5/5 日経社説 介護・保育は外国から低賃金労働者を連れてくればいい
昨日の日経新聞の社説がとんでもない。
需要の急増する介護、保育、医療で経済成長させながら、公費を使わないために人件費を安く買いたたける外国人を使えと。菅財務相の、増税をこれらの業界に突っ込んで雇用を作っていき、内需拡大をしていくという構想を、官業による民業の圧迫などと書いている。
権丈先生のHPで日経の論調が変わったというようなことを聞いていたのだが、結局逆戻りしているような感じ。
生活できない賃金を払って、重労働させて、経済原理だ何だと最もらしいこと言ってしらばっくれるってのは、最終的には強制労働なんだってば。介護や保育労働者なら、モノを作っていないから、輸出用戦略物資を作っていないから、金融業のような付加価値の高い産業ではないから、低賃金でいいんだという発想が、高度成長期の固定観念にがんじがらめだ。
外国人を連れてきて低賃金で働かせることがどういうことか、想像力が無さすぎではないかと思う。今日、在日朝鮮人の差別問題ってそういうところにスタートがあったんでしょうに。
先の石原都知事の帰化人発言にあるように、今もって、在日朝鮮人の問題って解決していない。こうして日経が煽った経済体制で不況が固定化すると、かえってナショナリズムがひどくなっている。
●日経の社説の論理を展開すれば、経済的には官か民かということで言えば、NPOによる「新しい公共」がもたらす公共サービスなんかに補助金として公金を突っ込んだり、NPOの寄付金に政策減税をやるなんてことも民業の圧迫ということになる。何を間違ったことを言っているのかと思う。
経済にとっては、官か民かではなくて、それによって使われたお金がどのように社会に回るのかが問題のはず。貯金もできない生活水準の介護や保育労働者は低賃金労働者が多く、そこに税金を使っても、貯蓄が増えるのではなく必ず消費として民業にお金が流れる。人材が安定化することで、人材確保の調達コストも減る。人材確保に追われるだけではなくて、純粋にサービスに集中して経営することができる。
そういうメリットを相も変わらず、官か民かなどという低次元かつ深みのない評論をしているところが時代遅れの社説だと思った。
●昨日、赤木智弘さんのtwitterでもそういう議論が行われていて興味深かった。
障害者介護の介護士の賃金が高くなるとカネのために福祉をやる人が流れ込んで困る、と赤木氏に議論をふっかけた人に対して、そうやって調達する介護労働は脅迫によって成り立つ、と反論。ほんとうに視点がいい。
●福祉学部や高校の福祉科などの整備で、きちんと賃金・労働条件が整備されればやるという労働者がたくさんいるのだから、市場原理にしたがえば介護報酬や保育単価で賃金を改善すれば労働力不足は解決できるはずである。
●日経とアメリカ資本の合弁会社・日経BP社のライターが、社を挙げて社会保険叩きをやり、果ては厚生労働相にになってどんな状況になっているのか、少しは自己批判をしてもらいたい。
●こういう傲慢なことを書くから日経は好きになれない。シューカツの弊害に悪のりして金儲けしている会社の一つだとしか思えないが。
(「元気な経済」考) 介護・保育・医療を規制改革で伸ばそう 2010/5/4付日経社説
需要がどんどん増えていく介護、保育、医療で経済の成長を促すには、どんな仕組みが必要だろうか。
介護保険が導入されて10年。当初は保険を使ってサービスを受けるのに慎重だった要介護の高齢者も、最近は利用率が8割に高まった。団塊の世代がすべて65歳以上になる5年後は、利用者がさらに増え450万人を超すと予測される。
供給を促す策を
介護に限らず保育や医療を含め、社会保障の分野はサービスを必要とする人が急増しているのに、供給が追いつかない。規制や既得権に阻まれて、民間企業などが参入しにくい官製市場になっているからだ。
これらの分野を本物の成長産業にするには、参入障壁を低くする規制改革が不可欠だ。株式会社、非営利組織(NPO)などサービスの担い手を広げることが経済の成長を促し、雇用の場を増やす。
政府も介護や医療を成長分野に位置づけるが、どう伸ばすのか、はっきりしない。菅直人財務相は「増税しても使い方を間違えなければ成長に資する」と、社会保障による分配政策で需要を増やす考えを示した。
これは正しくない。官が需要をつけようとすると、国民や企業の税負担を増やして結局、民需成長の妨げにもなる。民がサービスの供給を競い、その創意工夫を引き出すよう促す策が肝心だ。人々の将来への不安を和らげるには制度設計を急ぎ、早く改革に着手するのが王道である。
介護で大切なのは、施設の新増設を促す規制緩和だ。有料老人ホームなどは、厚生労働省が総量を規制している。有料老人ホーム事業を手がける民間企業の経営者は「利用者が多い地域でも、経営が傾いたホームを買い取って再生させるのがせいぜいだ」と語る。これらの施設の総量規制は早急に撤廃すべきだ。
介護サービスを担う人材も足りない。要介護者の増加を考えると、政府は介護士を年に5万人程度ずつ増やす必要があると試算する。しかし仕事の内容がきつい割に給料が低いなどの理由で、なり手が大きく増える見通しは立たない。人材を日本人に頼る考え方を改める必要がある。
経済連携協定に基づくインドネシアとフィリピンからの人材受け入れは数百人にとどまる。日本人介護士の待遇が下がるのを恐れる業界団体に配慮して厚労省が制限しているからだ。数千人単位で受け入れなければ年5万人増の達成は不可能だ。
外国人に資格試験を課すのも過剰規制だ。2月に実施した看護師の国家試験は、外国人の合格率がたった1%余りだった。日本人は9割が合格する。日本語の壁が主因だ。
介護士、看護師とも母国で専門教育を受けている。高齢者らと対話するための語学を磨くのは当然だが、振り落とす試験では日本で介護職に就こうという外国人は減る。
保育分野の供給不足も介護と同じだ。社会福祉法人が経営する保育所は税の優遇や建設費補助が行き届いている。株式会社だとこうした優遇が受けられない。施設・人員などの基準を満たす保育所は母体が株式会社であっても、社会福祉法人と同じ優遇をするのが当然だ。民間企業を悪者扱いするのはやめてほしい。
保育所に入れない子供は潜在的に100万人。安心して子供を預けられる施設の増加は、企業経営者に女性社員の活用を促す。仕事ができる女性が子育てのために職場を離れる「損失」を食い止めれば、女性の働き手が増え成長を下支えする。
混合診療認めよ
医療分野も改革すべき規制が山積している。医療費は年3~4%の割で増えている。支出を公的な健康保険にだけ頼っては制度を持続させるのが難しい。公的保険が責任を持つ範囲を定め、自費診療とうまく組み合わせ需要に対応する工夫がいる。
まず、保険が利かない先進的な治療法や医薬品と、保険診療とを合わせて受けられる混合診療を原則、解禁するのが不可欠だ。病院の勤務医らの負担を減らすために、看護師に一部の医療行為を認める規制緩和や、医療に関する事務作業を専門とする「医療秘書」の増員も課題だ。
自公政権は医療機関へのレセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求を義務化しようとしていた。だが現政権は関連予算を削るなど義務化に後ろ向きだ。レセプト電子化は各種の疾病データの分析や治療法の標準化に欠かせないインフラである。
海外から患者を受け入れるルールを定め、IT(情報技術)を活用し遠隔診断を可能にするのも課題だ。これらは規制改革に後ろ向きな日本医師会の意向を気にしがちな厚労省では、なし得まい。国家戦略に値する改革なのだから、文字どおり国家戦略室が主導すべきである。
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