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2010.05.02

5/2 ジョブ型正社員という考え方についての感想

濱口桂一郎さんが、正社員並みに働いているパート、長期間にわたって働いているパートに対する「コンプライアンス」と称する無意味な雇い止めを救済するために、整理されたメモが興味深い。

ジョブ型正社員に関するメモ

パート労働に関する議論について労働者側も、雇用期間だけ注目して、かわいそうだから正社員化しろという正当すぎる要求か、正社員の聖域を守るために差があって当然という正社員中心主義の議論ばかりが行われていて、彼らのジョブの内容に踏み込んでどうするかという議論はあまり行われてこなかったように思う。
結果として、正社員とパート労働者の格差から仲間意識まで含めて、分断されている現状を放置してきたように思うし、何より雇い止めという問題が、全然整理されないで来たように思う。

今、多くのパート労働者がやっている仕事は、遠隔地転勤に応じるほどの生活を犠牲にして会社に未来を捧げるような仕事ではないが、一つの担当業務から見れば不可欠な戦力で、そこには技能の蓄積や安定した勤務が求められるし、一方では担当業務そのものが不必要になった場合には、退職をお願いしなければならない仕事でもある。

今は担当でないのであまり言及すべきでないが、この濱口さんの議論の整理は、もちろん公務員には当てはまりすぎるぐらい当てはまる議論。無制限に(メンバーシップ型)正職員を雇うことが不可能な現行公務員制度や、正職員数を増やす政治的合意ができない環境のもとで、各種相談員、図書館司書、保育所、学校給食、看護など、仕事の専門性が求められ、別職種への異動がしにくい職員は非常勤職員の雇用とならざるを得ない。彼らには、地方公務員法や地方自治法の解釈から来る1年ポッキリの雇用を繰り返すやり方が行われている。そのことはあまりにも弊害が大きい。人権より形式的コンプライアンスだけを求める変な市民派の政治家たちの住民訴訟にも晒されている。
で、継続雇用をさせると確約させれば、今度は上限3年とか5年とか必ず雇い止めする期間をわざわざ設定したりして、ますますわけのわからないことになっている。

こうした職種の非常勤職員について、勤務時間の長短で差異を設けるのではなく、ジョブ型正職員として位置づけることはしっくりする落としどころである。例えば保育士であれば、今のような1年ポッキリの雇用を繰り返すよりも、子どもが減って仕事が減ったら解雇される、という条件での雇用に移行することは、地方公務員の非常勤職員問題の解決に有効な方法だと思う。幸か不幸か、公務員制度については、民間労働基準法のような、有期雇用の上限はないため、こうした扱いはむしろ民間より先行してやることができる。

その上で、濱口さんは、傾斜の強い右肩上がりの賃金が必要な背景となっている教育費などについての私費負担を解消するような社会保障のあり方が必要と指摘し、また雇い止めにあたっての転職のための職業訓練の仕組み、失業給付の充実なども言及している。

将来的には、メンバーシップ型正社員とジョブ型正社員の相互乗り入れも提言していて、そのことで無慈悲な働かせ方を解決していく道にもなるだろう。

課題はいくつかあり、ジョブ型正社員にいくら賃金を払うのが妥当かということである。今のパート賃金のように独立生計が難しい水準で固定化されれば、ジョブ型正社員という考え方が期待する、安定した勤務とすることが難しくなろう。リビングウェッジや、その少し上をいく水準、イメージとしては年収300~500万円程度は保障されないと、変な制度になってしまう。
運用にあたって何をもって「仕事がなくなったから解雇」とするのか、労働組合の監視がなければ経営がこれまでパート労働者にやってきたように自由に解雇するのと同じことになってしまう。労働組合にパート労働者、ジョブ型正社員を入れ、運用を監視・点検することが不可欠である。
適用職種も明確にしないと、かつての総合職・一般職の違いのような、身分や性差を当たり前とする格差になりかねない。ここにも制度の目的をきちんと徹底して、労働組合が監視することが重要だと思う。
そもそも論になる可能性があるが、ジョブ型正社員という考え方を入れた場合、課題は、元から存在しているジョブ型の職種の正社員(正職員)をどう処遇するかということになろう。「ジョブ型正社員」の労働条件に統合できればそれに越したことがないが、あまりにも低劣なパート労働者の労働条件を改善するところからスタートすると思うので、統合すれば少なくない不利益変更になる。入口の労働契約の段階の約束が保持されるということで既得権を追認できれば、今よりは良い制度になる、という整理ができるが・・・。

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コメント

ジョブ型の労働者(わたし流に言えば“職能労働者”ですが)の世界にメンバーシップ型の労働判例をゴリ押ししている現状についての認識はhamatyannさんのご意見とほぼ同じです。ただ、この考え方を現実に製作として実施していく最初の段階で、メンバーシップ型労働者とジョブ型労働者との生存競争になりそうです。現状では多勢に無勢ということで、メンバーシップ型ポピュリズムにやりこませそうな気がします。
先ず、職能という労働力価値に対する社会的価値評価をきっちりとやるべきでしょう。
さらに、職能の時系列的価値変容や、ある事業場での1つの職能の不要化というリスクに対するペイ(価値上乗せ)をメンバーシップ型のグループに認めさせるにはどうすればよいかを考えなければならないと思います。何せ現状は、裁判所も労働行政も、メンバーシップ至上主義(原理主義と言っても良いでしょう)で固まっています。
とりわけ舞台技術の業界にいる私のようなジョブ型(それも日雇い・・)は、超異端視されていますので、これまで幾ら発言しても存在すら無視されてきた感があります。大げさではありません。そもそも加盟の単産労働組合からも「職能による仕事の選択よりも常用雇用(=ジョブ型からの脱却)を目指すよう」言われてきましたし。

投稿: endou | 2012.03.06 01:07

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