9/12 子ども子育て新制度の条例に修正案を出しました
9月10日~12日、朝霞市議会民生常任委員会が開かれました。
予告どおり、決算、補正予算と、子ども子育て新制度に向けた条例5本の新設、改正が行われました。
これで、朝霞市も来年度からの保育所制度の改革、子ども子育て新制度の条例整備が一段落つき、来年度に向けた事業者、入所希望者の事務が進められることになります。
私は、新制度がスタートしていくことに理解をしつつも、この条例に対して、いくつかの問題を感じ、2条例案に対して4本の修正案を委員会に提出しました。もちろん、質疑を通じて、運用で改善を期待できると理解したところもありましたが、最終的に、①条例としてふさわしくない表現があったこと、②朝霞市に作るべきではならないカテゴリーの保育施設がある、と考えたことからです。
民生常任委員会(定数6人)が、委員長を出すと市長与党が過半数割れを起こしている、という状況のもとでしたが、残念なことに子ども子育て新制度に関する修正案はすべて少数否決され、原案のまま可決されました。
●市議会民生常任委員会での、新制度の関連条例の審議は、11日の決算審査の遅れで、12日の午後にずれ込みました。12日の午後から19時30分過ぎまで議論が進められました。
●子ども子育て新制度が想定している保育施設には以下の8施設に分類されて制度が設計され、事業者が自治体に認可・確認を求めれば、待機児童問題がある限り、朝霞市は受けれざるを得ない制度となっています。
【市役所に入所を申し込む保育施設】
・今のままの(認可)保育園
・認定こども園(朝霞市にはまだない)
・新制度のもとの幼稚園(保育課に申し込む幼稚園、朝霞市は来年4月はまだない)
・小規模保育A(朝霞市にはない、全員が保育士資格を要する、ミニ認可保育所)
・小規模保育B→朝霞市の多くの家庭保育室がこの制度に移行、半数以上が保育士
・小規模保育C(朝霞市にはない、市長の設定した研修を受けた保育者がスタッフ)
【利用者と施設との直接契約の保育施設】
家庭的保育(朝霞市では家庭保育室制度の継続)
事業所内保育施設(公費を出す以上定員の半分は地域住民に開放、朝霞市ではまだない)
●このうち問題は、小規模保育Cという制度。
資格職である保育士が1人もいなくてもよくて、施設は低層階でなくてもよい、というもの。もともと東京23区の、保育事情が逼迫していて、さらに土地に余裕のない区で、賃貸マンションを利用してボランタリーで事業展開している保育を普遍化しようとして作られた制度です。
赤ん坊をケアする職員は、自治体の首長の実施する研修を受けた人が認定され、その職員は保育士より偉いという位置づけになっています(2~4年かけて育成された保育士より、政治家の指揮のもとで育てられた保育スタッフが同等どころかそれ以上に偉いのかわけわからん)。
しかしやはり専門職を必要としない、マンションの一室でも開ける、という保育所などを公的に認めると、それはベビーホテル問題を引き起こしかねません。朝霞市の保育事情もゆるくはないですが、そこまでして対策を打たなくても、保育士が半分以上いて、1~2階に開設する小規模保育B型があれば対応可能な状況ですし、事業者も専門職なしに運営するほどの勇気もありません。
でも今度の保育所制度は、待機児童問題が存在する限り、事業者が出てきた以上、条例に書いてあれば認めて子どもを入所紹介し、公費を出さざるを得ないことになりますから、望ましくない保育施設など条例に書いてはならないのです。
●私は、提案された条例から小規模保育C型の問題展を是正する修正案を市議会に提出することにしました。
私が物心ついて社会問題に関心を持ち始めた1980年頃に、全国各地のベビーホテルで子どもが相次いで亡くなる事件が社会問題化して、ショックを受けた思い出があります。
また、私が自治労の職員として、保育政策を担当していた2000年前後は、今日に続く待機児童問題が深刻になりはじめた頃でした。首都圏のあちこちにベビーホテルが自治体の知らないところで開設され、やはり事故死、虐待死が頻発しました。認可保育所制度に疑問を持つ有識者から、直接・間接に認可保育所、公立保育所の役割に対して疑義を示され、労働組合という立場でありながら、対外的・対内的な対応に奔走したことを思い出します。
そして、豊島区の保育施設での死亡事故は、朝霞市民が犠牲になりました。
※10年以上も前の本になりますが、現代のエスプリ別冊「ベビーホテル」は参考になります。
そのような体験から、人命第一、専門職のいない保育施設など認めてはならない、と思い、「従うべき基準」と人命のどちらが大事かを考え、条例に記述している小規模保育C型をそのまま認めてはならないと考えました。
また、朝霞市においては、長年、小規模保育事業B型と同水準の「家庭保育室」を自治体独自の制度として育成してきており、今回も半分以上がそこに転換していくことと整理されています。今さらC型を追加する必要性もない、という感覚もありました。
国の判断の遅れによる事務の混乱にともない、本来は制度改革に必要な審議会・委員会での条例提示や、パブリックコメントが実施できなかったなかで、制度のゲートキーパーとして、市議会議員の責任として、未来に禍根を残す条項は削除しておく挑戦はしておかなくては、と思ったからです。
私は対応案を2つ作り、検討しました。①条例中から小規模施設C型を削除する、②条例中の小規模施設C型を残しても、職員要件に保育士最低1人を入れる、の2つです。
●修正案の提出に先立ち、民生常任委員会で、国が「従うべき基準」として条例に書き込むよう押しこんでいる内容を拒否したらどうなるのか議論か行われました。
行政側や与党議員からは、国が「従うべき基準」として位置づけられているから、C型を条例に書かないことはできない、と反論をいただきました。
そこで私は、行政側に「従うべき基準」を強制させられる根拠法文を確認し、それに従わないことで受ける国からの制裁の有無、自治事務に移行した保育政策は誰が判断の責任があるのか、などを問いただし、確かに法律が自治体に要求しているものの、結果として、小規模保育C型を条例から削除しても、朝霞市にとって具体的な不利益はないと判断いたしました。違法条例とするなら、国からは国と地方の係争という展開になるか、利害関係のある国民からの行政訴訟ということになろうかと思いますが、どちらも実務的にはペイせず、具体性はない話です。
国との関係では、米軍基地移設をめぐる沖縄県名護市や、対岸に建設中の原子力発電をめぐる北海道函館市のように、国策そのものに対して住民を守るという立場で奮闘している自治体があるなかで、市役所も同業者も利用者も望んでいない保育施設のことで、不要な制度をカットしたところで、国との関係がおかしくなる方が変だと判断もしました。
むしろ問題になればなるほど、自治事務としての保育事務において、市町村の主体的な責任は何なのか、C型を作れる条例をすべての自治体におしつけることに意味があったのか、ということの議論が明確になると思ってもいます。そもそも保育制度の地方分権を進めていくなかで、質を下げるのではなく自治体の判断によって質を上げることも含まれている、というのが理屈だったはずだからです。
※実際に長野県の山間部の知人の議員は、保育所が1つしかないにもかかわらず、「従うべき基準」として8つもの保育制度を条例整備しなければならない今回の制度改正にうんざりしておられました。
さらに保育士を最低1人配置するという修正をしたところで、その矛盾は解決しないことも判明しました。
●その結果、①の小規模保育C型に関する条項を条例案から外す修正案を提出いたしました。
民生常任委員会(定数6人)は、昨年12月の議会人事のめぐりあわせで、与党が実質過半数割れです。他の与党ではない議員2人からは、新制度の安易な保育施設の追認はけしからんという発言をこれまで聴いていたので、当然、この修正案は、最低でも与党ではない議員3人の賛同を得られ、委員会修正が実現できると思っていました。
しかし、採決の結果、賛成は私と石川市議(共産党)だけで、もう1人の無所属議員は反対され、資格職も何もないC型を認めない、という修正は否決されました。
その後に行われた修正部分以外の賛否の採決では、修正案に反対した議員は条例そのものにも反対され、有権者から見た目には、こんな制度は認めていない、というかたちは取られたことになったのだと思いますが、釈然としません。子どもの安全を保障する人権についてどのように考えているのか、問われる一幕だったと思います。
一方、共産党の石川市議は、新制度の関連条例全体に反対という立場で本来は修正案に賛成しなくてもよい立場したが、それでも改善できるところは改善できる機会に改善しなければ、と、党所属市議会議員を説得して、修正案に賛成して、市民の不幸回避に協力されました。
もちろん、与党議員からも賛同を得たかったのですが、政治的には、市長が提案した条例を傷付けてはならない、という役割があるので、やむを得ないし織り込み済みのことで、仕方ないとそこは割切っています(もちろん二元代表制の市議会で与党も野党もないという意見もありますが、そういって共産党以外全員賛成みたいな市議会もどうかと思っています)。
せっかくの与野党伯仲の委員会構成のもとで、市民を守るための水準を高める挑戦が成就しなかったことは、私には、市民にとって市議会の役割が問われ、面白くないできごとでした。
●同じ条例のなかで、職員の要件として「健全な心身」とあったので、削除する修正案を別に提出しました。
厚生労働省の各県労働局が、主観的採用を助長して採用差別の温床である、ということで、採用募集に書くなと指導している文言が、子ども子育て新制度の国が自治体に作れと指示した条例案のひな形に使われていて、これはまずいと思い提出しました。新潟市の関連条例でも、いきさつはわかりませんが、議会に提出される前に削除が行われています。
これも同様な展開で、私と石川議員だけの賛成で、修正案否決となりました。
もう1人の与党でない議員の方からは事前からは賛同しない感触を得ていたので採決結果に仕方が無いと思いましたが、その後彼から、私の提案した修正案と同趣旨の附帯決議を出されてきました。何だろうかと思いました。
差別の温床になることは、とってつけたようにアピールすべきものではなくて、最初から出さないという対応が基本だと思っていたのと、釈明みたいな内容の附帯決議と同趣旨のことは、原案のままでも採用差別させません、という役所側の答弁でも得られているので不要、ということで私は与党議員とともにあっさり反対して否決いたしました。
●「反対するなら対案を出せ」という正論があります。
今回もまた修正案を出して、現状より少しでもよく、ただ反対して成り行きを見るのではなく、と思い行動しましたが、日本社会の公的な場というものは、対案無く反対している方が「あいつら」として居場所を残してくれますが、対案や修正案を出すと、最も嫌われるようです。
賛成するかと思われていた議案に反対したときには風当たりは強くないのですが、修正案を出すと、空気が悪くなり、採決が終わった後には、よくわからないのですが謝るようにお礼を言い続けなくてはならない状態でした。
●議会事務局のみなさまには、不本意な作業を増やしてしまったにもかかわらず、いろいろ尽力していだだきました。ただただお礼申し上げるのみです
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