5/3 大阪維新の会議員、発達障害は親の問題と条例に
映画「選挙」「精神」の監督、相田さんのtwitterから詳細の内容を知りましたが、大阪維新の会の議員たちが、橋下市政の教育改革のための条例として、5月の市議会に提出する「家庭教育支援条例案」。問題になっている保育士体験の義務化だけではなく、発達障がいは親に原因があると位置づけることが盛り込まれていることが、自由法曹団の弁護士によって明らかにされています。
家庭教育支援条例 (案)平成24年5月 「大阪維新の会」 大阪市会議員団(自由法曹団資料)
深刻な虐待などを除き、ほとんどの発達障がいは、親の育児に原因があるわけがありません。私の周囲でもその保護者たちは、全身全霊で子どもを支え、ダメ親になることなど許されない状況のなかで、本人たちはそんなつもりはないと思いますが、模範的な保護者として生き方をしています。それでも、障がい者の保護者はいまだに偏見のまなざしや肩身の狭い思いをして生活している人が少なくありません。そういう人たちに根拠もなく原因はあんただ、と言って社会の片隅におしやるこの条例は悪質です。
●「親学」という中で、あの維新の会の議員のうちどれだけきちんと子育てをしているのか(こういう言い方は子どものおられない方には大変申し訳ない言い方なんですが)、当然子どもの目をみながら授乳(男性議員だったらミルクを与える)ぐらいやったことがあるんだろう、そうでなければ子どもはグレでいるんだろうかと、ビデオでも持って追いかけ回してみたい気もしています。
●この条例の下敷きになっているのが、埼玉県の高橋史朗前教育委員長の考え方のようです。
衆議院議員下村博文ブログ「「親学」推進議員連盟設立総会のご案内」2012.4.5
(そしてそこには、鳩山由紀夫氏が顔を出しているではありませんか。下村氏「親学推進議員連盟設立総会」)
以前私はこの高橋史朗氏の発達障害に関するとらえ方、提言についてかなり問題があると指摘してきました。
2010.04.23 高橋史朗前県教育委員の問題ある発達障害児への見方
2005.07.19 教育者のような顔をした宗教家
そして埼玉県もマイルドながらも高橋氏の考え方に従って、発達障がいの予防として、発達障がい児の発見のためのスクリーニングなどいくつかの実害が少ない施策が展開されています。それでも上田清司埼玉県知事の立派なところは、高橋氏は政治的象徴として任用したにとどめ、大阪市のようにどぎつい政策にしなかったことではないかと思います。そういうゆるさが埼玉県の良いところです。
●育児は機械操作ではありませんから、完全にできるものではありません。問題にならない程度の「間違い」とみなされる、たとえば抱っこをする時間的割合とか、泣いたときの対応とか、離乳食を与え始める時期とか、離乳食の栄養素の割合とか、抱っこしていたらうっかり落っこちてしまったとか、さまざまな将来への心配事があって、あとであのときああすればというのは全ての親の心にひっかかっているものがあります。そういう親の弱みに、全く非科学的な言いがかりを、もっとも深刻な状況にある人たち、しかもどうしてこうなったんだろうと原因探しをしてしまいがちな人たちに投げつけて、人生すべてに負い目を持たせるのは、やってはいけないことだと思います。
またそういう負い目に対してつけ込んでくる人たちに、冷静になれるだけの十分な社会保障が必要なのだと思います。
昨年、新興宗教の勧誘を受けて、勧誘者の人生を逆に聞き出して、ほんとうにそういうことは人間としてのマナー違反だと思いました。
●この社会は、社会の問題を構造の問題としてとらえるのが苦手だし、その問題解決のための労力やコストの負担について「税金の無駄遣い」的な議論でいつも議論が宙ぶらりんになっています。そうした中で、社会の問題の原因をついつい人間の主体性の問題にすりかえたくなります。人間の主体性の問題だけなら、教育が悪い、という話になってしまいがちです。
そうすると勇ましい改革を掲げ奮っている政治勢力は、いつも教育改革ばかりやって、この社会で多数派の常識や既成概念では理解できない現象を教育の問題にしたがるわけです。かつての中曽根政権、安倍政権、鳩山政権などがそうでした。今は橋下維新一派や、みんなの党などがそうしたスタンスを取っているわけです。
●政策について風見鶏な橋下市長は、この条例について今朝、趣味的にあわないような発言をされています。どうかこうしたトンデモ教育改革は実行に移されないことを期待したいと思います。不勉強な、社会体験の少ない子分たちをたくさん抱えて、こんな批判を受けてご愁傷様と言いたいところです。
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コメント
伝統的な子育てに戻れば解決するのだろうか、父親は仕事、母親は子育てがいいとならないのか、と疑問を持ちました。私のブログにも転載しました。
投稿: 川名ゆうじ | 2012.05.03 12:07
身内が新座市に住んでいます。子供に知的障害があり同市内の幼稚園には入れませんでした。現在朝霞市内の私立幼稚園にバス通園しています。同園の教育内容には満足していますが、施設は老朽化し、バイパス道路のそばにあり車の往来も激しいので先生方は神経を使っているようです。付近の開発規制が解けて住宅建設が始まると、さらに危険が増えるのではないかと心配しています。教育機関の立地条件について目を配っていただけるとありがたいと思います。
投稿: 伴博 | 2013.09.23 20:09