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2012.08.09

8/9 長期不況の経済学のおさらい

午後、旧知の峰崎直樹前財務副大臣の誘いで、小野善康社会経済研​究所長を訪問し、新自由主義の後に出てきている「ニューケインジ​アン」グルークマンの「さっさと不況を終わらせろ」を題材に、批​判的な検討をしてきました。

峰崎さんの疑問①グルークマンの主張する財政破綻や金利上昇はま​ったく心配する必要はないのか。
小野さん:思慮なく金融緩和や財政赤字を追加していくと金融が崩壊する可能性はある。そうなるとますます現金​所有願望は高くなり、景気は非常に悪くなる。
峰崎さんの疑問②日本への提言と読めるのか、それともアメリカと​EUだけか
小野さん:消費願望が著しく衰退している(60年代のテレビへの​あこがれの話になる)。金融政策で何とかしようとするのは、消費​欲求が高くない成熟社会では効果が少ない。中国やインドの不況へ​の対処法である。
峰崎さんの疑問③国土強靱化や国土減災という新たな公共事業は?
小野さん:何もしないより良いが、支出の質や効果としてはどうか​。
東北の罹災者の生産力が復活するような事業であれば問題ないが、​自己目的化した公共事業であれば、やめるときに縮む経済をどうす​るかという問題になる。これは小渕内閣の大盤振る舞いとその後の​小泉構造改革の弊害そのものだ。
峰崎さんの疑問④大不況の中で財政緊縮や増税を進めることは不況​を長引かせる愚の骨頂なのか。
小野さん:増税をできるだけ社会に必要な資源に振り分けていくこ​とが大切だ。財政再建のための増税をすると増税分は金融機関にま​わるが、長期不況のもとではそうした資金は実需にはまわらないの​で、デフレ不況を深刻化させる。また支出についても宇宙開発のよ​うな青い鳥の政策ではなく現実にボトルネックになっている問題に​使わないと効果が出ない。
峰崎さんの疑問⑤「流動性の罠」にはまっているのだからインフレ​期待を作り出すことが重要であるとの指摘について。
小野さん:インフレを作りたいとおもって作ることはできない。現​金がジャブジャブになっても消費する先がないのだから、景気は良​くならない。

などと問答をして、新自由主義の次に出てきて、民主党の増税反対​派を中心とした政治家にいいように利用されているリフレーション​派の間違いを説明していただきました。
同書について私は、「流動性の罠」が単なる現金があったらいいな​という水準の説明になっていることが甘いと思いました。「流動性​の罠」は何をやっても現金保有願望には勝てないもっと経済的病理​としてとらえるべきではないかと思いました。しかしリフレーショ​ン派はマネージャブジャブ路線ですから、そこまで「流動性の罠」​をとらえると自己矛盾になるのでしょう。
また同書の最後で雇用、雇用と雇用創出の重要性を説いていてそれ​自体は歓迎するのですが、金融緩和が最重要のリフレーション派の​政策のなかでどのように位置づけられるのか説明不足で唐突観が否​めなかったと思います。

●また同書の中では、さかんにブラックマンデー以降の不況に対して、第二次世界大戦による政府支出の拡大を通じて景気回復し完全雇用が実現したということを引用して、戦争せずに同じように政府支出を出し続けたらどうかと書かれていますが、それに対して小野先生は、「戦争中にぐっと欲望を抑えて生産しそれを戦争で破壊し続けたのが、戦後欲望が解放されたから景気が悪くならなかったのであって、そもそも今みたいに欲望が見つかりにくい時代に、何をやっても難しく、とにかく今、不足が明確に出ているところにお金を使っていくしかない」と説明しました。

●小野先生はバブルの真っ最中に、マネーサプライ​を追いかけていく研究のなかで、永続的なデフレ不況が起こると出てきたが、先生自身現実に起こるとは信じ切れず学問的可能性として学究の中での発表にとどめたそうです。
それと同じ感想を八田達夫先生も持っていつつも、「デフレなど近年になってからは現実には起こっていない」と指摘してくれたことに対し、「経済学者がうまくいっているときにいかなくなるって予​測するのは結構勇気のいることなんですよ」と小野先生はおっゃったそうです。
その後の展開は、小野先生が学界に留めたことと、八田先生の予測しつつもありえないと思ったことが実現する展開になっていったということでした。
※この内容については八田達夫先生の発言に、踏み込みすぎた表現があったので訂正しています。

●3人で、年金中心の社会保障制度の是非についても議論しました。医療や介護や保育などにニーズは高く、雇用が生まれ景気に好影響を与えるのにそこにお金が行かずに、使い切らない年金中心にお金がまわっていることは不況にとって本当に良くないという議論です。
もちろん日本は、①基礎年金しかない人、②厚生年金や共済年金まである人、③潤沢な企業年金が乗っている人、④さらに蓄財している人と高齢者の老後の経済状況は様々で簡単な議論をしてはなりませんが、年金の将来不安分を抑制しても、医療や介護の無償提供、あるいは低額で提供をした方が成熟社会の不況対策としては効果があるということです。
したがって、保育や介護の公的支出がムダだ減税しろ保険料を下げろと言いつつ、②~④に該当する高齢者の意見は、その人の責任ではありませんが、景気にとって逆行してしまうということです。税収が心配な役所がついうっかり富裕高齢者層にそうした意見を煽らないように注意すべきです。

●「さっさと不況を終わらせろ」は金融政策一辺倒であったリフレーション派が、雇用に着目して動き出したという点で注目されるべき部分はあるのかも知れません。

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