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2016.03.29

3/29 政府の保育対策の問題点と評価点

政府が昨日、待機児童への緊急対策を発表しています。
政治が、保育園に入れなくて仕事を失う人のことを考えようとしたことは評価していますが、一方で出てきた対策が中身がなさすぎて、まとめが必要ではないかと思います。

一週間ほど前の記事にも書きましたが、保育制度の改革では、小泉政権時代が最も効果がないことを行い、それ以後の政権は一貫して前向きな対応をとっていますが、それでも状況を甘く見過ぎていることと、政治の側に当事者がいない状態です。
小泉政権時代は、保育分野に既得権益を設定して、国民の仮想的のように演出して、必要な改革を空回りさせてきたことが問題でした。また民主党政権が終わった後は、せっかく確保した消費税増税財源を年金積立金に取られたりしながら保育に振り向ける財源が刈り込まれて、必要な政策が停滞しているところがあります。

今回の対策は、既得権益攻撃をするような価値観をもつ塩崎厚労大臣のもとでは、小泉政権期に大した効果を上げなかった政策がべたべたと貼り付けられている、という感じがしています。
国は、何より、保育園整備が自治体で止まってしまっている事情を解消していくことを専念すべきです。思いつきみたいなこといくらやっても、厚労省保育課をトップに自治体、保育園事業者、建設業者、保護者団体もみんな改善に向けての動きがそのことで空回りしてしまうのです。

とくに一番の課題は、保育所の建設費は結構出てくるのですが、保育園の運営コストの自治体負担分が超過負担になっていて、その構造を改善しないと、自治体としてはどこかで対策が限界に来るということです。

●以下、塩崎大臣の発表した緊急対策とその私の考え方です。

Ⅰ 子ども・子育て支援新制度施行後の実態把握と緊急 対策体制の強化 1.厚生労働大臣と市区町長との緊急対策会議等 ○ 厚生労働大臣と待機児童が100人以上いる市区町長との緊急対策会議及び待機児童対策緊急部局長会議を開催し、国・市区町村が 一体となって待機児童解消に向けた積極的な取組を促進 2.自治体からの優良事例・課題・要望等の受付(実施中) 3.厚生労働省ホームページによる保育に関する国民からの ご意見等の募集(実施中) 4.「保活」の実態を調査 ○ 保護者目線に立った施策展開に資するため、平成28年4月入園に向けた「保活」の実態を調査 5.保育コンシェルジュの設置促進(Ⅳの1参照)

1~4は実施した方がよいが思いつきアイディア集みたいにならないことを留意してほしい。自治体の首長も保育問題をよくわかっていない方も多く、市民からの批判への防戦に終始してしまっている人もいる。5は、制度の決め打ちをするより、何らかの最適入所のための調整を工夫し、保育園の入所決定の仕組みそのものを総点検することが重要。

Ⅱ 規制の弾力化・人材確保等
1.保育園等への臨時的な受入れ強化の推進
○ 人員配置や面積基準について、国の定める基準を上回る基準を設定している市区町村において、国の基準を上回る 部分を活用して、一人でも多くの児童を受け入れるよう、市区町村に対して要請する。
2.自治体が独自に支援する保育サービスの支援
○ 自治体が単独事業として支援する認可外保育施設が、認可保育園等への移行計画を作成した場合に運営費を補助する。 その際、現行の認可化移行運営費支援事業の補助要件である認可化移行期限(5年間)を緩和し、自治体が単独事業と して支援する認可外保育施設への支援(運営費の一部及び改修費の補助)を行う。この措置を通じ、結果として利用者の 保育料軽減につなげる。
3.認可基準を満たす施設の積極的認可
○ 「客観的な認可基準を満たした場合には、認可権者である自治体は認可しなければならない」とされている新制度の 基本的考え方を、待機児童のいる自治体に対して徹底する。特に、待機児童がいて、事業者の参入意欲があるにも 関わらず、積極的に認可をしない自治体の運用については、是正を要請する。これにより、意欲のある事業者の積極的な 参入を支援する。
<是正を要する事例> ○・ 市区町村の整備計画を上回って保育ニーズが増大しているにも関わらず、既に定めた計画以上に認可をしない事例。
・ 認可の条件として法人の実績や職員の経験年数等を必要以上に求め、新規参入を事実上困難にしている事例。
・ 既存の保育園への強い配慮や将来の人口減を理由に認可に消極的な事例。
・ 保育園等を認可する審議会を4月開園に向けた年度単位のみの運用とし、年度途中の認可が行われない事例。
4.小規模保育園等の卒園児の円滑移行
○ 小規模保育園等の卒園児の3歳以降の入園が円滑にできるよう、連携施設の設定に市区町村が積極的に取り組むよう 促す。
○ 市区町村が丁寧な利用調整を行うことにより、円滑な入園を推進する。
○ 例外として認められている3歳児以降の継続入園をしやすくすることも考慮し、19人以下で定員設定されている小規模 保育事業について、定員弾力化により、19人を超えた受入れの拡大(22人まで)を推進する。 (人員基準や面積基準は満たすことが必要)
5.幼稚園の預かり保育への支援強化
6.定員超過入園の柔軟な実施
○ 2年連続して定員を120%超えて入園させた場合に3年目に公定価格が減額される取扱いについて、待機児童の現状 に鑑み、その期限延長を行い、柔軟な実施を促す。
【人材確保】
7.土曜日共同保育の実施可能であることの明確化
○ 土曜日の保育の利用が少ない場合について、保育士の勤務環境改善等に資するため、近隣の保育園等が連携し、 1か所の保育園等で共同保育することが、公定価格の減額なく可能であることを明確化する。
8.保育人材の資質向上・キャリアアップのため、以下の研修を推進
9.保育士の業務負担軽減のためのICT化の推進
10 .保育補助者雇い上げ支援等の推進
11.(保育士の)短時間正社員制度の推進等
12.保育士の子どもの優先入園
13.保育園等における保育士配置の弾力化の円滑かつ着実な実施
○ 4月から実施予定の、保育士配置の弾力化の特例措置について、円滑かつ着実な実施について周知徹底を図る。

前半の規制緩和に関しては、塩崎色が強い。すでに小泉政権時代に何度も打ち出されて、効果を上げなかった政策も多く、また空回りしでいるなぁ、というのが感想。
自治体が認可すべきものを認可しないことを取り上げている「3」は、一つ目の認可基準以外の項目は、自治体独自の安全確保や質の向上のための取り組みに対する干渉で問題だと思う。朝霞市の場合、保育士がいなくても開ける「小規模保育C 型」が開設を要求したら止められないということを厚労省が徹底するということなので、やはり条例からカットした修正案を昨年の春の市議会で否決したことの問題は大きかったと見ている。
また介護でも見られたが、「小規模保育」の適用拡大をすることは、むしろ保育園整備を複雑化し非効率にする可能性もあるので要注意である。
小規模保育施設を整備してきたが、やはり3歳児での認可園への移行は課題。5年とまたずに連携園を確定させることを促すことは賛成する。
保育士の人材確保のためには、小手先の賃金改定財源ではなくて、保育財源の計算の基準となる福祉職給料表の格付けの改善が必要。今は25歳独身労働者を基準にした給料表の格付けになっていて、それを全年齢の保育士で分け合っている。これを何歳を基準にするのかが問われている。
「7」については必要性を感じている。週休二日制の前提のなかで、平日同様の位置づけて、個々の保育園が少ない土曜通所者に対応することの負荷が高いという意見はある。一方で子どもの保育の連続性や通所可能性、保育士の側の対応可能性も留意しなければならいな。
「9]のICT化は軽減にならない。端末に振り回されることは、子どもをまず見る保育士の仕事の業務を複雑化させてしまう。ICTの活用で管理の可能性が高くなると、事業者と保育士との間での管理業務を増殖させてしまう危険性がある。
「11~13」の保育士の職場復帰に関しての支援は、トライしてみることは必要。一般利用者より保育士の保育所利用を優先することはモラル的にいくらでもいいつのることはできるが、現に保育士が1人職場復帰すれば3人から30人の保育量を創出する可能性を持つ。
「10」の保育補助員は要注意。福祉分野は、人材派遣業的な世界が狙っている労働市場で、人材不足になると賃金を上げて人材確保するのではなく、タダで働く人と市場競争にさらして健全な労働市場を壊そうとする動きがある。一時的にはよいけども、システムを破壊するもので労働力の代替としてボランティアの活用は進めるべきではないと思う。
「2」については現在取り組まれているが、その結果として、国県4分の1・自治体4分の1・保護者負担2分の1という保育コスト負担の構造がファンタジーである限り、自治体負担の超過部分を地方交付税か国・県補助の改善なくして進まないだろう。朝霞市においても、保育コストは全体で45億で、先の負担割合でいうと11~2億の負担になるはずだが、実際には25億円であり、1園増やすと超過負担は2500~3000万円上がる。保育料値上げをある程度しても、超過負担は半減しない。

Ⅲ 受け皿確保のための施設整備促進
1.施設整備費支援の拡充
① 資材費等の高騰などを踏まえた借地料への支援の強化
② 小学校の空き教室等の活用
○ 学校、公営住宅、公民館、公有地等の地域の余裕スペースを活用した保育園等の整備を促進する。
○ 整備費に設けられた「地域の余裕スペース活用促進加算」の基準額を改善する。
③ 公園などの都市施設等を活用した保育園等の設置促進
○ 保育所等整備交付金の「地域の余裕スペース活用推進加算」の対象として促進する。
2.改修費支援等の拡充
① 地域のインフラ(空き家、空き教室など)を活用した一時預かりの推進など
○ 保育対策総合支援事業費補助金の1メニューである「保育環境改善等事業」を見直し、改修費支援を実施する。
② 改修費支援の拡充
○ 保育対策総合支援事業費補助金において実施している、小規模保育等の多様な保育サービスへの改修費支援に ついて、補助単価を引き上げるとともに、定員を増加する場合や老朽化に伴う修繕等についても補助対象とする。

「1」のうち借地対策はやった方がよいけれども、借地への補助がどういう効果をもたらすのかも考えておかなくてはなりません。
この項目に関しては、否定するまでもないけれども、そんんことは2000年ぐらいからやれるところはやっていて、やっても解決は局所的ですよ、としか言いようがないところがあります。
他施設利用に関して、保育園が足りない地域というのは、学校の空き教室も公園の余裕スペースもあまりありません。こういう話ばかり国が特だしして、自治体の議会や保育園政策を審議する場などで、ありもしない資源を使え使えと言われて空回りすることが問題なんじゃないかと思ったりすることもあります。

Ⅳ 既存事業の拡充・強化
1.保育コンシェルジュの設置促進(朝霞市も該当)
○ 待機児童が50人以上いる市区町村を中心に「保育コンシェルジュ」の設置促進を図る。
○ 保育園等入園希望者への4月以降も継続した丁寧な相談を行い、小規模保育、一時預かり等多様なサービスにつなげる マッチングを実施する。
○ 申請前段階からの相談支援や、夜間・休日などの時間外相談を実施するなど、利用者の視点に立った機能強化を推進する。
○ 小規模保育園卒園時の保育園、幼稚園、認定こども園への円滑な入園のための利用調整を推進する。
2.緊急的な一時預かり事業等の活用
3.広域的保育所等利用事業の促進
○ 隣接する市区町村のどちらかに空いている保育園等がある場合、市区町村の圏域を越えて保育園等の利用調整が可能な 場合、送迎バスを活用し市区町村の圏域を越えて保育園等の広域利用を支援する。
○ 自宅から遠距離にある保育園等への通所を可能とするための送迎の実施
4.地域の中での円滑な整備促進(地域住民とのあつれき解消策)

既存事業なので今やってもだめなんですよ、としか言いようがないのですが、目立つのは保育コンシェルジュです。しかし入れないのは1~2歳児で、そこでは「ミスマッチ」(この言葉はあたかも保護者がわがままだから入れないと思わせたい意図を感じます)での空き枠は200人の待機に10人程度なので0.5%です。そこで人件費使ってコンシェルジュを置いても、やることは高度成長期の満員電車の「押し屋」としての役割しかできないのではないかと見ています。入所のスーパーバイザー的な権限を与えればコネ入所の温床になる副作用もあります。

バスを利用した広域利用は、慎重にとしか思えません。保護者が日々施設で何が行われているのか確認できないような預け方は例外であった方がよいと思います。また市域を越えてというのは待機児童問題が起きている地域は連続的なので、それで解決できると思うのは限られた事例だと思います。

Ⅴ 企業主導型保育事業の積極的展開


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