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2010.06.27

6/27 経済評論家のみなさん、保育所を新古典派経済学のおもちゃにするのはやめましょう

もう何度も言っているんだけども。

ニッセイ基礎研究所の遅澤研究員が、「子育て支援の現物サービス給付はナンセンスである」と題してコメントを書いている。

都市部のニーズの中心は保育サービスであろう。待機児童問題がなかなか解消されない中、民間の託児所に子どもを預ける場合、子ども手当てではとても賄いきれないと、親の不満も強かった。また、マスコミもこれを後押ししたからであろう。

と課題設定しているのはよい。その後、結論を新古典派経済学の公式にあてはめようとしてとんちんかんなことになっている。保育サービスは現物サービスにほかならないのに、どうして現金給付でよしとなるのかがわからない。

今、都市部で足りないのは、現物サービスにほかならない。現金をいくら積まれたところで、施設も人材もきちんと供給される体制が整備されていないことに多くの保護者が困り果てている。
その証拠に、ここ2年ぐらいは自治体がある程度の質を確保していると認め入所者を紹介したり独自の補助を出しているような無認可保育所でも、簡単に入れなくなっている。自治体も血眼になって、保育ボランティアなどを探しているが、預かる側の金銭、責任感、預ける側の安心感がいまいち保障できなくて、保育所増設に比べると微々たる効果しか作れていない。

まして結論として、官(公立保育所や民間認可保育所を「官」と呼ぶところに、恣意的な論理展開を感じる)が高いからと下げよとやれば、介護のように、人材供給の面で問題を生じる。自治体の保育所が高コストかと言われると、臨時・非常勤等職員の比率規制を撤廃して以来、かなり下がっていて、人材確保に支障が出てきているぐらいである。

「コンクリートから人」へというのは、資源投入のあり方の問題もあろうが、社会サービスをどのように形成するのかという問題である。ダム、道路、港湾、空港といったものより、社会サービスを育てようという目的である。保育所に関してはコンクリートと言われても、施設をきちんと整備していかなければ、「人へ」にはなっていかない。そういう意味でこの問題の解決には、現物給付は欠かせない。

規制緩和だの民営化だの、そういう議論は、整備した後の保育所の経営がどうあるべきか、という話でしかない。それも、経営の合理性の問題ではなく、新古典派経済学のワンパターンの「賃金を低下させれば雇用機会が増える」という神学を実現し経済学者の自己満足のためだけに民営化や規制緩和の話を進めれば、介護保険のように、担い手がいなくなって、残された担い手は低賃金、奴隷労働のような状態になり、あるいは必要な人的配置がうまくいかず、サービスの質は著しく低下するし、事業撤退が起きて、結局、待機児童の増大と役所の入所判定の権限の増大という、元の木阿弥になるだろう。

●いろいろ制度いじりをしてみたところで、今の保育所制度は自治体の持ち出し負担が多く、国の負担が実態より相当低いため、自治体のやる気の問題に結びついていく。
その中で、規制緩和してみても、官の取り分をどうのこうのやってみても、地方分権での社会的規制の撤廃をやってみても、自治体の中での保育所利用者の発言力をどう高めていくかということをやらない限り、問題は解決しない。地域社会が高齢者と専業主婦で占められている限り、市長に相当思い入れのある人がいないと、保育所の問題は解決しないと思う。また、特定政党が保育所保護者の要求の代理人を独占して、他の政党の支持者を排除して運動している状況がある限り、労働組合が応援しているような政党や保護者層の無所属候補でも冷ややかで、問題は解決しないなぁ、というのが、この間の経験。

●与党第一党の若手自治体議員たちの大半は、経済原理をふりかざしたりや世代間抗争を煽ることは得意でも、保育所の政策について細かく勉強しないもんなぁ。彼らの選挙公約に「待機児童問題解決します」などと入っているのに。革命を完全に棄てていない政党より非現実的・観念的なことばかり言う。

●私が保育所に関して非常に抵抗勢力のように思われるかも知れないが、私は
①待機児童問題がなくなること
②保育所に預けられる子どもが安全で、そこそこの満足性があること
③24時間365日安心して子育てできるための社会的資源であること
④一介の労働者でしかない保育所で働く人々が身を削るような思いをしなくても働き続けられること
⑤保育所の経営者が事業継続をでき、保育所を運営することで適正な所得を得られること
が満たされれば、どんな制度でもいいと思っている。しかし保育所が古い、改革に遅れている、そういう言葉から出てくる制度改革案が、今の認可保育所制度よりよい結果が生み出されるかというと、まだそれを超える制度を提案された経験はない。保護者層どうしの対立を煽るだけの下品なものが多い。新古典派経済学の改革案は、④⑤を必ず犠牲にする話ですから。

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