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2011.12.30

12/30 橋下大阪市長の労組バッシングの問題

橋下大阪市長が労働組合をスケープゴートにしはじめている。該当する新聞記事のツイッターの反応を見ていると感覚的には喝采6割、心配2割、反対2割ぐらいな感じである。すっかり労組を悪者にしてバッシングする政治風土は定着しつつある一方で、そんなことやっても政治家としての品位を下げるだけではないかと心配したり、小泉の二番煎じは通用するのかと橋下氏を心配する声が出始めていることも注視したい。

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政治的には、1970年代の労組がもっとも力を持っていた時代を前提に、野党の支持団体であり、最もたたきやすい労働組合をバッシングの対象としたサッチャーや土光敏夫(彼については中曽根氏が国労だけに標的を絞り、他の労組を国労から引きはがして労組を政府と定期的に協議するシステムを作ったので若干異なるが)が行ったような改革のやり方の延長が、今みたいな労働組合の状況で、たたいても事態が改善しない状況で、いつまで通用するのか、ということが問われていると思う。

弁護士だけあって、労使関係そのものについて問題視すると、不当労働行為として被告席に立たなくてはならなくなるので、労組の政治活動について、徹底的にバッシングをしている。労組の政治活動について、全く問題がないとは言わないが、しかし政治的には労組を政治活動の外におくことがよいことなのか、疑問だ。

橋下氏は公務員労組が力を持っているとギリシアみたいになる、と言っているが、日本と公務員制度や労使関係、労働慣行、公務員のありようなど前提条件は全然異なる。また戦後も長く続いたファシスト政権のもとで、国民的統合を制御するために多くの国営事業が展開され、水ぶくれした公務員数、非民主的で上任せの労使関係が形成されている。その上、今回の破局にあたって、ギリシアの公務員労組は労使関係や政治活動を見限り、それらと全然切れたところで院外闘争を派手に行ったことであって、むしろ私からすると政治的統合にきちんと労組をおいておけなかったところに問題があると思う。

大阪市の労組をはじめ公務員労組がいくら議員を送り出しても、所詮は議会の過半数を掌握したり、特定の政党の議席の大半を占有したりすることは不可能である。一方で、公務員は思想信条を調査して採用差別することはほとんどできないので、公務員労組が支持を表明してきた民主党や社民党、国民新党以外の公明党や共産党、自民党、みんなの党の支持者も少なくない。そういう人の帰宅後の政治活動や個人的支持まで縛ることはできない。
自治体選挙が個人名選挙である限り、公務員労組の出身の議員といえども、連合を通じて民間労組の組合員の支援者を開拓したり、さらには地域社会の幅広い人々と連帯していかないと当選できない。また当選してからも公務員のエゴを押し込んでばかりいたら、議会活動では孤立する。むしろ公務員労組の政治活動は、公務員社会に外の風を吹き込み、公務員以外の立場の課題を考える機能を果たしている、と思う。大阪市の労組の活動家が、公務員の利害を超えて、自らの職場の今のやり方では解決できないホームレスの課題や、障がい者福祉の運動、その他細かい福祉政策にボランティアで取り組み、政策提言をしてきたことをもっと前向きにとらえたらどうかと思う。

むしろそのことで組合員からすれば、自分たちのことを100%やらない組織内議員、といったような批判になっていると思うし、橋下氏のような些末な政治活動まで取り締まるやり方は、むしろ公務員社会のことしか考えない選民思想みたいな発想を持っている一部の公務員にとって、好都合な口実を与えるだけだと思う。
賢い橋下氏のことだから、むしろそれをねらっているのかも知れないが。

●たたかれる労働組合の問題は労働組合の組合員数の割合が減少していることにあると思う。いま労働組合は、GHQ製の労組がある恵まれた階層と、目覚めて闘っている人にしかない。この社会において労働組合員が特殊な存在になってしまっている。そういう特殊な人たちの声というレッテル貼りが通用する状況にある。1980年代半ばまでのように全労働者の30%ぐらいが加入していて、組合がない職場でも、組合がある職場の賃金水準や労働条件が波及する社会環境にあると、社会の一員、一つのシステムとして認知され、こんなにまでスケープゴートにされることはないんだろうなぁ。

●大阪の低迷というのは、公務員労組をたたいて改善されるのか私は疑問だと思う。明治以降、大規模な製造業の発展をしたときにあわせた社会構造のまま今日に至っていて、うまくいっている産業がすべて東京と名古屋に吸い取られていることではないかと思う。そのことは公務員の責任なのか、公務員労組が何か妨害していることに原因があるとは思えない。

●組合事務所を追い出すことは、マイナス面も多く、労組をセクト化させることになる。ほぼ全員入っている労組だからこそ、市長や知事のやることに一目おかざるを得ない。橋下氏はセクト化した労組にも勝てると思うが、以後の市長(知事)にとってそういう労組になった方がいいのか考えるべきだろう。

●国民が悪そうな組織と思いこんでいるものに、人気ある政治家がバッシングすることを、、政治家としての私が「いや、それは違う」と言うことはリスクのあることだと思う。まして私は現市政と是々非々で朝霞市役所を改革することを言い続けると言って当選した立場である。しかし、やっぱり因果関係がないことでバッシングが行われていて、誰もかばわないのであれば言わなくてはならないと思っている。

彼らが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった、
私は共産主義者ではなかったから。
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった、
私は社会民主主義ではなかったから。
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった、
私は労働組合員ではなかったから。
彼らがユダヤ人たちを連れて行ったとき、私は声をあげなかった、
私はユダヤ人などではなかったから。
そして、彼らが私を攻撃したとき、
私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。

●公務員の政治活動は違法だ、と、AだからAみたいな無思考な論理を展開する人がいる。まず(ケースワーカーが生活保護受給者に選挙運動をする、発注権限のある公務員が出入り業者を動員するなど)地位利用は良くないということは当たり前で、これは地方公務員法においても罰せられる。問題は政治活動で、公務員にも人権や私人としての権利がある、ということから、あまり規制すると違憲立法になるから、国法で違法としながら罰則を設けられなかった経緯をふまえるべきだ。
諸外国で公務員の私人としての政治活動、もちろんそれは公務員労組としての政治活動を規制している国は、韓国など限られた国しかない。また公務員法制が官僚のような政策決定に大きな影響力のある公務員をモデルにしたものであるので、福祉国家において増大した政策決定に携わらない公務員、たとえば地下鉄の運転士やごみ収集作業員、普通の保育園の保育士、給食調理員まで政治活動を規制することは、明らかに問題だと思わざるを得ない。こうした公務員は民間でもできる事業だが、事業推進にあたって市役所がやった方が好都合だからと公務員にしている存在で、それを民間人並みの人権を保障しないことはどうなのかと疑問に思う。

●皮肉な話は国立大学が独立行政法人化され、今や国立大学の先生は大手を振って選挙の支援ができるようになった。大阪市においても地下鉄の民営化が行われれば、もはや市長が何を言っても庁舎内で組合活動をし、その延長で政治活動をすることはは規制できなくなる。

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コメント

初めまして。お邪魔します。
ご記事、非常に興味深く読ませて頂きました。多角的に非常によく分析されていて、中立的な視点から非常に論理的に冷静に展開されているなあと感じ入りました。

さて、この問題に関してですが
結局、問題視されている、公務員側の政治活動がどういうものだったのか、というところが、ルールや法の趣旨も踏まえて精査されなければならないんでしょうね。

しかし、私たちには、その具体的な活動ってのがなかなか伝わってきません。なので、この件に関しては、正直なところ、僕としては全く判断がつかないです。
マスコミの皆さんは・・・ワイドショー的な記事ではなく、正確に近い事実関係を伝達してくれないですかね><;

えーと、与太話になりましたが、これから、ちょくちょく覗きにこさせてくださいませm_ _m

投稿: かもめのじょな | 2012.01.01 19:19

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