民進党】朝霞市は19.25%1万0865票。県平均20.40%より-1.15%-649票
県内最高率の市 25.71%北本市8036票(区では26.17%大宮区)、町村 23.07%滑川町
県内最低率の市 17:40%秩父市4869票、町村 14.82%小鹿野町
朝霞市は労働組合に所属する労働者が少ないこと、自治体議員の数、相対的に維新や社民党の支持率が高かったことが影響していると考えられます。また、市議選(公認で1人約1800票、連合推薦の私を入れても3200票)と比較すると、投票率が上がることによって最も影響受け、逆な言い方すると地方選挙で最も棄権しているのが民進党に投票している層という姿が見えます。
県内でみると、さいたま市の衆院1区、5区の該当地域、北本市、鴻巣市、桶川市が高いほか、意外に出てきたのが東松山市、熊谷市で、衆議院議員候補の存在感に比例していることがうかがえます。以前は県内でも強かった朝霞地区4市や越谷市が県平均程度なのは、衆議院議員候補の交代にあたっていることが考えられます。
【社民党】朝霞市は2.13%1202票、県平均1.91%より+0.22%124票
県内最高率の市 2.33%久喜市1601票(区では3.56%岩槻区)、町村3.31%皆野町
県内最低率の市 1.31%八潮市422票、町村1.58%吉見町
駅頭でみられた活発な運動が効を奏して県平均水準より上回った。ただし、市議選で推薦候補の票計が約1650票だったので、今回共産党に流入した票が市議選では推薦候補に流れているものと見られます。
県内で見ていくと、やはり自治体議員やその候補の存在がはっきり出ています。
【日本共産党】朝霞市は12.8%7225票、県平均13.94%より-1.14%-643票
県内最高率の市 17.18%飯能市6386票、町村 16.48%皆野町
県内最低率の市 11.34%加須市5150票、町村 9.84%東秩父村
市議選と比較すると倍ぐらいの票が入っている。過去の水準でいう4500票ぐらいなので、朝霞市でも追い風が吹いていることがうかがえます。
県内を見てみると、県北のほか、越谷、和光など他の野党が強い地域で弱い傾向が見られる一方、所沢市、新座市、ふじみ野市、三芳町など強い都市が点在していて拠点を形成していることが見られます。
【おおさか維新】朝霞市は8.66%4885票、県平均7.23%より+1.43%+806票
県内最高率の市 8.75%和光市3053票(区ではさいたま市南区8.82%) 町村 7.33%三芳町
県内最低率の市 5.43%秩父市1517票 町村 4.73%小鹿野町
朝霞市では所属市議の得票や、他市の市議選で関わっている市議の票より大幅に上回り、これは民進党同様、国政にしか投票しない有権者をある程度つかんでいると見られます。
県北、秩父で弱いのは党名からか。高崎線沿線は民進党の支持率の高さと逆比例。朝霞地区4市、衆院15区(さいたま市南部と蕨・戸田)が高め。県南の所得の高い新住民が、自民党には投票したくないが民進党は、という層の受け皿となっていることをうかがえます。
3.比例区の個人名投票
朝霞市の順位
これを見ると目立った組織票は、4位のうと(自衛隊関係)、5位の片山さつき(自動車・運輸・エネルギー業界)、6位のはまぐち(自動車関係の労働組合、自動車総連票)、8位の藤末の立正佼成会などが目立つ程度で、他は山田太郎、今井絵理子、有田芳生、福島みずほなど組織より理念やシンボルの候補が上位に来ていることが特徴で、ベッドタウンという性格から票の組織動員が難しい地域だということが見られます。
1位 今井絵理子(自民) 492票 自民系の福祉団体
2位 山田太郎(改革) 487票
3位 青山繁晴(自民) 476票
4位 うとたかし(自民) 471票 自衛隊関係
5位 片山さつき(自民) 426票 自動車・運輸・エネルギー関係
6位 はまぐち誠(民進) 390票 自動車関係の労組
7位 長沢ひろあき(公明) 315票
8位 藤末健三(民進) 312票 立正佼成会
9位 有田芳生(民進) 299票
10位 福島みずほ(社民) 295票
比例区の個人名投票は、応援した団体の熱心な働きかけでしか出てこない面があるので、応援している組織力が試される選挙です。私が読み取れる民進党では、以下のような票の出方をしています。
連合の労働組合系の候補
6位(15位) はまぐち誠(民進) 390票 ホンダ、トヨタ、日産などの労組、自動車総連
14位(22位) かわいたかのり(民進) 168票 スーパー、繊維工場、フェミレスなどの労組、UAゼンセン
22位(19位) 矢田わか子(民進) 115票 パナソニック、東芝などの労組、電機連合
26位(29位) 石橋みちひろ(民進) 111票 NTT、KDDIなどの労組、情報労連
28位(14位) 小林正夫(民進) 96票 東京電力などの労組、電力総連
31位(24位) なんば奨二(民進) 93票 日本郵政労組
36位(41位) たしろ郁(民進) 73票 JR東日本労組
39位(45位) もりやたかし(民進) 71票 東武、国際興業などの労組、私鉄総連
44位(25位) えさきたかし(民進) 58票 自治体職員や委託先の労組、自治労
51位(42位) 藤川しんいち(民進) 37票 金属加工業などの労組、JAM
59位(30位) 吉田忠智(社民) 27票 自治労ほか
62位(44位) 轟利治(民進) 24票 新日鉄や石川島播磨などの労組、基幹労連
83位(28位) なたにや正義 10票 教員の労組、日教組
労組以外の民進党を支援した社会団体の支援候補
33位(8位) 藤末けんぞう 312票 立正佼成会
38位(36位) 白しんくん 72票 立正佼成会
40位(55位) 大河原まさこ 64票 生活クラブ生協の活動家による「生活者ネットワーク」
49位(65位) 西村まさみ 38票 歯科医師会(自民党にも推薦候補が存在)
99位(76位) かまたに一也 5票 農業関係
カッコ内は全国の順位
という結果で、ホンダの工場、東京通勤だったり地域のスーパーで働く人たちが相対的に多く、工場が少ないこともうかがえます。
自動車が相対的に高い票を出しているのに、他の製造業があまりかんばしくない得票であることを見ると、居住地が職場と県であったり、連合の地域組織をまたぐために、うまく票につなげていくことが難しいこともうかがえます。
また公務員関係は、県内で連合以外に加盟する組合が多いことで、他県のような票の出方がしていないことが見られます。教員組合でいうと、市教組が日教組ではない全教加盟であり、ごく一部の教職員である市民が入れているにとどまっているものと見られます。
比例代表の個人名投票を市町村別に見ていくと、地域の社会構造が見えてきます。
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