8/10 特例公債法案成立に妥協をした野党の英断
茶会運動の影響を受けて日本同様に国債発行を渋った共和党によって、アメリカ政府は債務不履行寸前にまで追い込まれた。その結果、大量のアメリカ国債によって信用を維持してきたアメリカ経済は破局への道を歩き始めたのではないかと思う。
そうした流れを受けて、日本でも特例公債法案を人質に取って与党を追い込んできた、自民党・公明党が軌道修正をはかったことについて、その交換条件に問題はあるものの、収束した事実だけはとにかく歓迎したい。日本経済がアメリカと心中する危険性がより高まっていたからだ。
そうした自民党や公明党の方向転換が行われた影に、特例公債法案で自民党が妥協できた影に、河野洋平元衆院議長の存在があるとの、読売の報道。
自民内「ベタ折れ」批判…市場緊迫で一転合意
この間、特例公債法案を人質に取って与党を追い込む自民党を国賊と呼んだが、そうした勢力は自民党の中でも、アメリカの茶会運動同様、小泉旋風の麻薬にいかれた一部議員に限られた態度によるものなのだろうと思う。良識ある議員が落としどころについて悩み続けていたのではないかと思う。
しかし、こうしたチキンレースを政党が始めてしまったときに、冷静に判断して助言できるのが、自民党も民主党も、70歳ぐらいの世代にしかいないということに、ここ20年ぐらいの政治のものの考え方の欠陥が見えてくるように思う。
●しかし70歳ぐらいでも、民主党系無所属の西岡武夫氏のような困った人もいるが。
●とにかく増税反対、社会保障粉砕、どこかにムダがあるはず、緊縮財政を強硬に主張するアメリカ茶会運動が引き金をひいたアメリカドルに対する信用収縮は、日本のバブル崩壊と同じような不況を世界全体で進行すせる可能性が高い。イギリスの暴動も何かよからぬ予感を感じさせる。マルキストではないので資本主義が破局したなどと面白がって言うつもりはないが、恐らく世界の経済の支配構造は大きく変化するのではないかと思う。アメリカが軍事力を維持できる経済がなくなったら、ドルの信用を維持できる根拠を失い、ただの巨大な債務国となる。次期首相に対米従属のスタンスが強い人がなって、アメリカ政府やアメリカ商工会議所あたりの要求を呑んで国内改革が行われ、アメリカ経済との一体化を進めた場合、恐らく日本経済は長期的に相当なダメージを受ける可能性が高いように思う。
●外交政策の変更を行うときに、日本の歴史はほとんどの場合、血を流している。心して生きるべき時代に入ったように思う。
●傷は大きいが、アメリカやイギリスの混乱を見ていると、もう小さな政府を崇高な理念とする経済政策の間違いが証明されたのではないかと思う。国の会計というダイナミズムのあるものを、家計のやりくりに擬して、誰でも議論に参加できるような経済談義をするべきではないのだろう。
●蛇足だが、自治体の財政はいくらでも赤字を重ねてよいものではない。国よりずっと容易に、住民は所属する自治体政府を変更し選択できるからだ。ここは国と自治体の財政の可能性の大きな違いであるし、逃げられない国民と心中できる国民国家というものの恐ろしさの本質につながる話である。
自民内「ベタ折れ」批判…市場緊迫で一転合意
. 民主党政権公約(マニフェスト)の主要政策撤回を求めてきた自民党が9日、特例公債法案成立を容認する姿勢に転じたのは、世界株安によって日本経済への打撃の拡大も懸念される中、これ以上の引き延ばしは得策でないと判断したためだ。
だが、民主党から実質的な譲歩は引き出せず、党内からは「ベタ折れ」と批判する声が出ている。
「主張したいこと、やりたいことはあるが、国債マーケットが不安定で、円高も続いている」
自民党の谷垣総裁は9日夕の記者会見で、一転して合意を急いだのは、欧米やアジアの株式市場に連鎖する株安を踏まえたものだった、と説明した。
自民党は8日の民主、公明両党との3党政調会長会談では、高速道路無料化や農家の戸別所得補償制度、高校無償化の「バラマキ3K」を廃止するよう強く求めた。ところが、翌9日の3党合意では、結局どの政策も「存続」が前提となり、「見直しを検討」などの抽象表現にとどまった。
自民党内には、派閥領袖や参院幹部を中心に、「菅首相退陣の見通しが立たない以上、特例公債法案はカードとして温存すべきだ」との声が強い。9日午前の役員会や総務会でも「あくまで3K撤回を求めるべきだ」との声が相次いだ。
実際、首相は9日昼、長崎市内のホテルで記者会見した際、9月下旬のニューヨークでの国連原子力安全首脳級会合について、「積極参加する姿勢は当然だ。私自身がどうするかは、現在検討している」と述べ、出席に含みを残している。
膠着(こうちゃく)状態の収拾に動いたのは自民党の大島理森副総裁と石原幹事長だった。2人は谷垣氏に対し、首相の退陣3条件を早期に満たし、民主党に「菅降ろし」を委ねるべきだとしてきた。河野洋平前衆院議長も谷垣氏の背中を押した。8日、自民党本部で谷垣氏と会談した河野氏は「もう、いいかげんにしよう。どうせ法案は通さなければならないのだから、衆院選の準備を急ぐべきだ」と助言した。
(2011年8月10日10時44分 読売新聞)
| 固定リンク
コメント