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2014.07.07

7/7 兵庫県議会は真相究明を優先すべき

兵庫県議会が、号泣会見と政務活動費の使途が疑惑を呼んでいる野々村県議に対して、辞職勧告を決めたようですが、その運用について、私は問題がいくつかあると思っています。

野々村県議の政務活動費は説明がついていないものが多く、本来は、辞職するかしないか、という議論をする前に、使途の裏付けを取って、真相究明をするのが議会の責任だと思います。それをやった上で、使途に問題があれば、議会としての懲戒を行うのが、経済的不祥事への対応方法のはずです。
この段階で「辞職勧告」を突きつけるのは問題ではないかと思っています。

さらに不透明な根拠で、議員を多数決原理で辞職させるのは、悪しき先例になりかねません。
我が国には戦前1940年、自由主義者の斉藤隆夫議員が反軍演説をしたら、軍部出身の大臣すら苦笑する程度の受け止めだったにもかかわらず、除名され、それ以降、国会は一気に議論がなくなり、政党は自壊的に解党、大政翼賛会の結成に進んでいったことは、戦前の議会史には随所に書かれています。そのときにも、斉藤隆夫議員の演説内容がけしからんというだけで大した理由はなかったのです。なお、斉藤隆夫は、兵庫県出石を選挙区とする議員です。

今回とった兵庫県議会は3つの問題があろうと思います。

1つは、議員資格に関わることを、地方自治法で定められている懲罰の手続きを経ず、「辞職勧告」という根拠も不明確なら義務のない制裁としてよいのでしょうか。

1つは、野々村議員の罪状が不明確であることは問題です。不明朗な会計が問題なのか、記者会見の不手際が問題なのか、同業者に迷惑をかけたことが問題なのか。現時点では流用したことが確定しているわけでもないので、議員をクビにするまでの罪状を構成しているとは思えません。

1つは、本会議も開かずに半ば懲戒的な権力を行使し、会派の合意だけで、特定の議員に、おまえ自発的にやめろ、と決めてしまったことです。実質的に辞めない限り県議会会派は相手にしない、という決議なので、辞めない自由は残されても、議員特権以外、採決の賛否以外、議員としての権限は停止されたことになります。

現時点で県議会がやるべきは、記事中の丸尾議員が言っているように、真相究明と、それにともなう政務活動費の支出ルールや運用の見直しではないのでしょうか。
もちろん真相究明のなかで、横領的な使途が見つかった場合には、そのときこそ、正規に懲戒手続きを行うべきです。ただしそれも罪刑のバランスが重要です。
また自治体議会は、議会としての自治があるので、懲戒的なことをする場合は、慎重に慎重を重ねて、何が悪い先例にならないのか、最善を尽くして検討する必要があるのだろうと思います。

世の中的には、何かと「クビにしろ」という社会ですから、兵庫県議会の対応に拍手喝采なのでしょうが、議員の資格を剥奪するということは、多数派が気に入らない議員をやめさせていくことで、ファシズムにつながりかねない危険性があるわけで、その運用は慎重であるべきではないかと思います。

悪い先例にならなければいいな、と思うばかりです。

●本人も辞職の意向を示しているようですが、ほんとうに始末が悪いものです。
辞めたくなったとしても、こうした手続きや根拠に問題のある「辞職勧告」を突きつけられての辞め方が後々に悪い先例を作らないか、よく考えて行動してもらいたいものです。

●先例、先例と書きましたが、議会は行政から独立しているタテマエになっており、また行政のように詳細な法を決めず、すべての議員が対等というタテマエのもと、自治的に合議で問題解決をすることを前提にしています。
そうなると、何か問題が起きたときに、あのときどうしたか、ということが重要で、それは先例や慣習法の積み上げを教訓に問題を処理していきます。
その先例を大切にしていかないと、多数派がいつも法になってしまい、多数派がやりたい放題できてしまうということにもなります。そういう意味で、議会では、議会内の先例や申し合わせは大事だし、先例や申し合わせを作ってしまう行動は思慮が必要になります。
さらに、先例や申し合わせが時代背景や議会構成の変化で間尺に合わないというときには、それを放置せず、議会内で合議の上、自治的に解決することが不可欠ではないかと考えています。

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