« 2/2 「看とり」をお聴きする | トップページ | 2/9 基地跡地の国家公務員宿舎建設の報道をふりかえる »

2013.02.07

2/7 みんなが労働者でみんなが経営者

NHKクローズアップ現代で、協同労働が取り上げられ「働くみんなが経営者、注目される協働労働」というタイトルで放映がありました。

私は時代背景から協同労働は必要だし前向きな評価が必要だと思う一方、本来、社会主義的選択肢の1つである協同労働を、新自由主義の文脈から「みんなが経営者」と前向きに評価することに危惧を感じています。

というのも、世の中には、経営者的な創造性や企画力がなくても、まじめに職務を誠実にこなすことができる人がいて、その方が多いわけです。
「みんなが経営者」という人がそういう環境に放り込まれて、経営者としての才覚を発揮できず、みんなが決めたことを誠実にこなすだけの役割となったときに、その人は「みんなが経営者」という理念の職場で大切にされるのでしょうか。それは属人的なものにならざるを得ないのではないかと思います。

また複数人間が同じ仕事をしている中では、どうしても職場の世論をリードする人と、まじめにやりますから決めて下さい、という人に分かれがちでそうしたときに、「みんなが経営者」という理念がどのように動き出すのか、心配しています。

すでにブラック企業では、薄給の賃金労働者に対して経営者のように働けということを要求していますし、世の中も不況の中でそれぐらいのことは我慢しろ、という雰囲気になっているなかで、創造性も企画力も要求されないまま経営者並みの勤務時間で馬車馬のように働かされ、困ったことだけ現場で経営者のように解決するように求められる、そういう環境が知られています。そこでは労働者が守られているとはとてもじゃないけど思えないからです。

またかつて労働者階級が作った国と標榜していたソ連などでは、すべての人が国家の主人公というタテマエでしたが、実際にはみんなが主人公の国なんだから不幸なはずはない、と国や社会制度に対する批判を暴力的に封殺してきたことも思い出されます。そしてこういう自己完結した論理は、社会の多数派が圧殺する側を追認するということもあります。

そんなことを考えながら、協同労働は必要、という立場にいながらも、協同労働に従事している人は経営者でありながら「労働者でもある」ということを忘れないような、既存労働法の網がかかる保護が必要だと思っています。

すでにシルバー人材センターでも、実態は自治体の委託業務なのに個人請負という体裁を取ることによって、労働法の適用が外れ、業務中の事故が労災保険も健康保険も適用できない(実態は本人と医療機関の配慮で健康保険を脱法的に適用させているようですが)問題などが浮上しています。
経営上の都合でしかないのに理想社会のような大義名分で、実態が労働となっている人を労働者とみなさないやり方というのが、様々な副作用を呼ぶということをふまえていかなくてはならないと思います。
日本では、労働者という言葉に対する差別的ニュアンスが強く、どうしてもあなたは労働者だ、と言われることを忌避する傾向があります。福祉労働者や教育労働者、NPO団体の従業員、未組織公務員など、単なる労働問題として処理するのが最も効率的な問題解決なのに、本人たち自身がそうした呪縛にとらわれていて呪縛を解くのに手一杯ということはよく見聞きしてきました。

●報道する側には、ブラック企業や暴力団、カルト宗教団体、狂信的な左翼団体が、協同労働の団体を乗っ取ったときにどういうことが起きるのか、そういうシミュレートを充分に行ってから、「全員が経営者」という言葉を使ってほしいと思いました。

●高校生のときに私の通学していた高校では、何だかんだと毎週のように学内集会があって、校長から「本当の自由と自立」みたいな話を聞かされ、そして学校行事は「ほんとうの自由と自立」に感動したくて来校する観客のために振り回され、校内で非合理なことがあっても「ほんとうの自由と自立」のために我慢するよう求められ、そういうことを横目にみながら「ほんとうに自由になっているのかい?」と場の空気を壊すようなことをやっていたので、実態が不明確な理想の言葉は簡単に信用できない悪い癖があります。そうしたときに労働法の解説書に出会い、労使間の自治の論理と、集団的労使関係という合意形成に向けた交渉システム、団結権保障のための様々な考え方などを知り、空虚な理念語を振り回すより、問題解決の手段なんだと認識して今に至っております。

●労働者が尊重され最もフェアで安心できる社会というのは、資本主義体制のなかで、①労働者集団の形成、②労働法などの労働者の人権保護法制の確立と、③さらにドイツや北欧で行われているような労働者集団による経営参加なのかと思っています。

|

« 2/2 「看とり」をお聴きする | トップページ | 2/9 基地跡地の国家公務員宿舎建設の報道をふりかえる »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 2/2 「看とり」をお聴きする | トップページ | 2/9 基地跡地の国家公務員宿舎建設の報道をふりかえる »