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2011.12.31

12/30 日本の特殊な労働慣行の形成過程がわかる「日本の雇用と労働法」

選挙とその後処理で丸3ヵ月間、まともにじっくり本を読む機会を失ってしまいました。
市内に勤務地が移り、電車通勤がなくなって本を読むしかない時間がなくなった(札幌から帰ってくるとき、本を読める通勤電車ということで、混雑率が低い東上線の沿線の朝霞市に戻りました)ことも悪影響もあります。

ようやく読書再開というところですが、まず読まなくてはと思っていた本の一冊、濱口桂一郎さんの「日本の雇用と労働法」(日経文庫)を読みました。

職務にもとづく契約関係ではなく、身分丸ごと雇用する日本独特のメンバーシップ型雇用の形成過程を簡単にかつ丁寧に説明されていて、特に戦前から戦後の連続性についてわかりやすく書かれている新書としては唯一に近い存在です。とくに戦争直前から戦争中に関しての労働政策の変化、国民を国家に強烈に統合していく過程で、賃金統制ととにも、上からの労働者保護が行われ、日本的な労使協議制が敷かれ、それが戦後の労組結成のベースになったという話は興味深いものでした。

また、裁判官がそうだからなのかも知れませんが、転勤・出向・時間外労働に関する判例がグタグダで、こんなひどい労働環境になってしまったんだということもよくわかる本です。

●小室直樹の「危機の構造」(中公文庫・絶版)もあわせ読むとよいように思います。

●日本には能力主義がないからダメなんだと短絡的に思いこんでいる人に違和感を感じる人は必ず濱口先生の本をお読みになった方がよいと思います。明快にその違和感が正しいと教えてくれます。
職業に全身全霊を注げる経営者タイプの人以外は、賃金に見合う労働をすればよくて、それは契約原理が根底にあって、職務が明確にされた上で雇われるのが普通なんです。ですから明確にされた職務を行っていれば契約違反にならない。しかし日本のように全従業員を身ぐるみ身分で雇うというのは、経営者になるようなエリート層にしかやってはいけないことなんでしょう。問題は自分がエリート候補生と思っている人は、職務給なんてされたら屈辱に感じることかも知れません。

●メンバーシップ型雇用だから従業員の不始末に会社が謝罪したり、私生活を規制したりするわけです。仕事の仕方も外形的な達成を問わず、企業に対する忠誠をどのように表現するかが問われるわけです。

●余談ですが、雇用がメンバーシップ型、小室直樹流に言えば企業がコミュニティーになってしまったがために、かつてはOL型女子労働者がいて社内結婚ができたが、今は難しくそれがそのまま未婚率の上昇と書かれているp191のコラムはおもしろい。今はそれが派遣労働者に置き換わって、下手にちょっかい出すと、地位利用のセクハラになります。そもそもコミュニティーの一員としてみなしていないから、よっぽど話好きな人でもなければ、お互いに品定めして決断する対象ではないのでしょう。個々人にとって職場以外のコミュニティーづくりが大事です。

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