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2012.04.06

4/5 篠田徹「再びニワトリからアヒルへ?」との再会

私の政治観を軌道修正していただいた論文があって、どこに書かれていたものか長くわからないままでいたが、先日、ジュンク堂大分店で偶然発見、購入した。掲載していたのは「年報政治学・55年体制の崩壊」岩波書店。

民主党と連合の関係について、あることないこといろいろ言われ、労働組合の政治活動に過大な批判が行われている。そうした状況のなか、では労働組合がどれだけ政治に影響を与えて、政策的効果をかちとっているのか、ということについて実は不明確な状態だ。経団連がやりたい放題やっているのに比べれば、労働界なんて片務的協力だったなぁ、というのが13年労働界に身をおいて感じていることだ。

そうしたことを明らかにするものはないものかと思っているが、社会党や民社党が解党してからの労働界と政治の関わりについて、うまく解説した本や論文が少ない。その中で、唯一といってよいものとして中公新書の「労働政治」という本があるが、民間労組と官公労の対立項として書いて、民間労組=改革協力勢力=善、官公労=抵抗勢力=悪という単純な決めつけを展開し、一面的な書き方の本だったなぁと、このブログでも取り上げたことがあり、これでは実態はわからなかった。

労組と政治の近年の関わりとその文脈に関して、唯一といってよいぐらい実態に迫った論文が今回探したこの本の、篠田徹「再び"ニワトリからアヒルへ"?」という論文である。数年前、自治労の職員の先輩に誘われ、篠田先生と3人で飲みながらこの論文を題材に議論をする機会があった。このときに渡された論文がコピーであったためその後の整理で見失ってしまっていた。

「ニワトリからアヒル」というのは、かつてアメリカ占領軍が親米労組として作った総評が、左傾化して戦闘的労組になっていったことを表現したもの。篠田先生の論文は、本来、政治とはニュートラルな関係にするつもりで結成した連合が、激しく動く政治情勢の中で再び政治的影響力を公使するようになったのではないか、という疑問について整理したもの。

今日、民主党支持団体の悪玉代表のように連合が扱われて報道されている現状からは意外にも思われるが、連合というのは民間大手製造業労組が、労働界と政治をニュートラルな関係にして、減税などの政策要求だけ政治に関わるようにしようとした運動からスタートしてきた。
ところが先延ばしにしようとした連合と公務員関係労組との統合時期が繰り上がり、その同タイミングでおたかさんブームによって政治の変化が始まり、できたばかりの連合の都道府県組織が選挙に傾斜しそれなりの成果を上げてしまったところから、ふたたび労働界が政治への傾斜が新しいかたちで始まってしまった。細川連立政権の崩壊によって、自社さ政権についた旧総評と、新進党についた旧同盟と、労働界の政治的分裂も不幸な歴史のはずだったが、連合の政策活動では与野党に分かれたパイプをそれぞれ使って、手玉に取るように政策を実現させてしまう。
気が付いたら、政治的にはニュートラルの労使関係だけに専念する労組を作る運動が、再び政策実現を通じて政治に深入りする運動になってしまった、そこには政治の大きな変化という状況の変化による「めぐりあわせ」と、55年体制の後の連合のアイデンティティ構築の模索などがからみあったものだというのが篠田先生の論文である。

●この論文で興味深いのは、1993年以降の労働界の政策実現能力の高まり(自社さによって生まれた橋本政権時代まで続く)について、各労組の支援が与野党に分かれていたからできたんだということ。確かに細川連立政権のときには定率減税しか実現できていないし、今の民主党政権でも連合の政策で取り入れられた大きなものという目玉はあまりない。労組が提言した時短、介護保険制度、パート労働法、介護基盤整備のゴールドプラン、今日の待機児童対策の始まりであるエンゼルプラン、消防署での職場代表制とでも言える消防職員委員会制度などがこの時代に次から次に実現している。

●一方、同論文で「これらの動きにうんざりしていたのが鉄鋼、電機、自動車といった(IMF-)JCを中心とした輸出産業労組であった。円高で最も甚大な被害を被っていた彼らはこの間一刻も早い規制緩和の実施を求めていた」「春闘見直し論議でも、パターンセッターを務めてきたJCは「産別自決主義」を唱えて、高生産性セクターが必死に作った賃上げ相場を踏み台にする低生産性セクターを批判」などと書いていることが興味深い。

●これに対置されるのが同論文で取り上げられる中小企業労組で「中小企業労組は、JC系労組以上に産業空洞化や不況に喘いでいる。しかしその対策として中小企業労組は、JC系労組とは逆に公的職業訓練の充実や公正取引の保障などいわば「再規制政策」を望んでおり」「中小未組織の組織化とナショナル・ミニマムの保障を連合最大の課題と位置づけると同時に、社会的相場の底上げこそ自己の使命」と取り上げられている。

●この論文を読み通すと、連合が利権集団でその欲を押し通すために民主党に肩入れしているという俗説が間違いであることがわかってくる。

●残念なことにこの論文は1996年12月に執筆されたもので、それまでの時代について的確に書かれているが、その後について書かれたものがさらに読みたいと思っている。

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コメント

久米郁男『労働政治』に対する違和感は同じでした。これに代わるテキストを探してるものとして良い紹介をいただきました。鹿児島の森より。

投稿: 羊の声 | 2013.01.23 21:56

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