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2013.08.11

8/10 あやうい「住んで得する街・損する街」の評価

週刊東洋経済の先週号の特集が「住んで損する街得する街」というもので、首都圏・関西圏の212自治体の行政サービスを比較するものです。

こうした特集は、読者の自治体政策への関心を呼び起こす効果があります。個々の自治体への取材にもとづく記事はできがよいです。三浦展氏の「共働きしやすい街がこれからのよい街の条件」という記事も価値があります。

しかしダメなのは、212自治体の行政サービスの比較をした評価です。その評価軸がどうも前時代的で、高度成長期の利益のパイをばらまけた基準しかあてはめていないのではないかと思いました。

自治体の評価が、①人口、②小児医療助成、③保育所の定員や待機児童数、④公立小学校の選択制、⑤放課後児童クラブの数、⑥図書館の蔵書、⑦新築住宅の利子補給の有無、⑧増改築の助成の有無、⑨移住支援の有無、⑩新世帯向けの家賃補助、⑪上下水道料金、⑫介護保険料で構成されています。

この評価軸では、放漫財政をして後でひどい緊縮財政をすることになる自治体が評価を高くなりがちです。また東京23区のように都からジャブジャブお金が入ってくるところと、埼玉や千葉や神奈川の市部のように地方交付税の水準ぎりぎりで財政運営しているところと、同列に評価されることになります。

またこれからの自治体は住民・市民が自治体の運営にいかに責任をもって参加することができるか、が問われると思いますが、そうした評価指標はまったくありません。

⑫の介護保険料の高低を決定づけるのは、人口構成とともに、介護サービスの供給量を絞るという方法もあります。それでいいんですか、ということなんです。
⑦~⑪の住宅関連の指標も、災害で住宅再建の支援を受けられないのに、平時の新築に自治体が独自に補助を出すなんて私には理解不能です。価値基準が狂っているとしか思えません。そうやって人口増と乱開発を奨励した結果、保育所の待機児童問題や不動産価格の高どまり(補助が出る分高くできる)による商業の空洞化という副作用をもたらします。
②の小児医療無料も自治体の持ち出し政策、自治体の個別政策として競争させるのはどうなんでしょうか。やるならナショナルミニマムでしょうし、また小児医療の供給面にも配慮が必要ですが、残念なことに市町村にそんな権限がなく、市民に医療をどう保障していくという点では弥縫策にならざるを得ません。
③の保育所も、保育所定員を比較しても意味が無く、待機児童もあるタイミングのフローを捉えたものでしかありません。未就学児に対する保育所定員の比率で評価しないと、ほんとうに保育所をきちんと整備している自治体かどうかなんてわかりません。

ここで取り上げられている多くの価値基準は、この自治体からお金をいくら引っ張り出せるか、ということでしかありません。

さらに50~51頁の「目からウロコ、行政サービス使いこなし術」に至っては、自治体がタダでサービスを垂れ流す事業者という位置づけしかされていません。タダで使い倒せるサービス、自治体から金を引っ張り出せる制度を評価し続けています。そんな姿勢で自治体に関わっていていいんですか、とも思いますし、そんな小技ばかりに力を入れている自治体が、保育や介護など根幹に関わる公共サービスをきちんと確立できるのか、私は疑問に思います。
副題に「まずは情報収集が鉄則 基本は早い者勝ち」という文章を見たときには、こうした自治体がタダで垂れ流すサービスや現金給付をする助成金の多くが元気な住民にしか使えない、ということかも知れません。そうであるなら、アクセシビリティの公平性に問題のある政策が多いということを言い表しています。

また自治体の財政に少し言及していて、「負債比率ランキング(ワースト)」なんてものを持ち出していますがこれがどうも危ない。負債比率というのは「負債合計÷資産合計」ということなのですが、この資産には何か含まれているのか記事を読む限りは不明確で、おそらく公共施設の本体など資産として計上しているのでしょう。これで比較すると公共事業をやりまくった自治体はお金が払底していても比率が低く良く表され、公共事業より福祉や教育に力を入れた自治体はいくら現金残高があっても比率が高く、悪く出ます。
またこのランキングには人口増の自治体は負債が大きくても問題なしとしてランキングから外しています。しかし、今は高度成長期と違って、人口増は福祉ニーズを引き出すので、借金の増大にたえられるほどに支払余力が増えるということもないわけで、人口増の自治体を除外して不問に付すというランキング表の前提は信頼性がないと言えます。

この指標にしたがって「得する自治体」にお住まいになれば将来どういうことになるのか、ということはあくまでも自己責任だと思いますので、ご注意された方がいいと思います。

●この記事をめぐっては、同業者や自治体関係者から自治体の住民を「主権者ではなくお客様と取り違えている」という批判をお聴きしています。自治体は何のためにあるのか、という観点で自治体については記事を書いてほしいところです。

●朝霞市はこの記事のなかのどのランキングにも出てきません。ということはバラマキ的な施策は限定的です。

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