11/20 扶養控除を廃止した民主党が配偶者控除に手をつけず
配偶者控除の所得制限、民主が見送り方針
最も悪質な家族手当ともいえる所得税の配偶者控除が一切手をつけられず見送りになるようだ。
政治家と支持団体の大企業・正規公務員の既得権益に加え、金融業や不動産業などの高額所得者の利害を代弁したというそしりをうけても仕方がない。
世帯年収200万円以下なら配偶者控除の恩恵なし、それ以上なら国地方あわせて年78000円が配偶者控除で戻ってくるが、年収2000万円ぐらいになると、年20万円近くもの税が配偶者控除で戻ってくる。まさに逆累進税制である。
特に今年の議論は、配偶者手当の是非論がある中で、政府税調が、配偶者がいるということだけで税制を優遇する意味が見いだせない高額所得者の控除ぐらいは廃止しようとしていること自体に、民主党としてゼロ回答したことになる。「逆転現象」だのトーゴーサンピンみたいな話はためにする話だろう。子ども手当であっさり扶養控除を廃止したわけだから。
専業主婦を選択する人たちの論理の中に、男の甲斐性などという言葉がある。減税措置をうけての男の甲斐性って何だと思うようなところがある。
もちろん専業主婦になる自由はあると思うし、それはそれでいいことだと思うが、それが不公平税制の上に成り立っているとすればおかしなことだ。専業主婦にも役割がある、というなら、それはそれで地域活動なり社会活動なりへの報酬として返すべきであって、それを家族内の所得補償でタダで利用している公的機関や地域が問題と指摘すべきだろう。
どうしても専業主婦を擁護したいというなら、子ども手当同様、手当で行い、逆累進的な税控除でやる方法はやめるべきだ。
●税控除や免税措置は、税金をまけてもらうことに価値を生じ、税金は払わなくて済めば済むほどいいことだ、という倫理を生む。そのことが、税金を忌避したり、脱税を正当化する論理につながりかねない。複雑な税控除の制度を残した場合の税収合計と、それらのうち廃止できるものはできるだけ廃止して税率を下げた場合の税収合計が同じなら、後者の選択肢を取るべきだと思う。
●配偶者控除の一部廃止にNOをつきつけた民主党のPTの座長が中野寛成氏であることは象徴的。
●所得税の税控除をうけられ、うまみを実感できる階層というのが、どこかで下請け、業務委託、外注化、テンポラリーワーカーの活用などのかたちを取ったり、消費財の価格下落というかたちで、雇用があやふやで所得の低い人たちの働きによって支えられ、成立しているということを認識すべきだ。
この犠牲になっている階層は、社会のまともな支援も受けられず、借金地獄になることの紙一重のところで、なんとかふんばって生産活動に隷属している。
彼らが今の社会の逆転した価値に気づいて、生産活動や努力を放棄しはじめたら、単にモラルが崩壊するだけではなく、そうしたことで所得を維持してきた人たちの生産基盤そのものが崩壊する。国内はもとより海外移転したとしても、下請け業者が労働力が確保できないから廃業します、と言われたら、やっていけないだろう。
不公正な分配はなくしていくべきだし、分配は公正にかつ、より公平にしていくべきだ。
配偶者控除の所得制限、民主が見送り方針
民主党は19日、2011年度以降に支給する子ども手当の財源案となっている配偶者控除への所得制限について、政府に対し、見送りを含めた慎重な対応を求める方針を固めた。
11年度税制改正について議論する作業部会の役員会で、事実上見送りを求める方向となった。11月末をめどに提出する政府への提言に盛り込む方針だ。
会合では、配偶者控除に所得制限を導入すると、所得を自ら調整する余地がある個人事業主と、そうでないサラリーマンなどとの間で不公平感が生じることに懸念が相次いだ。また、所得が少なくて控除を受けた人の手取り額が、所得が多くて控除を受けていない人の手取り額を上回る「逆転現象」が生じることを問題視する意見も出た。
(2010年11月20日03時02分 読売新聞)
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コメント
配偶者控除を維持とは、ガッカリです。
民主党は以前から配偶者控除廃止を掲げていたはずですが。
配偶者控除・扶養控除という「家族扶養主義」は強固なんですね…。自民や保守系が守りたがるのはまだ理解できますが、共産党でさえ廃止反対なんですから。これらの控除には福祉肩代わりや弱者支援の要素も少しはありますけど、それ以上に高所得者に有利であり、主婦パート等の収入抑制効果の害がある時代錯誤制度だと思います。
民主党の「控除から手当へ」「所得控除から給付付き税額控除へ」を支持していたのですが、こんな案配ではどうなることか…と憂鬱になります。
投稿: kiriko | 2010.11.23 03:43