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2012.05.02

5/2 行政をとっちめるためだけの損害賠償請求考

都内某所で、首長が自治体に与えた「損害」を賠償せよと、住民訴訟を起こすことの問題点について議論がありました。

事例は国立市のマンション建設をめぐる訴訟です。
景観を壊すマンション建設に対して自治体が規制をかけようとしたところ、マンション業者から建築自由の原則と、当該地の規制がなかったことを理由に、訴訟を起こされ、最高裁で業者側が3000万円の損害賠償をかちとった事件です。この訴訟自体はこれで結審し、国立市が業者に3000万円の損害賠償を支払い、業者も勝訴したということで3000万円同額を国立市に寄附することで相殺され、処理は終わっています。

建築物による景観公害はじめさまざまな社会問題に対して、自治体は対応に苦慮しており、そうした中で伝統的な建築自由無制限の法解釈を取るのか、自治体には一定の景観を守らせる権利が若干でもあるのか、そうしたことが争われた事件です。また副次的に建設反対で当選した市長として、反対運動とはどういう関わり方ができるのかも問われた事件です。

ところがここにマンション業者とも関係のない市民が、当時の国立市長をやりこめる目的でしかないと思いますが、当時の国立市長に対して3000万円の損害賠償を国立市に払えと行政訴訟を起こしています。今の法律ではこうした訴訟はいくらでも起こすことができます。

私は、自治体の非常勤職員の一時金、退職金をめぐって、違法支出だからと自治体の首長を訴え、損害賠償請求をした関西の一部オンブズマンの行状を見てきたことから、新手の困った市民運動だと考えています。

もちろん、明らかに違法な支出、使い込みのようなものや、市長のえこひいきで不当に事業発注をした損害、今でこそなくなりましたがカラ出張など、住民訴訟で是正するべきものについて、何らかの訴訟の手段はあるべきだと思います。

しかし、社会的に善悪の判断が揺れている問題については、あるいは厳格な法解釈と緩やかに法解釈の間に結論が全然異なってくるものについて、これは、本来裁判官が白黒つける以前に、当事者間であったり、政治を介したりすることで、合意形成によって解決されるべきものだと思います。

逆に言うと、気に入らない政治的決定に対して、厳格解釈では違法性がつっつけるからと、何の利害もないのに行政訴訟によって損害賠償請求をさせるということをする限りにおいて、政治家は裁判官の伝統的法解釈から一歩も出た判断ができないためその仕事は官僚化せざるを得ません。また、最近定着しつつある市民参加の当事者間合意みたない手続きは危なっかしくてできない、やっぱり官が市民の見えないところで決めるのがいいんだ、という話に戻りかねません。

それが私たちの社会を幸福感のある未来にするものなのか、私は疑問に思っています。

●私は望む社会、望まない社会を取捨選択していくのは、政治的な合意に収斂させていくのが、自由で民主主義の社会にふさわしいやり方だと思います。もちろんこの政治的合意というのは、首長や議会の判断だけではなくて、市民参加による合意形成、関係者が少数である場合は当事者間の合意形成なども含まれます。
闇討ちみたいな訴訟を乱発して、本当に社会が良くなるのか、と思います。政治的批判をするなら正々堂々と真正面から議論で行うべきではないかと思っています。
提案能力のある、活力のある反対派、取って代わる勢力というのは、あまり陰湿なやり方では育たないと思います。

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