5/8 日本医師会、増税容認論に転換。だが・・・
日本医師会が税収確保のための増税に踏み込んだ発言を始めている。
70年代は税金を忌避する3業種の一つであった開業医中心の団体が、増税を提言したことは注目すべきことであり、慶大の権丈先生をはじめとした医療政策・社会保障政策の議論の積み重ねを踏まえた発言だろう。折しも民主党を中心とする与党支持の会長が生まれた中でそうした発言が出てきたことは重い。
しかし残念なことに、「消費税率引き上げには「国の無駄遣い」の一掃が前提だとも強調した」という。それではダメだ。そういう前提を作ることが、財政状態を放置したままの、不毛な財政イデオロギー論争を続けてしまっている。
国の無駄づかいの一掃はやるべきことだが、それが終わるのを待つということはどういうことなのか。ムダ一掃は税収確保と並行してやるべきことで、前提などにしてしまったら、いつまでたっても財政の赤字垂れ流しと、社会保障の縮小は続き、もちろん医療へのしわ寄せは避けられないことになるだろう。医療だってムダと指摘されればムダとは言えない分野もないわけではないだろうし、何がムダな医療かはそれぞれの医師や診療科目によって見方が変わる。その違う意見の決着を見るまで増税できないなんてことになるのでは問題が先送りにされるだけである。
さらに、国の無駄づかいの一掃ということは、何がムダで何が適正な支出かどうか細部にわたって定義していかなくてはならない。当然、それは最大の社会保障支出にも適用され、とりわけ支出総額が診療報酬請求の積み上げでしか結果がわからない医療費支出については必ずメスが入れられる。つまり、安易にムダ一掃を前提と言ったときに、医師の専門的な裁量権が大幅に制約されるということになる。それは医師が嫌がることの一つではないか。
消費税引き上げ、日本医師会長が主張
日本医師会(日医)の原中勝征会長は7日、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、「消費税を必要だから上げると、国民にきちんと説明しなければいけない時代に来ている」と述べ、消費税率を引き上げたうえで、増税分を医療費などに充てるべきだとの考えを示した。
原中氏は、健康保険が使える保険診療で患者負担が原則3割になっていることに対し、「2割、1割に下げないといけない」と指摘。医療費の財源は保険料と税金、患者負担で構成されるが、患者負担割合を減らす代わりに増税の必要があると語った。
ただ、消費税率引き上げには「国の無駄遣い」の一掃が前提だとも強調した。
(2010年5月7日23時19分 読売新聞)
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