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2014.04.01

4/1 県議会文教委員会での修学旅行感想文の資料提出などに弁護士会が抗議声明

2013年12月の埼玉県議会で、修学旅行に参加した生徒の感想文を県議会文教委員会が検閲するような決議を出したことを問題として取り上げましたが、それに3月29日の毎日新聞埼玉地方版対して、埼玉県弁護士会から抗議声明が出されました。
抗議声明の全文を入手いたしましたので、お読みになりたい方は文末「続きを読む」をクリックしてください。

公教育は、どんなに所詮、国家や社会や学校秩序の要請という呪縛から逃れられないものだ(それでもできるだけそうしたところから距離を置く学問の自由は保障されるべきですが)、という限界をふまえた上で、どのように子どもの自由、とりわけ思想などの内面を守り知的能力を向上させるか、という私の考え方とアプローチとは大きく異なりますが、法解釈を引用するなど、学校への政治介入を警鐘を鳴らす立場からは正当な内容ではないかと思います。
いずれにしても、①政治的には非力な子どもの感想文を政治家が点検するなどという検閲を想起されるようなこと、②権力的な多数決原理によって教育への介入など、やるべきことではないことは言うまでもありません。

●地方自治としては2つの問題を孕んでいます。1つは、教育委員会制度が独立王国制度になっていて、首長部局以上に、市民の声が通じない世界がある、ということです。そのことによってかえって、右も左も、教育政策は、副作用も考えないでもの言う政治家が言いたい放題の世界になっている。今回の県議会文教委員会の動きは、そのことの政治サイドの甘えの結果ではないかと思っています。

●もう1つは、直接的なつながりではないにしても議会改革との関連。今まで議会はサボタージュの面ばかり問題になってきましたが、こうした二元代表制としての権能を使い切って自治体議員がデタラメなことをしたとき、従来と違って働き過ぎて人権侵害を起こしてしまったときにどうするのか、ということがあまり考慮されていないのではないかと思います。

●台湾人軍属での思い出があります。私が大学生4年生、1ヵ月だけ社会党代議士(後に離党・落選)の政治家の秘書アルバイトをしたときに、国会事務所にお見えになったのが台湾人軍属の方々でした。日本を大切に思い、蒋介石の圧政のもとで我慢してきた彼らが、戦後補償を受けられないでいることを切々と訴えられていました。その方たちを思い出すと、そこに修学旅行に行き、当事者の話をお聞きすることが、右派とみられる政治家から、反日教育と断定することに強い違和感があります。

●政治家の正義への欲求を満たすために教育現場にいたずらに首突っ込むのはやめた方がいい。私だっていろいろ思うところはありますが、運営的な問題以外は言わないようにしています。政治的な冒険をしたい欲求にかられたら、反対の立場から同じことされたらどうなるか、と想像することが大事ではないかと思います。

●2014年3月12日
埼玉県議会文教委員会による高校の修学旅行への介入行為に抗議し
教育現場の自主性の尊重を求める会長声明
埼玉県弁護士会 会長 池本誠司
(以下声明本文)

1.埼玉県議会文教委員会決議
 2013年12月17日、埼玉県議会文教委員会は、埼玉県立朝霞高校が、昨年12月に行った台湾への修学旅行について、「事前学習で歴史的事実に疑念があるDVDや捏造が指摘されているNHK番組を活用した」、「修学旅行のしおりに賠償問題は解決済みである政府見解と相容れぬ補償を求める記述や、『台湾を植民地としていた』など、我が国の歴史的事実と相反する若しくは未確定・捏造の記述がされていること」、「現地では反日思想を思わせる方の話を聞かせ贖罪意識を植え付ける」などの問題があったとして、「県立高校の社会科教育の指導徹底を求める決議」を可決した(以下「本件決議」という)。
 また、埼玉県議会文教委員会は、本件決議の信義において、県教育局から朝霞高校生徒8名の感想文を提出させた上、さらに複数の議員が修学旅行に参加した全生徒の感想文の提出を求めた(以下「本件調査」という)。
 当会は、本件決議及び本件調査を行った埼玉県議会文教委員会に対して、以下の理由から、強く抗議する。

2.決議は教育の政治介入であって許されない
 本件決議は、直接は、朝霞高校教師の教育の自由に関する政治介入であるが、教師の教育の自由の背景には、子どもの学習権がある。
 子どもは産まれながらに、その尊厳を尊重され、人格と能力を最大限に発達させるために必要な学習をする権利を有している(学習権。憲法第13条、26条、子どもの権利条約6条、29条1項)
 一人ひとりの子どもはその個性や発達段階、環境等に応じて様々な課題を抱えており、教育は、教師と子どもとの人格的ふれあいの中で、子どもの多様な課題や困難を含めた成長の過程に寄り添い、子どもを受け止め、子どもに応えることによって子どもの成長を支える活動である。そのために、教師には教育の専門性に根ざした一定の教育の自由が保障される必要がある。また、本来、教育は人間の内面的価値に対する文化的な営みであり、多数決原理が支配する政治的影響によって支配されるべきでなく、教育内容に対する時の政府の介入はできるだけ抑制的であることが要請される(以上、1976年5月21日旭川学力テスト事件最高裁判決)。
 この点、国が教育の大綱的な基準として学習指導要領を策定しているが、その法的拘束力を肯定する立場に立ったとしても、その一言一句が拘束力すなわち法規としての効力を有するとは考えられない。学習指導要領中、理念や方向性のみが示されていると見られる部分、抽象的ないし多義的で様々な異なる解釈や多様な実践がいずれも成り立ち得るような部分等は、法規たりえないか、具体的にどのような内容又は方法の教育とするかについて、その大枠を逸脱しない限り、教師の拾い裁量に委ねられている(2011年9月16日東京高裁判決、2013年11月28日最高裁決定により確定)。
 高校の修学旅行の内容については、学習指導要領上、「平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことが出来るような活動を行うこと」とされている。この学習指導要領の規定の仕方は多義的な解釈を許す規定の典型であって、修学旅行の内容設定は、教師の広い裁量に委ねられているのである。
 仮に個別の教育内容に問題がある場合であっても、まずは、教育を受けるべき子どもと保護者や教育現場での自主的な批判や議論による浄化作用を期待するべきであって、政治家である地方議会議員が直接個別の教育内容に対する介入を行うことは、厳に慎まなければならない。
 かかる教育の自由や教師の裁量に属する事項について、地方議会が個別の教育内容を非難し、指導徹底や訂正授業を求めるなどということは、教育の自主性を歪める危険のある政治的な介入行為である。従って本件決議は、教育に対する「不当な支配」(教育基本法16条1項)にあたる行為であって許されない。

3.朝霞高校の生徒の基本的人権への侵害行為
 また、朝霞高校の生徒8名の修学旅行の感想文を提出させ、さらに全生徒の感想文をも提出を求めるという、埼玉県議会文教委員会による本件調査は、より直接的に、朝霞高校生徒の基本的人権を侵害するものである。
 感想文は、個別の教育実践において教師と生徒の一定の信頼関係に基づき作成されたものである。生徒が教師に提出した感想文が公開されることになれば、教師と生徒との信頼関係が崩され、制度の学習権を侵害する。また多様な生徒の意見が記載されてしかるべき感想文について、県議会で内容の適否を評価し議論することは、制度の思想・良心の自由(憲法19条)や意見表明権(子どもの権利条約12条)を害する行為である。
 なお、このような埼玉県議会文教委員会の求めに応じて、朝霞高校生徒8名の感想文を提出させた県教育局の判断も問題であり、当会は、県教育局に対しても、生徒の学習権、思想・良心の自由、意見表明等の基本的人権を侵害することのないよう適切な教育行政の運用を求めるものである。

4.以上述べたとおり、埼玉県議会文教委員会が行った本件決議は、教育の自主性を歪める危険のある「不当な支配」にあたる行為であって許されない。また、審議過程で生徒の感想文を提出させた行為も生徒の基本的人権を侵害する行為である。当会は、埼玉県議会に対し、文教委員会のこれらの朝霞高校修学旅行に対する介入行為に抗議し、教育現場の自主性の尊重を求めるものである。

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