5/11 松下圭一先生亡くなる
法政大学法学部の名誉教授の松下圭一さんが亡くなったというニュースが届きました。高校生のときから先生の著書には親しんできたので、本当に残念です。安らかなお眠りをお祈りいたします。
松下先生から一番影響を受けたのが岩波新書の「市民自治と憲法理論」です。憲法が何をめざそうとしているのか、ということと日本の「行政法学」がどういう制約があるのかと解き明かし、その矛盾をビシバシ指摘しています。
私がこの本と出会ったのは高校時代で、権威主義的な左派に疑問を感じていたときに、早熟な同級生から勧められて読みました。以後、仕事の節目節目で、考えるときの基盤であり補助線としています。もちろん議員になってから、憲法は何を求め、その矛盾は何か、ということを見いだしたり、問題解決のそもそもの法解釈の問題を発見するのにいつも思い返したり、読み返してまいりました。
近年は、自治体で自治基本条例が制定されて、自治体における参加や市民の情報公開や意見反映の仕組みが構築されたり再確認され、議会に関しては地域のことを考え議論する改革への歩みが始まって、松下先生の期待する方向に世の中動き始めています。その一方、自治基本条例への自民党の一部のバッシングで松下先生が国際共産主義運動の工作員であるかのような表現が行われるなど、聞くに堪えない誹謗中傷も見られました。また菅直人元首相に理論的影響を与えたのですが、それが全ての評価にされてしまい、必ずしも市民自治の論理が貫徹していたとは言えない民主党政権のネガティブな評価とともに、松下理論に関して否定的な評価が流行しているのは、決めつけ過ぎだろうし、思考を止めるもったいないことではないかと思っています。
●行政職員が、私の質問への「傾向と対策」として「市民自治の憲法理論」をご一読くださることがよいのではないか、と思います。それを肯定するにしても否定するにしても、です。
●一番援用できたのは意外と自治体の臨時・非常勤職員の運動を担当したときでした。自治体の臨時非常勤職員の法制度は、為政者の都合のよいように解釈や判例が組み立てられ、限定された職務に対するの労働力に、正規職員以上の規制や「雇い止め」という制裁が加えられる仕組みになっていました。そもそも自治体がなぜ人を雇うのか、そのための法はどうあるべきか、という視点から解きほぐすのにこの本が役に立ちました。
●松下先生は、安易に「悪法は法なり」とか「法治国家」といって、行政が作ったルールを市民が唯々諾々と従わせる行政国家のありようを問題視し、特に地方自治法の解釈をはじめ戦後の行政法学が、戦前の官僚支配を継承して憲法の期待する自治の考え方を空洞化させていることに批判を当てています。そのキーワードが「法の支配」ですが、第二次安倍内閣で首相は「法治国家」と言わずに「法の支配」という言葉を多用するのが考えさせられるものがあります。安倍首相の場合は、市民ではなく為政者の側として、法律を自由に解釈する考え方を、利用している問題があると思います。
詳しくはこちらをお読みください。
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