7/16 「社会主義者」と否定する安直さ
朝日新聞に
嫌われる「社会主義」米政権批判のフレーズ オバマ氏の政策標的2010年7月16日7時22分
という面白い記事。
アメリカでは、社会主義も社会民主主義も何かわからずに、なにやら気持ち悪い社会の敵という扱いを受けるという。
アメリカ人に国際感覚が全くないという証拠みたいな話で、NATO同盟国の大半が社会民主主義政権であったことなど誰も知らないで、少しでも公的なものが増えると社会主義といって罵倒し差別するらしい。
記事の中ではアメリカと日本は違うと言っているが、最近の日本も似たような感じで、気持ち悪い。イデオロギーは新自由主義、経済学は新古典派経済学を信奉しない限り、イデオロギー的で、共産主義者と同義で社会主義者とレッテルを貼られる。軍事や経済だけではなく、イデオロギーまでアメリカの属国になりつつある。
●その手先がみんなの党である。「貧困大国アメリカ」の著者の夫がこんな党に所属していることが理解できない。
●映画「シッコ」でフランスに留学しているアメリカ人が、税金が高くても、公的サービスがみんなただ同然という社会はとっても暮らしやすいと感想を言い合うシーンが出てくる。やってみないとわからないんだ。
しかし都市部の日本人は向こう6年、小泉構造改革みたいな政治をのさばらせるために、みんなの党などに力を与えてしまった。これで政治の時計の針を10年巻き戻し、また小泉構造改革もどきを繰り返し→その失敗による反動を繰り返す運命を選んでしまったのだろうか。この新自由主義の悪循環から脱出できなければ、戦前と同じようなことを繰り返すことになるのか。これから自分には、成人病の発生リスクを抱える歳になっていくし、子どもの教育や失業の不安を考えると、日本にいられなくなることも考えて行動しなければならないと思う。
●鈴木亘「年金は本当にもらえるのか?」を読む。丁寧な言葉の間に、マスコミで流布される先入観や固定観念を利用したレトリックで、公平な論駁がされていないトンデモ本。権丈先生を批判したいのに批判すると負けるから、厚生労働省の御用学者などという言い方をしている。先入観を利用した議論の仕方は、研究者として問題があるのではないか。
また、社会保障は、それで生きられなくなる人が出てくるんだから、お坊ちゃまは、自分の研究ネタのおもちゃにしないでもらいたいと思う。
●この人も何かと社会主義と決めつけて批判する。
嫌われる「社会主義」米政権批判のフレーズ オバマ氏の政策標的2010年7月16日7時22分朝日新聞
「オバマ大統領は社会主義者だ」。米国では昨年来、そんな言い回しの政権批判が続いている。新医療保険制度も自動車大手支援も社会主義者の政策だから断固反対、という理屈だ。背景を探ると、社会主義者がひどく異端視されてきた米国ならではの事情に行きつく。
元下院議長ニュート・ギングリッチ氏は5月刊行の自著で「オバマ政権の本質は社会主義だ」と批判した。「経営に失敗した企業は市場から退場するという資本主義の鉄則をねじまげ、ゼネラル・モーターズ(GM)など自動車産業の株を政府が支配した」と指摘。「金融機関トップの高給を取り締まる仕事に政府が着手し、ジャグジー風呂業界の規制にまで乗り出すオバマ政権は、社会主義以外の何ものでもない」と訴える。
同氏のような共和党保守派にとどまらない。最近の世論調査では、米国民の52%が「オバマ政権は社会主義に傾きつつある」と回答した。
在任約1年半のオバマ大統領の実績の中で、「社会主義的」と見なされた政策の代表は、今春、導入が決まった新医療保険制度だ。
従来、保険に入れなかった貧困層も医療サービスを受けやすくするのが主眼で、「国民皆保険」の日本から見れば当たり前の制度だが、賛否の議論が米国を二分。反対派は「連邦政府が巨額の公費を投じ国民一律に同じような保険を与えるのは社会主義的」と批判した。救われるはずの低所得層にも「『医療保険に加入しろ』と政府に強制されたくない」との不満が根強い。
経営危機に直面した自動車メーカーに公的資金を投入した政策も、「社会主義的」との印象を与えた。元々米国民の間には、企業の国営化に対する強いアレルギーがある。そのため、今なおGM株の7割以上を米政府とカナダ政府が保有していることに違和感を感じる人々が少なくない。
ニューハンプシャー州で飲食店を営むロジャー・リストさん(66)は「米国では自助努力が何より尊ばれる。医者の費用は各家庭が蓄えるべきもの。自動車メーカーも銀行も経営が悪くなったら自力で立て直すべきもの。オバマ政権のように政府が個人に介入したり、企業を支配したりするのは、旧ソ連と同じ社会主義国のやり方だ」と憤る。
なぜ社会主義というだけで米国では否定的に響くのか。
保守系NGO幹部マクス・パッパスさんは「冷戦期、資本主義陣営は社会主義陣営と厳しく敵対した。冷戦後も社会主義とだけは相いれない。社会主義政党はあっても政界での影響力はゼロ」という。
米国の社会主義運動は、民主、共和両党を軸とする資本主義体制を全面否定し、労働者階級が支配する体制をめざす。一般には「かなり過激な思想」と見られている。
その活動を実践する「合衆国社会党」の本部は、ニューヨークの老朽ビルの一室にあった。アンドレア・ペーソン委員長は「わが党は源流を1901年にまでさかのぼる。2年ごとに党大会を開き、米各地に支部がある」と言う。最近では医療費の一律無料化を訴え、普天間飛行場を含む在日米軍の即時撤収を主張した。だが、政策はまったく注目されない。党支持層も大統領選の得票から推定すると全米でも3千~7千人ほどだ。
「党勢低迷は1950年代に吹き荒れたマッカーシズムのせい」と話すのはミシガン州の社会党員スティーブン・タッシュさん(27)。「赤狩り」と呼ばれた過激な運動で共産主義者が弾圧され、社会主義者も危険視された。
テネシー州の社会党員サリー・ジョイナーさん(25)は、仙台と名古屋に留学した経験から「日本と米国で社会主義の存在感は全然違う」と言う。「米国で社会主義者を名乗るのは大変危険。就職では差別を受けるし、就職できても『実は社会主義者です』と明かせばきっと職を失う」。家族や友人からは「社会党なんか辞めなさい。民主か共和のどちらかを支持するのがまともな生き方」としきりに忠告されるという。
アカデミズムの世界を見ても、社会主義体制を支えたマルクス経済学が、米大学では日の当たらない講座として扱われてきた。日本の大学とは対照的だ。ユタ大でマルクス経済学を教えるアル・キャンベル教授は「米国では資本主義を正面から否定する学説はおよそ受け入れられず、マルクス経済学者には教官ポストも限られていた。リーマン・ショックで資本主義の限界が見えた今も日が差さない」と嘆く。
ニューヨーク市立大のジョシュア・フリーマン教授(労働史)は、社会主義が隅に追いやられた事情をこう分析する。「冷戦の間に、共和党はもちろん民主党まで社会主義勢力を切り捨てて右へシフトし、社会主義が左端で孤立した。欧州や日本のように、産業の国家管理理念を捨てて資本主義を認める社民主義へ脱皮することもできなかった」
社会主義者呼ばわりされる米大統領はオバマ氏が最初ではない。世界恐慌時に失業者救済や企業への介入を進めたフランクリン・ルーズベルト大統領や、医療改革を試みたトルーマン大統領も「社会主義者」と攻撃されている。
「3大統領に共通するのは、前任者よりも熱心に福祉や産業政策に取り組んだこと。弱者救済に向けてホワイトハウスが目立つ動きをすると、すぐに社会主義批判が出てくる」とフリーマン教授。当の社会党員たちは「オバマ大統領のどこが社会主義者なのか理解できない」と当惑気味だ。「嫌いな指導者にすぐ社会主義者のレッテルを張るのはやめて」と訴えている。(ニューヨーク=山中季広)
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〈社会主義〉 生産手段を個人や企業ではなく、社会全体で共有することで、階級対立の少ない社会を実現しようとする思想の総称。多様な考えや定義があり、19世紀の思想家カール・マルクスは、社会主義がさらに発展すると共産主義に至り、階級は消え、生産力は高度に発達すると説いた。
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コメント
郵政民営化を日本に押し付けたとされるアメリカ。
でも、アメリカの郵便事業は公社(国営企業)のままなんだよね。
投稿: いつもは | 2010.07.17 11:40