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2010.06.07

6/7 規制緩和ちちんぷい保育制度改革に騙される若者

保育所を規制緩和すれば子育て環境が整備されるというおめでたい論理にすぐ飛びつく若者が多くて、もっと考えろ、と思う。保育所がうまく自分たちの生活に合わない、足りないというルサンチマンは私の生活でも起きているからよくわかるが、問題解決につながらない暴論に飛びついても、誰も何も解決しないと言える。
城繁幸 保育所の規制緩和はすぐに実現可能な少子化対策
赤木智弘twitter

同世代云々言うが、規制緩和された保育所を歓迎するのは、子育てより経済原理の方が大事な人々ではないかと思うところもある。経済原理なんかどうでもよい同世代は、やはり認可保育所に預けたがっているし、質の低い保育所には預けたくないと思っている。そもそも城も赤木氏も保育所を見たことがあるのか。その友人知人の保育所のお迎えやお見送りに同行したことがあるのだろうか。観念的な議論はやめた方がいい。

そもそも、今は無認可保育所からして不足している状況。どんな保育制度にしても保育施設が整備されなくては、保育所不足なんて解消されないことはここで繰り返し言ってきた。国は250万人の保育所入所児童を育てるのに、4000億円弱の公費しか使っていない。割返せば、子どもひとりあたり月1~2万しか使っていない。
保育所は公費の導入なしに育たない産業であり、そもそもの公費を増やさない限り、保育所事業に飛びつく奇特な人なんて現れない。
国の微々たる補助金を受け取るのを待つより、豊かな財政で何とかしようとする東京や横浜で独自の保育所制度を整備して、うまくいっている。財政力のある自治体は、規制緩和なんか待つよりも、独自の制度を作ることだってできないわけではない。それでも国と同等の基準を満たしている。東京や横浜が独自に吊り上げた認可保育所の基準に自ら追いつかなくなっているだけなのだ。それはまさに地方分権の文脈で基準を高くしていったのだ。

また、保育士がワーキングプアーである限り、人材供給も細っていく。それは介護の世界を見ればわかることだ。赤木氏がそういうことをよくわかっていると思っていたのに、城の安易な論調に同調するとは残念極まりない。

田舎の、少子化問題で悩んでいる自治体に行けば、そもそも子どもが少なくて、正社員だろうが非正規労働者であろうか、収入がなくても社会的な活動をしている人であっても、保育所に入れる。つまりそももそ都市部での施設不足が問題であって、規制緩和でどうにかこうにかなるようなものではない。

都市部でどうして保育所が増えないのか、といえば、土地が高すぎて、保育所なんて公共施設に土地を貸したり売ったりするより、マンションにしたり、商業施設にしたりした方が儲かるからだ。逆に言うと、土地利用の規制強化をして、公的施設の整備にリンクするかたちで土地開発を認めるようにしていかない限り、問題は解決しない。

●都市部で保育所不足が起きているのは、高度成長期から今まで、男性正社員優位社会がいつまでも残っていて、専業主婦をやっている余裕のある家庭が多いから、自治体が整備しなくても社会問題化せず、共働き家庭をグレる子どもを作る予備軍みたいなスティグマしか与えてこなかったからだ。
しかし、農村部や北陸では共働きが古くから当たり前で、十分に保育所が整備されてきた。
何て言ったらいいのか、仕事ばっかりの成長神話に毒されている思想が、子育てを家庭に押し込め、保育所整備を遅らせきたと言える。そういう意味では、経済原理だけの保育制度論、新自由主義者の経済談義のおもちゃとしての保育制度改革をやっている限り、問題は解決しない。

●北欧で保育所が整備されているのは、日本よりもっと手厚いお金が付いているからだ。さらには規制緩和論が期待しているような現実と逆行して、日本よりずっと高い基準で保育が整備されているからだ。規制緩和論の期待しているものと逆の現実が進んでいるからだ。

●結局は、よい保育所をきちんと整備しようとすると財源問題にぶちあたる。消費税を上げるなという20年前の主婦パワーの理屈にいつまでも束縛されていることが問題。財源問題があれば、日本の保育所程度の規制などどうということはない。

●民の力を使いたいというのもいいが、やはり初期投資は必要。民の自発的な力を待っていては保育所は整備されない。初動は、国や自治体が保育所を整備して、軌道に乗ったら独立行政法人を経由して民営化することも考えてもよい。今の公立保育所は、現場に裁量権がなさすぎること問題。保育時間などサービスが住民ニーズにあわず、利用者の不満になっている。現場に裁量権を渡すための民営化は、保育士のワークルールや保育の質が下がらないことを前提に考えられてもよい。

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コメント

こんにちは!保育士やってます。
よく、保育士の内情を理解してくれた!!と感動しております!!

何かというと、子ども手当てなんていいから、保育所を作れ!…という意見の多いこと、多いこと!
保育所作っても、働く人間が不足してます~!

資格持ってっても、経験あっても、都内で時給850円とかなんだから…余程、人間関係でも良くなきゃ続かないと思いますよ…

公立認可保育園でさえ、保育士が妊娠、産休とろうとしたら、「順番が違う!今年は私が子どもを作るはずだった!」…と他の既婚の保育士と出産時期で争ったりしてますから…

人と触れ合って、成長が見える仕事なので、楽しいことだっていっぱいあるんですけどね…
規制緩和で、朝7時前から開園して、夜10時までやってる保育所をみると、「誰が働いているんだろう??」と不思議に思います。

もうちょっと、保育士の職場環境を理解して、保育所云々欲しいものです…

投稿: ぱりぱり | 2010.06.10 08:28

私は鹿児島県の片田舎で保育園(社会福祉法人)を経営していて定員45名で54名(6月現在)の子どもを預かっています。
周りは兼業農家がほとんどで両親共に仕事を持ち、どちらかの実家の近くで家の農業を手伝いながら子育てにも祖父母の力を借りている、そんな地域です。
保育士も10年以上の経験がある人は4名、経験5年以下の保育士は5名、非常勤保育士が2名を抱えて約8000万円の収入(保育運営費、その他保育に係わる補助金等)で細々と事業を営んでおります。
実際のところ、延長保育事業、休日保育事業、一時預かり事業等の交付金が無ければ保育士の給与払えず、保育士定数ぎりぎりだと保育が行き届かずなどのジレンマを抱えながら、なんとか子ども達が我が園に通って貰える事が一番の利益となるように日々努力しているつもりです。
子ども達の処遇と共に保育士、職員の処遇が上がっていくことを期待したいのですが民主党に政権が移って保育所建て替えのために積み立てている施設整備資金などを『余剰金だ!』などと言って返還しないとならない事態を今一番危惧しています。
我が法人も子ども達とその保護者の利益となるように出来る事をやっていこうと思っています。
そしていつも保育の状況を良く理解していただいて本当にありがとうございます。色んな意見を聞きよりよい保育を出来る範囲で頑張っていきますので保育園への厳しい意見もよろしくお願いします。

投稿: リッケン | 2010.06.11 11:46

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