5/9 続・モンスターオンブズマン
過去記事の、モンスター・オンブズマンのHPを見ていたら、最近、その市の非常勤職員の一時金返還請求訴訟のことについて言及している。昔にも書いていたこととほとんど同じだが、厚顔無恥ぶりに本当に腹立たしくなる。
「民主主義社会ですので、議会(市民の代表で構成)重視の「準備書面」となっています。住民側弁護団「●●法律事務所」の皆さん、ありがとうございます。
枚方市職員の人件費が、民間の会社員の人件費と、「同一労働同一賃金」水準になるよう、●●●●は、さらにがんばってまいります。市職員の不正・厚遇・違法情報を、お気軽にお寄せください。改善・改革がんばります。」
全体的に意味不明な文章だが、いくつか言っていることがおかしいだろと思うところがある。
住民側弁護団って、原告はこの人しかいないだろう。全住民を代表した正義と思い込んでいるところに怖さを感じる。「私の弁護団」と書くのが正しいだろう。
HPでは、被告は前市長だけのようになっているが、実際の訴状では、市長、人事担当幹部職員、返還請求される対象として被告に加え非常勤職員となっており、民間の会社員の平均以下の非常勤職員の一時金を返還させる訴訟になっている。そういう訴訟をやりながら「民間の会社員の人件費と同一労働同一賃金」というのもおかしな話である。そもそもこの文章、同一労働同一賃金が、誰と誰を結びつけて同一賃金なのか、理解できない。正規職員との同一賃金であれば何の問題はなし。民間と同一賃金なら一時金の支払いそのものが問題となる理由がわからない。
また、原告が同一労働同一賃金という建前を振りかざすなら、その倫理も問われるべき。同一労働同一賃金は平等の価値にねざす。最近使われる「同一価値労働同一賃金」以上に、単純な平等性を求めている。
しかし、この原告、司法書士を開業するまで定職についた痕跡がない。そこの生活を支えたのは、親か、有力な支援者の支えだろう。私はそういう環境こそが公務員と民間労働者の賃金格差などという問題以上に不平等だと思う。
訴えられている非常勤職員にそうした恵まれた環境が全員にあったのだろうか。生まれと背景の資産に不平等があるところに目を瞑って、他人の差ともいえない不平等に権力の力を使ってひっかきまわすことが正義なのだろうか。
そういうことを省みず、彼の価値観では厚遇だとかやみ手当を受け取ったとか言いながら、少なくとも賃金の対価として労働を返してきた人間相手に、法律的知識の少ない労働者相手に、自分が実害を蒙ったわけでもないのに、あるいは社会を害するほどの不正があったわけではないのに、訴訟のねたに使い、自らは市議会議員(しかもこの地域の市議会議員には一般市では全国トップレベルの報酬が払われている)という究極の税金生活にチャレンジしてきたというのが、どうも私には許すことのできないことである。
●そもそもこの訴訟、市民参加や情報公開の対極にあるような、総務省の官僚の臨時・非常勤等職員に対する法律解釈の押し売りに根ざした理屈にもとづいて行われている。公務員制度のドグマにはまっている裁判所もその論理を追認しているが、研究者には、その解釈には限界と問題が多いと指摘している人も多い。
同一労働・同一賃金などと見事なことを言うなら、非常勤職員が労使交渉の結果として市と結んだ契約(労使協定)の内容が、民間労働者同様、認められるべきだろう。賃金については予算案として自治体の議会も承認しているものであったはずだ。
●こうした形式的違法性/合法性ばかりを追及していくやり口は、ハゲタカファンドやヤミ金融業者、かつての商工ローン業者が、法律を使って、人から必要以上の財産を巻き上げる構図を思い出してしまった。
●会社が家族を丸抱えにする雇用をやめ、社会の力が弱まり、自治体などがサービスを拡大せざるを得ない社会環境にありながら、正規職員の公務員は抑制され、福祉を中心に民間委託する業者の数に限界があり、臨時・非常勤職員を雇うしかない今の自治体。しかし臨時・非常勤職員として働いて、民間なら受け取ってもおかしくないと思っていた給料の一部が後々モンスター・オンブズマンの訴訟で返還するのしないのという話になるとすれば、その臨時・非常勤職員のなり手もいなくなるだろう。
やらなきゃいけない仕事があるのにやってくれる人がいない、そういうときに医師不足ではないがどうするんだろう。そんなことまでしての自治体にとっての正しさって何だろう。
●さらに過去日記をさかのぼると非常勤職員に対して「縁故」という言葉が次々に付けられている。名誉毀損ではないか。証拠でもあるのか。
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コメント
報道ステーションだったかな。
過去に解説者が「官製ワーキングプア」問題で、「何でも役所でやらないで、民間でできる仕事は民間で任せよ」「役所の仕事を減らすことが先決」と的外れなことを言っていたのを思い出す。なぜ役所の仕事が増えたのかわかっていない。
投稿: いつもはROM専 | 2010.05.09 22:32
そうなのですよね。
仕事は自己増殖するという本質はその通りですし、倒産がない役所はそうなりやすいにしても、今日の役所の仕事の多さは、そうしたものを超えた社会環境の変化によるものです。
他の先進国の役所がどうなっているのか見ればわかろうものです
民間だっていい対価がもらえるならそれでも受託してくれますが、値切って委託するわけですから、そんな状況でも仕事したいという事業者しか集まりませんよね。
投稿: 管理人 | 2010.05.09 22:48