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2013.02.23

2/23 保育園をめぐる杉並区の混乱

杉並区で認可保育所に入れなかった保護者たちが、行政不服審査を申し立てたという。

保育保障を定めた児童福祉法の考えにのっとればそういうことにならざるを得ないと思います。私自身も待機児童問題に我慢してきて、毎月認可保育所に入れれば払わなくてよかった月3~4万円の実質的な「税外税負担」をさせられたり、「認可外保育所などに預けて」と子ども関係者に言われたり、サヨク議員から「儲け主義の保育所に預けて」などとあからさまに非難され、スティグマにさらされてきたので、この保護者たちの怒りということが痛いほどわかります。待機児童対策が前進し、ようやく末子が3歳になって認可保育所に入れましたが、もう5年早く手を打ってもらえたらと自民党政権と当時の市児童福祉行政に怨嗟を持っています。

また、仕事と家庭と追いまくられる中でよく行動できたと思います。時間がないから行政に文句言えない、年に1度の入所申請のときだけ市役所の人に面と向かって話す時間ができるので、そこで切れるしかないそんな感じです。行政に満足に要望を伝えられない、そこが保育園を使っている保護者の最大の弱点です。遠慮してももの言っても変わらないのだとすれば、まずはものを言うことが大事だと思います。

ファシスト・近衛文麿の私邸を区が購入する代金が13億円。それだけの金額があれば子ども安心基金を組み合わせれば、認可保育園30園を開所できる財源。すべてがそれでいいとは思わないが、セーフティーネットの整備より、公園のためだけにお金を使えという昼間の市民・区民がいかに声が大きいかということが言えるのではないかと思います。ここ4年ぐらいの朝霞市もそうですが、横浜市など基金を使って本腰を据えた対策を打った自治体は、そろそろ待機児童問題が残りつつも沈静化し始めました。

一方で、保護者たちも少し聞き分けがないのかなと思ったりもします。やはり認可保育園はちちんぷいで整備できるわけではなく、財源、土地、事業者、子どもの声を騒音だと思う地域風土がないこと、などが条件です。その中で、保育士と施設面積だけはクリアし、都財調によって潤沢な特別区財政のもと、東京都以外では園庭要件以外は最低基準をクリアしている認証保育所がダメと決めつけた論調をすることも、問題ではないかと思ったりします。

下記の毎日新聞の論調も、認可外に国の補助が出ない、と糺弾していますが、これもまた国が保障する認可保育所がどういうものかということを無視した議論だと思います。一方で、保育財源の分権が進んで交付税化されているので、認可に限らず様々な保育施設を自治体独自で基準を作って整備できるようになっているわけですから、やっていない自治体は子どもの分の交付税をネコババしているということにもなります。そういう意味では杉並区はまだそこそこやっておられるということだと思います。

区長がこの件で、議会で、「保育所を増やす努力をすればするほど、ほかの地域から子育て世代が集まり、保育需要が高まるとの認識(東京新聞)」と答弁したと報じられていますが、認識違いもはなはだしく、保育園事情で転居してくる住民というのはそうそう多くありません。住宅事情だったり親族だったり、杉並だとあの独特の文化が杉でなんてのもあると思いますが、保育園事情を調べる能力のある人なら、杉並区、練馬区、世田谷区にはまず住まないと思います。
かつての朝霞市もそうでしたが、人口増だけが景気のいいことのように錯覚して自治体の施策をとるから、身寄りのない世帯が増えて、副作用のように保育ニーズや介護ニーズがふくれあがるわけです。朝霞市でも国家公務員宿舎建設反対運動の論拠として、最近の人口増は、税収以上の自治体の負担増が発生する、というものでした。

●保育園のニーズは、6歳未満の子ども人口×共働き世帯の比率で決まるので、人口推計から、共働き率を予測して、保育ニーズの目標数値を出さないと、待機児童問題の後追いで保育整備を続けている限り、作っても作っても保育ニーズが湧いて出てくるからやらない、として事態を悪化させていくということになりります。

●地価が高くて専業主婦文化が強い杉並区に無理して住まなくてもいいのになぁ、と思いますが。福祉ニーズだけでしたら、板橋区や北区、足立区の方がいいのではないかと思います。三浦展「郊外が消えていく」を読むと田園都市線的な専業主婦文化に染まった地域は確実に衰退の道をたどるようにしか思えないのですが。

●こんな事態なのに、自民党は、社会保障と税の一体改革で増税の根拠として用意した保育整備のための財源年7000億円を、三党合意をほごにして、7800億円にして幼稚園の利用料無料化に流し込むようです。
働く人をどこまで痛めつけることを楽しんでいるとしか言いようがありませんが、残念なことに20~30代のキャリア女性の多くが改革者として自民党を支持しているようなので、自民党からすればカモネギみたいな話で、痛くもかゆくもないということなのでしょう。
しかしこうして子育てしながら働くことが苦痛な若者が多くなれば、当然、介護や医療は切れという論調が出てきてもおかしくありません。

●自分が選挙をやってわかりましたが、政治家から見える子育て世代には保育園保護者がリアルにいないんですね。朝8時~夜8時までの選挙運動時間に、保育園保護者の意見を聞く、保育園を増設しろという主張をする、そんな時間帯はほとんどない。子育て支援というのは、昼間の選挙運動の中では、医療費をタダにすることか、児童手当を上げるか、そんなことしか具体的に提案できないものなんですね。保育園保護者が立ち上がって選挙に勝って意見を通したなんて事例は、各自治体1~2人しかいません。
かつては集票機能を担った労働組合から自治体に要望が上がりましたが、労組の政治参加が「しがらみ」とレッテルを貼られ大工場でもあるところの議員以外はマイナスにしかならず、労組を通じた政策要求は自治体から消え、政党は労働組合との関与を打ち消すのに躍起で、働く人の意見を集約する政治回路も機能しません。その点は「しがらみ」批判のもと何もかも否定してしまった有権者にも問題があるのでしよう。
夫婦で税金を払っているのに、住民税は逆進性の高い一律税率で控除も少なくてそのまま取られているのに、自治体では民主主義の一員ではないのでしょう。2015年からの保育政策の数値づくりのために自治体版子ども子育て会議が来年度からスタートしますが、そうした保育園保護者の意見をビルトインできる仕組みができるかどうか試されていると思います。

東京・杉並区認可保育所:「入所不可」1500人 母親ら異議申し立て 区の緊急対応「詰め込み型」と懸念 毎日新聞 2013年02月23日 東京朝刊

 東京都杉並区で、4月から子どもを認可保育所に預けようと申し込みながら1次選考で「入所できない」と通知された住民が約1500人に上り、母親たちは22日、区に行政不服審査法に基づく異議申し立てを行った。田中良区長は申し立て直前、2次選考の受け入れ枠を40人から100人に増やすなどの緊急対応を表明したが、母親たちは「認可保育所の数が増えなければ、詰め込み型の保育になる」と懸念している。

 杉並区によると、4月の認可保育所(区立と私立で計63カ所)の入所は1135人の募集に対し、2・6倍の2968人が申し込んだ。このうち1次選考で入所が内定したのは1191人で、今月14日に通知された。認可保育所の入所にこだわらなかった人を除くと、約1500人が希望をかなえられないことになるという。母親たちは入所が認められなかった計60件のケースについて「施設の整備が不十分で、保育を受ける子どもの権利が侵害されている」と異議を申し立てた。

 区内には認可外の保育所(認可外施設)もあるが、異議申し立てを取りまとめた「保育園ふやし隊@杉並」の曽山恵理子さん(36)は「施設や人員の配置がしっかりとした認可保育所に預け、安心して働きたいと考える母親が多い」と話す。

 認可保育所は国が施設の広さや保育士などの職員数の基準を定め、保護者に人気が高い。杉並区内の申込者も08年度は1386人だったが、13年度は2968人になった。区は0〜5歳児の人口の増加に対応するため独自の保育室を設置し、認可外施設も誘致。08年度に5559人だった保育定員を13年度に7110人まで増やした。出保裕次保育課長は「認可外も質で認可に劣らないということが理解されない」と戸惑いを隠せない。

 22日に記者会見した田中区長は2次選考の受け入れ定員を増加させるほか、14年1月までに3カ所の認可保育所を開設する▽都が新たに打ち出した小規模保育施設の活用で100人の定員増を図る−−などと表明した。

 しかし曽山さんは「現時点で認可保育所の数が増えず、受け入れの数だけが増えると詰め込み型の保育になってしまう。母親たちが求めているものと違う」と強調した。区は今後、異議申し立て内容を審理した上で、対応を決める。【水戸健一】

児童福祉法は市区町村に対し、両親が共働きで保育が必要な子どもたちの保育を実施する義務を課している。その際は▽施設の広さ▽職員数▽防災や衛生の管理−−などについて国が基準を定めた「認可保育所」で受け入れることが基本。しかし保育所が足りないため、より基準の緩い「認可外施設」で対応することも認められている。特に都市部は地価や人件費が高いため、認可外施設での受け入れが進んでいる。

 国の基準をクリアした認可保育所に支払う保育料は、親などの所得に応じて決まる。一方、認可外施設は国の補助がなく、保育料が割高になるため、低所得者に不利だ。さらに認可保育所は「保育士の数がそろっていて安全で、施設が広いから子どもがストレスを感じない」といった評価もあり、人気が高い。

 10年4月に全国最多の1552人の待機児童を抱えていた横浜市は同年から重点的に対策を進め、今年4月に「ゼロ」を実現できる見通しがついた。12年度までの3年間で約370億円を投入。144の認可保育所を新設し、定員も約1万600人増やした。ただ保育所の増加により、保育士の数が不足気味になるなど新たな課題にも直面している。

 厚生労働省の調査によると、認可保育所や認可外施設に入れなかった待機児童は12年4月時点で2万4825人。しかし、同省が08年8月に就学前の0〜5歳児のいる全国の世帯を調査したところ、約85万人が「認可保育所を使いたい」と考えていると推計された。

 東京都の猪瀬直樹知事は22日の定例記者会見で「認可保育園にしかお金をつけない厚生労働省が待機児童を生み出している」と指摘した。【水戸健一、松倉佑輔、清水健二】

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