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2010.10.08

10/7 カタストロフィー的ローコスト社会理想論の陥穽

愛読している「公務員のためいき」というブログで、自治体の現業職員の職場環境の変化と組合活動の変化について書いた記事に対して、こんなコメントが載っていた。

国の機関に勤めるものです。毎週、拝見させていただいています。久々にコメントさせていただきますが、今回は現業職員のお話でしたが、本質的なことを言えば、公務コストの限りない削減の一つの現象に過ぎないと思います。今後、グローバル競争に対応できず、税収や個人所得が増えないと予測され、小子高齢化が急激にすすむ日本においては、ローコストで生活できるようにすすめていくしか選択の余地は無いのかなと個人的には考えています。実際に、名古屋市長のようにそれを徹底的にすすめようとしている首長も出現しています。その流れで言えば、警察や防衛、医療関係を除き、今後、公務労働者は少数精鋭になっていくのかなと思います。もちろん議員も含めてですが。高齢者等を活用したボランティア職員も遠い話しとは思えません。残念ながら、社会的に必要性が高い職種というものは、時代とともに変遷するものであり、公務員と言えども同じではないでしょうか。
投稿: syouganena | 2010年10月 6日 (水) 02時54分

このコメントには、今日の緊縮財政論者のエートスみたいなものが詰まっていて、このコメントに対する意見をまとめると、今日的な行革談義的なものに対する違和感を整理できると思った。
まず、文体全体がていねいで、一定のソフィスティケイトされた階層のコメントと思ってよいのだろう。

しかし、グローバル競争を自明のものととらえていること、グローバル競争がゼロサムゲームという前提をたてているということ、内需と外需のバランスをつかんでグローバル競争の意味をとらえていないことに問題があるコメントといえる。
名古屋市長を評価するとなれば、財政が立ちゆかなくなってるのに、減税で金持ち市民から税収をばらまいてしまうことを評価してしまうのも理解できない。
公務が少数精鋭になるとすれば、それは国家官僚モデルしか公務員がいないということになり、福祉国家からの逆行になる。それは先日記述したが、泣き叫ぶ子どもを背負って仕事しろ、とか、要介護の親は姥捨て山に捨てろという論理にしかならない。なぜなら月給取りで地域社会に返すものがないような大多数の今の日本人にとって、世田谷区のような有閑マダムと資産家がいて、その上でボランタリーが恵まれた地域に住まない限り、仕事を辞めなければこうした公的サービスの支えなしには生きられないというのは明白だからだ。公的サービスがなければ自前で福祉をやらざるを得なくなり、結果として働く意欲や能力のある人を生活保護受給者に転落させていく。それは働かない公務員を作るようなものであり、公務員を多めに配置して多くの人の自立を支えるよりもっと非効率な選択だろう。
またとんちんかんな公務員絞り込み縮小均衡経済論は、正規職員になれる公務員が絞られ、その身分が希少価値化することから、結果として自治体の雇う非常勤職員をより増やすだけになり、正規職員公務員の官僚化を促進することになる。

また小野善康阪大教授の主張する経済学説によれば、人が効率よく社会生活を営めるような仕事を新たに作るのであれば、不況下において公務員が多い社会は経済を圧迫するどころか、経済の安定、デフレ解消に役立つと言う理論もある。

大局観的なローコストで生きられる社会というのは、今の民主党の言う「無駄は必ずある」に近い夢物語で、それを無理矢理実現しようとした暁には、そのしわ寄せはサービス業など労働集約型産業に集中的に現れ、労働者の非正規化がさらに進み、結果として福祉ニーズを誘発して社会的な負担を増大させる結果となる。

●「公務員のためいき」は、いずれの立場でも感情的な議論になりがちな公務員の労働問題を、格調高く丁寧にかかれていることに毎回敬意をもって読んでいます。
個々の自治体の公務員の労使関係に関心があって、労働組合側がどんなこと考えながら組織を運営しているのか、考えるのに非常に参考になっています。

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