2/17 学力テストの計測で大学生の学力を高まるか
文部科学省がこんなことを考えている。
大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へ 日本の大学生は勉強しない――。そんな汚名を返上しようと、文部科学省は、現役学生向けの「共通テスト」を開発する検討に入った。入学後と卒業前に2度受験すれば、在学中の学習成果の伸びが客観的にわかるようにする。結果を分析してカリキュラムの改善に役立てたい考えだ。
こういう学力テスト的なもので測る勉強の仕方は高校生までにしておくべきだと思う。
日本の大学生が程度が低いのかよくわからない。昔の大学生より最近の大学生の方が、就職との関係で授業の出席率やテストの得点などでよく勉強しているのではないかと思うが、それが大学生卒業にふさわしい見識や判断力につながっているのか疑問で、そういうことがこうしたテストで測れるのか、学習指導要領みたいなものがないし必要もない大学において可能なのか疑問だ。より間違った大学改革にいきかねないミステイクを誘いそう。
日本の大学生の質が低いのは能力の問題よりおかれた環境にあると思う。
入口レベルでは、文部科学省が学校法人への補助金ばらまきのために、申請するだけ大学を作ることを認め、大学全入という事態を招いたことである。
大学より上の教育は特殊なもので、全員に受けさせるべき教育ではないと思う。人口の1割しか大学にいかない社会であれば大学生は(多少の歩留まりがあっても)意欲と頭の良い人間しかなれない。そのことを全面肯定しているのがヨーロッパの大学で、優秀な一部の国民しか行かない代わりに大学の学費どころか寮の無料支給、返還無用の奨学金の支給などが行われている(日本では学費がタダという話ばかりされているが)。貧しいけれども優秀な人を社会が見落とさない仕組みになっている。日本は理論上希望すれば10割行けるから、本人は意欲も力もないし大学出てキャリアアップする見通しも立たないのに、親はじめ周囲が薦めるままに大学に行っているわけで、そうした大学の学力の平均値が諸外国より上になるわけがない。まじめな労働者として社会に参加してその中で技量を磨いた方が幸福感を得られる人まで、学校法人に貢がされているのが日本の実態だ。
人間の社会的な存在価値というのは多種多様で、そのことと密接に関わって人間は幸福感や自己存在を確認できる。そのことを充足させる方策もなく、啓蒙主義を全面展開して、世の中全ての人に高い教養をつけることは不可能だしやるべきことではない。教養が必要な人間もいれば、実学が必要な人もいる、人それぞれに生きる社会的意義というのは異なってくるものなのに、一律に高等教育を受ければ受けるほど世の中が進歩する、という前提がおかしい。
大学全入をやれば、本来大学など行かなくても十分に世の中に役に立っていける人をいたずらに教育機関につなぎとめ、人間をおかしくしているような気がしている。行くべきでない人が行っていれば、それは学力が下がるのは当たり前で、同世代の1割しか大学に行けない社会の方が大学のレベルが高いに決まっている。
また、高卒したら必ず大学に行くというのではなく、80年の人生のなかで必要になったら高等教育を受けるという社会にしていくことが大学にとっても社会にとっても個々人にとってもベターな社会になっていくのではないかと思う。
もう一つ、今の大学が就職活動にあまりにも力を注ぎすぎることに問題がある。一番大学が大学たらんとする3年生から脅迫観念的に就職活動をやり続ければ学問は受け身にならざるを得ない。無駄な議論、ややこしい話はしないように慎むのがマナーになる。個々人の努力で人間力を磨くことばかりになる。そんなところで学究的な態度が育つとも思えない。大学が機能していない。
文部科学省が勉強する大学にするためにやるべきことは、違うだろという感想を持たざるを得ない。少なくとも日本の大学を勉強する大学にするためには文部科学省は、従来の常識に対する真剣な自己批判が不可欠である。
大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へ
日本の大学生は勉強しない――。そんな汚名を返上しようと、文部科学省は、現役学生向けの「共通テスト」を開発する検討に入った。入学後と卒業前に2度受験すれば、在学中の学習成果の伸びが客観的にわかるようにする。結果を分析してカリキュラムの改善に役立てたい考えだ。
大学生の「能力測定」と位置づけ、年に1回、読解力、論理的思考力、批判的な思考力、文章表現力などを問うことを想定。大学の講義にどれくらい主体的に参加しているかといった学習態度のアンケートも課す。同じ学生が2度受ければ、成長度を「可視化」できると期待する。
対象は全国の大学。大学として参加するかどうか、何人の学生を受験させるかなどは、各大学の判断に任せる。文科省は、伸びが著しい大学の取り組みを公表するよう促すなど、成果重視の仕組みを作る。文科相の諮問機関である中央教育審議会の大学教育部会で具体的な検討を進める。
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