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2010.06.16

6/16 民主党の外交・安保政策がアメリカ傾斜した従犯は

社民党が純粋性を貫いて政権離脱した結果が、民主党の外交・安保政策をアメリカ寄りにしてしまっている、という皮肉な結果に。

民主党公約、外交・安保「現実主義」前面に(読売)

ただの現実主義ならいいのだが、ここで書かれていることは、アメリカとの軍事技術の一体化や、武器輸出三原則の廃止を目論む、民主党の一部の前原派の防衛族の意向を汲んだ政策となっているということ。

●どうせまたここで社民党は民主党批判を強めていくのだろうが、政権離脱してブレーキ役がいなくなったことがこのような結果になっているということをまじめに考えてもらいたい。そういうことを煽って冷静に考える時間を与えなかった体質と現党首の存在は明らかに弊害。
敵を作って党内の団結を保つことは党内政治であっても、多数派の形成を必要とする現実政治にはならない。政界再編のたびに有効な手だてを打てずに勢力を減衰させているのに、いつになったら現実政治で勢力を維持するために必要なことは何かということに気がつくのだろうか。
そこを克服しない限り、議員、秘書、スタッフ、支持者、支持団体の民主党への流失は止まらないだろうし、民主党に飽き足らないで何らかの理念的価値をもって支援してくれている支持者も、非社民の環境派や人権派の自治体議員を母体とした政治勢力が出てくれば、一気に社民党を見限ることになっていくだろう。

●社民党が小選挙区制批判の際に、代替モデルとして示す多党制による連立政権とは、連立政権内の特定政党の横暴にブレーキをかける機能があるシステムであり、簡単に政権離脱などと言ってのける連立政権への参加では、ブレーキが機能しない。

民主党公約、外交・安保「現実主義」前面に

 民主党は17日に「参院選マニフェスト」(公約)を発表する。

 米軍普天間飛行場移設問題をめぐる迷走が鳩山前政権崩壊につながった外交・安全保障分野では、日米同盟重視を前面に打ち出す「現実主義」(党幹部)に転換するのが大きな特徴だ。国家の外交・安保政策は、政権交代があっても継続するという「鉄則」に民主党がようやく近づいてきたようだ。

 菅首相は15日、参院本会議での代表質問で、「日米安保体制を堅持し、適切な防衛力の整備に努める」などと繰り返した。自民党政権かと見まがうような答弁だった。

 民主党が今回まとめた参院選公約は「日米同盟の深化」を冒頭に打ち出した。前回衆院選の政権公約で柱だった「対等な日米関係」は、日米地位協定の改定を目指す項目でしか触れていない。

 普天間問題では、「日米合意に基づいて、沖縄の負担軽減に全力を尽くす」とし、5月28日の日米合意を履行する立場を明確にした。合意は、日米が2006年に合意した元々の計画と同じ沖縄県名護市辺野古に代替施設を建設する内容だ。これに伴い、衆院選公約で掲げた「米軍再編や在日米軍基地のあり方は見直しの方向で臨む」とした方針は消えた。

 今回、外交・安保の公約をまとめたのは、安住淳・前衆院安保委員長や細野豪志幹事長代理ら、日米関係を重視する党内の中堅議員だった。

 民主党は、衆院選公約では、米国軽視とも受け取られかねない主張を展開し、鳩山前政権もこれに縛られた。普天間問題では現実離れした「辺野古以外」の移設案を追求し、日米関係が極度に悪化、政権の命取りとなった。この教訓から、安住、細野両氏らが軌道修正を図った。

 安保政策にことごとく反発してブレーキ役となった社民党が連立政権を離脱したことも、前向きな公約作りを後押しした。

 対中外交でも、前回にない項目が入った。中国が詳細を公表せずに軍備拡張を進めていることについて、細野氏らの意向で、参院選公約に「中国の国防政策の透明性」を求めることが明記された。「中国にしっかりと言うべきことは言う姿勢を示す」(民主党幹部)狙いからだ。武器輸出3原則の見直しを念頭に置いた「防衛装備品の民間転用の推進」も、社民党が政権内にあれば、盛り込めなかった可能性が高い。

 ただ、民主党はもともと社民党に近い考えの議員もいる「寄り合い所帯」だ。「安保や防衛のあり方の基本的問題で、いささか議論が貧弱だった」(北沢防衛相)との指摘も根強い。復活する党政策調査会で議論が活発になれば、混乱が再燃することも予想される。

(2010年6月16日06時19分 読売新聞)

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コメント

いつも興味深くブログを拝見しています。最近エントリの消費税増税論に関してはいろいろと考えさせられます。1点、ずいぶん前の話ですが、社民党の離脱問題でお考えをお聞かせくださるとうれしいです。社民党の離脱問題の直接のきっかけは普天間問題だと思うのですが、「社会民主主義」(欧米のものでよい)の内的原理から、このたびの日米合意は受け入れられるものだとお考えでしょうか。欧米の社民党であれば、「受け入れられないのだが戦術的に全面化しない方がよい」という選択をするということでしょうか。私の社会民主主義理解の浅さゆえの質問となりますがご了承ください。

投稿: Tsubosh | 2010.06.25 23:24

皮肉と言えば皮肉ですが、『社会民主』最新号で大谷昭宏が「主張し続けるのも結構だが、それだけでは普天間を動かせない」と批判していましたね。

テニアン誘致とかの代案があると社民党では言ってたにも関わらずアメリカは方針を変えなかったし、そもそも主張し続けたとしても何時になったら実現するのか道筋が見えない、ってのは何かこのエントリの趣旨と相照らすものがある様に見えます。

投稿: 杉山真大 | 2010.06.29 14:18

Tsubosh様

普天間問題や日米合意の問題と社民主義のイデオロギーとは何の関係もありません。純粋に沖縄への基地の集中をどう捉え、その責任分担を誰にさせるのか、という政策技術的な話だと思います。民主党がこの問題の処理をめぐって、派閥や出自を超えていろいろな動きがあることに見られるように、イデオロギーを超えて解決できる課題ではないかと思います。社民党でなくてはできないと言い張るのもいかがなものかと思っています。超党派で対米交渉を通じて長期的に解決していくべき問題だと私は考えています。

逆に右派・民族主義を立てている思想の側がこれへの態度は問われると思います。沖縄は日本ではないのか。防共一点張りで我慢を強いていいのか。かつて鬼畜米英を叫んだ者が、こんなこと容認していてよいのか、ということになろうかと思います。

杉山様

皮肉もわかりますが、あの党のおかれた境遇を考えるとここで突っ張らないとということなのでしょう。しかしやはり政権に残ってごねて、マスコミの話題になっていかないと、野党でワアワア言っている限りでは、自民党が手を組んでくれない限り、どうもこうもならないという感じですね。

投稿: 管理人 | 2010.07.10 23:15

ご返答ありがとうございました。(私なりに)よく理解できました。社会民主主義が、都市‐田舎の対立や、植民地問題といった課題にどう向き合うのかが知りたいと思いまして質問してみました。少し守備範囲の異なる話だと理解しました。
なお普天間基地について、「政策技術が必要」、「イデオロギーを超えた多数の賛同が必要」の2点をあげておられますが、その通りだと思います。とにかく「沖縄に基地を押しつけておけばよい」と考えは、根本的におかしいです。そのためには国民のもっと広い層の関心を呼ぶことと、アメリカと交渉できるだけの政治的な力が必要と思います。

投稿: Tsubosh | 2010.07.17 01:17

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