10/30 日銀の追加金融緩和は効果があるか
日銀が追加金融緩和を行う見通しとのニュース。
私は、日銀がお札を刷って市場に流し続けることは危険なことをしていると思っています。とくに今回はなりふり構わない感じがしていて、下手すると日銀が不良債権のふきだまりになる危険性もあります。
こうした金融緩和一辺倒の経済政策は、物とお金の比率を変えれば、お金の価値が下がり、デフレが解消されるという理屈が背景にあるのだと思いますが、バブル崩壊以降、通貨供給量をいくら増やしても、物価は上がらず、GDPは増えず、せいぜい何もしないよりましという効果しかありません。
一方、ジャブジャブに増えた現金をつかまされている市中銀行は、それを投資しなければなりません。しかし、デフレの状況が改善しない、流動性の罠にはまっている経済構造から、生産や雇用につながる投資先がみつからず、ますますマネーゲームの資金に化かすしかない状況なっています。そうした投資はバブルでも起きなければ金利や配当、キャピタルゲインの収入が上がらず、結局は若干の利息がつく現金を持っていると同じ意味しかありません。
雇用を創り、生産を呼び起こし、消費需要を創出するとともに、あふれかえった現金が有効に使われるような実物投資の対象をつくっていかないと、景気もデフレも回復しないと思います。
今回の日銀の追加金融緩和は、前原誠司氏をはじめとした、ホンネは新自由主義的経済学にどっぷり染まってきた主流派の一部民主党議員の政治的圧力のにおいがしています。この人たちは、元々、経済政策には否定的ですから、本来は財政出動も、金利政策以外の金融緩和も否定的な立場であった人たちです。小泉構造改革が始まった当初は、それに協力姿勢を見せていたふしもあります。ところが彼らが中心になって担ぐ野田政権が何もしない、無策だ、小泉構造改革と同じだ、といわれるのが嫌で、何かしなければということで騒ぎ出したのが今回の顛末ではないかと見ています。
もっと積極的に財政政策に対しては、財政支出に対する不信感がぬぐえない現下の政治状況のなかで財政支出増をよびおこすような経済政策はしたくないという意思、雇用にこだわることで連合の手先といったような抵抗勢力というレッテルを貼られるイメージ悪化など避けたいということがあるのだと思います。
そこで、新自由主義と紙一重のケインズ派であるリフレーション派に飛びつき、中央銀行が通貨供給量をガンガン増やして、微弱なインフレを起こせばいいという政策につながっているように思います。
そしてこれは期せずして、消費税反対だけで非自民野党を結集させようとしている小沢一郎氏の配下にいる人たちとの政策が一致するわけです。小沢配下も消費税反対ですから、日銀にお札を刷らせて国債を買わせ、マネージャブジャブにすれば物対貨幣の比率が替わってデフレがなくなり、景気回復すると豪語しています。
政権に攻められる日銀は、もともとリフレーションの政策など信じていないし、こうした政策の採用はしなかったのだと思います。また日銀の機能や独立性を空洞化させるような決断なのでイヤイヤだと思うのですが、財政政策がないなかではこうするしかない、と思いつけたことと、どうせあと1年も続かない民主党政権のごり押しなどあと数回しかないだろうということで、受け入れると判断したのだと推察しています。
●こうしてジャブジャブに流した通貨というのはいつ整理されるのだろうと考えると、少し恐ろしくなります。2007年頃、穀物、エネルギー、都心部の土地などバブルとも思われる現象が見られましたが、そういうことにならないのか、そうした投機に化けないか、注視する必要があると思います。
●デフレ不況克服に必要な政策は、①市場に供給されているジャブジャブのマネーが必要な人のところに再分配される政策を通じて眠っている・我慢させられている需要を引き出すこと、②高度な先進国型の社会構造に変えるためにニーズのある社会サービスを作り、あわせてそこに雇用を創ること、③技術や知識が高度化する社会にあわせた戦略的な産業が活躍できる社会基盤を、税制以外の面で整備すること(とりわけ人材育成)、だと思っています。
●そうするとおまえは増税派で国民から収奪ばかり考えていると言われますが、低い税金による低い公共サービス・社会サービスを放置しておくことは、私塾の授業料負担、小中学校の学校給食費や教材費負担、高校や大学の授業料負担、有利子貸与が中心の奨学金制度、ハードルも高く短い失業給付期間、転職のための職業技能修得、高い医療費の自己負担割合、待機児童問題による認可外保育の高額保育料の負担、民間介護保険、有料老人ホームなど、他の先進国より高い負担が残り続けます。
税・社会保険の「国民負担」にこうした社会サービスにかかる家計支出を合算した額は、国全体(GDP比)では、アメリカも日本もドイツもスウェーデンも変わらない統計があります。アメリカや日本のように社会サービスを利用するときの家計負担が高い国は、所得の低い人にとって社会サービスが受けられないこともあるということです。医療に関してはそういう傾向が出始めています。それこそ、税金でないかたちで国民の富が収奪され、しかもそれは所得の低い人には、経済的な意味だけではなく生存の限界にも立たされる危険性があるということです。
日銀 追加金融緩和の見通し 10月30日 8時9分 NHKニュース
日銀は30日に開く金融政策決定会合で、景気を下支えするために2か月連続となる追加の金融緩和に踏み切る見通しです。
デフレ脱却を目指し、市場に大量の資金を供給するための基金の規模を拡大することなどを検討します。
日銀は先月追加の金融緩和に踏み切り、市場に大量の資金を供給するために設けている、国債などを買い入れる基金の規模を80兆円に拡大しました。
しかし、その後も中国など海外経済の減速を受けて、景気は一段と弱い動きになっていることが分かり、日銀が当面の金融政策の目標としている消費者物価の上昇率も、再来年度でも当面の目標に掲げる1%の達成が厳しい状況になっています。
このため日銀は、30日に開く金融政策決定会合で、景気を下支えし、デフレからの脱却を目指すため、2か月連続となる追加の金融緩和に踏み切る見通しです。
具体的には、80兆円としている金融緩和のための基金の規模をさらに拡大することなどを検討し、国債の買い入れにとどまらず、証券取引所で取り引きされるETF=上場投資信託など価格変動のリスクがある資産の買い入れを増やすことについても、議論する見通しです。
また、日銀がデフレ脱却に向けた目標としている消費者物価の上昇率1%についても、その達成時期などでより明確な表現が必要か検討する見通しです。
政府は先週、経済対策を決定し、30日の会合には前原経済財政担当大臣が出席して意見を述べることにしており、政府・日銀が景気の下支えに向け、政策面での協調姿勢を打ち出すことになりそうです。
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