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2012.02.01

1/31 子ども園は待機児童対策という間違い

政府の子ども政策で、こども園構想がまとめられました。マスコミは盛んに待機児童対策と宣伝していますが、私はこれは間違った現実への認識だと思っています。

幼稚園と保育所の統合をめざして進んだ子ども園の構想ですが、幼稚園業界が猛反発したため、幼稚園は参入しない自由を与えられています。その中で保育園は子ども園に移行することが半強制的に進められます。そのことで、幼稚園を利用している保護者に選択権が与えられる代わりに、保育所を利用している保護者はますます入所枠が狭まるということになります。

したがって待機児童問題は解決せず、運用に失敗すれば逆に幼稚園を利用している保護者の需要を保育園に移行させてしまうことも考えられます。

いままでは自治体が保育所利用について必要度を判定して入所決定してきましたが、子ども園制度に代わると、自治体は子どもの保育の優先度の判定するにとどまり、子ども園にモラルとして優先度に応じた受け入れを求めるに留まっています。

子ども園制度を待機児童解決と言うのはいささか無理があるのではないかと思っています。

ただし、それでも、子ども園のような幼稚園と保育所を一元化・一体化するような政策は必要だと思います。待機児童問題の解消という観点ではなくて、未就学児の子育てを分断しないということと、保護者の就労形態の多様化で、保護者が幼稚園か保育園かという二項対立のように決められる保護者がますます減っていくと思います。

保護者の働き方が多様化する中で、片働き家庭と共働き家庭との境界線はだんだんあいまいになってきています。中間には短時間のパートや家庭内事務、自営業の主婦などがあるわけです。そうした境界があいまいになって、片働きと共働きをかっちり分けることは難しい時代になっています。
そうした時代の趨勢として、幼稚園と保育所を明確に分離することは、ニーズに合わなくなってくると思います。幼稚園に預けていた保護者が永遠に就労や社会参加ができない、保育所に預けている保護者が就労以外の用事で保育所に預けられない、そんな形式的な区分だけで整理できる社会ではなくなっています。そうした中で、幼稚園と保育所の統合という政策じたいは間違っていません。

乳幼児をどうやって社会で育てていくのか、この社会というのは大人の保護・指導という観点だけではなく、子ども集団を形成していくのか、ということが問われているのだと思います。その中で今は就労している保護者の子がその権利制限を著しく受けて、家族丸ごとシバキを受けながら生きている、という現状があります。

こうした政策を推進するなら、やはり基本に立ち返って、きちんと保育所を増やす具体的かつ安心できる考え方を提示し、幼稚園側の参入や、やる気のある社会福祉法人やNPOの保育所開設を引き出すということが必要だと思います。

●報道するマスコミで働いている人が保育所という制度をよく理解しているのか、特にこうした政策決定の報道に携わる記者が理解する機会があるのか、非常に疑わしく、こうしたエラーをするのではないかと思っています。

●朝霞市では、ここ数年保育所を毎年2~3ヵ所増設してきました。あまりにも急激な増設であったため、今度はニーズのある地域と立地とのミスマッチが起きて、その解消策が課題になっています。ところが来年はゼロという見込みです。担当課に確認したところ、子ども園がどのような制度になるのかわからない、子ども園の財源負担がどのようになるのかわからない、そうした中で積極的な対策には踏み出せないということのようです。できるだけ現状から不利益のないような改革であることを明示し、てほしいところです。

●子ども園制度が創設される「子ども子育て新システム」になって、保育士の就労条件が積算されていた保育所の補助金制度が、介護保険のような報酬単価制度に変わると言われています。現場ではそのことで不安が強くあります。政府には、介護保険のようにニーズがあるのにどうして働く人がいない、と言われないような制度にしていっていただきたいと思います。介護保険制度のデメリットの部分がこの制度で出ないようにしてほしいと思います。

●法案審議で自民党はじめ野党が徹底抗戦して児童福祉法の改正ができなければ、従来どおりということになります。

●これまで八代尚宏氏や鈴木亘学習院大学教授など、社会保障に強いと自称している経済学者が、保育所業界は既得権益があって(社会的規制をステークホルダーとして意見してきたわけで全くないとは私は思わないが)、厚生労働省は利権とつるんで抵抗している、などと批判を加えてきました。学校法人は無罪放免してきました。しかし子ども園構想では、保育園業界側は内容面での抵抗をしたにとどまり制度を受け入れたのに対し、構想そのものを拒否し、その結果幼稚園での存続と保育所化の選択肢の自由を得たのは幼稚園業界の側でした。社会福祉法人と、こうした経済学者らが就労の場を得ている学校法人と、どちらが資金的に政策要求活動ができる余地があるのか、いまいちど検証していただきたいものだと思います。

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