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2010.04.10

4/10 私のベーシック・インカムに対する考え方まとめ

ベーシックインカムについて、知人から意見を求められて、この間、考えていることを整理してみた。

ベーシックインカムの利点として、国民全員に一律で金銭を給付するので、基礎年金額の裁定とか、生活保護の審査とか、そうした面倒な手続きが簡素化されること、それとともに、過去のうっかりミス、事務手続きミスなどにより年金権などが最低額について、断絶する心配がなくなるということである。役所にアクセスすることが難しい人たちにとってより確実な生活保障になるということである。

しかし一方で、やっぱりデメリットが大きいというのが以下の通り。

第一に財源である。今もって日本の財政は最も好況期でも赤字予算を組まなくては運営できないほど収支不足にもかかわらず、月7万(≒基礎年金満額・それ以下の水準でベーシックインカムの意味も効果もないだろう)ベーシックインカムを始めるとなれば、1億2500万人×年84万円つまり105兆円の予算が必要である。
ベーシックインカムに重複する、基礎年金の廃止、所得税の基礎控除の廃止、生活保護費の生活給付額の減額、それらの事務費用などを引いても、そもそも国の予算が93兆で多い多いと騒がれる状態なのだから、それを超える支出などタダでは捻出できない。つまりは、増税が不可避となる。
結果としての実質受取額は、増税の差引で、相当の貧困層でなければ、今と変わらないか増えるということになる。
それなら最初から貧困層に集中した経済支援を行うべきだろう。

第二に、105兆円にも及ぶ支出となれば、年金の国庫負担を超えて、国の予算での最大の支出となる。年金と違い、年金と違い、年金保険料によって拠出される特別会計に国庫負担がひもついているようなことはないから、毎年の予算案でベーシックインカムの支給額を算定しなければならない。ベーシックインカムが維持できるかどうか財政状況次第ということになる。さらには、ベーシックインカムの額を維持しようとすれば、子ども手当のために様々な政府支出が切りつめられた今年度予算の作成過程のように、しわ寄せを受ける施策はたくさん出てくる。小泉政権下そうであったように、社会的に発言力の弱く偏見にもとづく自助努力をすぐに要求されてきた、保育、介護、ひとり親、生活保護、知的・精神障害者などの福祉分野を直撃することになるだろう。

第三に、保育、介護、高等教育、義務教育課程の諸経費について自己負担を強いられる社会制度のため、日本の賃金は生活給という性格が色濃い。そういう社会環境の中でベーシックインカムが始まれば、ベーシックインカム受給分の賃金相場の下落が進むことになる。最初に非正規労働者を直撃することになって、賃上げはまず望めなくなり、最低賃金すれすれに張り付くことになるだろう。

第四に、現金で解決できない福祉については、引き続き福祉サービスを整備していく必要に迫られるが、ベーシックインカムに圧迫されている政府の財政のもとでは、そうしたものの整備は現金渡しているんだからいいだろ、という話になりかねない。

第五に、ベーシックインカムを導入してまで役所の恣意性を排除しようとするなら、役所の仕事の仕方を変える方がはるかにローコストである。とりわけ現金給付という福祉サービスの中でも最も企画能力がいらない簡単な事業はいくらでも改善・改革が可能で、利用者の権利性を尊重した事務は可能だろう。

以上のようなことが起きて、ベーシックインカム導入して誰が笑い、誰が泣くのか、考えれば、左派人士がベーシックインカムについて安易に賛成の立場を取ることが実に安直な態度だと言える。

現在、保育に使われている国家予算は、直接的な補助で4000億弱、交付税措置分あわせて1兆円かかっていない。介護は6兆円。生活保護は2兆円、基礎年金は6兆円、障害福祉は2000億円で、これらの充実・改善のコストを加算しても、105兆円もかからない。したがってベーシックインカム導入などという議論に振り回されずに、多少の増税をすればこれらの福祉サービスは十分向上させることができる。かつ、国民の必要な福祉サービスにピンポイントで、良くできる。

●ベーシックインカム導入の議論が、子ども手当支給要件の問題のように、在日外国人に給付するなとか、高所得者には支給するなとか、偏狭な議論が行われ、かえってナショナリズムをたきつけたり、差別感情を増幅するようなことにならなければいいなぁと思う。

●学習院の鈴木亘教授が、福祉サービスの利用者が官僚と癒着しているというような論文を書いてフォーサイト誌に寄稿したという。はじめに結論ありきで文章を書くと福祉サービスの利用者間の対立を煽り何の発展性もない見苦しい話になる。

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コメント

考え方、思想は人それぞれですので
間違って考えられてる部分のみ助言いたします。
最後のほうに書いてある高所得者に支給をするかと
いう部分ですが、論議する予知なく支給となります。
なにせ、「ベーシック」なのですから。
言葉は汚いですが、生まれたての赤ちゃんから
棺桶に入る寸前の人まで、国民であれば一律で支給する
のが基本となります。

投稿: supy | 2010.04.11 15:53

ベーシックインカムが誰でも支給されるなんて基本はわかっていますよ。
しかし、予算が足りなくなれば、誰に支給しないかという例外の議論が出てくるわけです。そのときに高所得者や在日中国・韓国・朝鮮人、外国人居住者、住所のない人に払わないなんて特約を付ける可能性がないわけではないでしょう。
最後の方ではそういう可能性がある、と言っているのです。

現金支給という誰でもが受け取りたくて、福祉の必要のない人にまで施しをする施策をやれば、本質的には差別でしかない面倒くさいことが起きるということに、ベーシックインカム賛成論者は考えていないのかといつも疑問に思います。

投稿: 管理人 | 2010.04.11 18:45

ベーシックインカムの財源は、
「政府通貨」を発行すれば、簡単に作れます。
政府がお金を印刷し、国民に配るだけです。
簡単です。

財源を、タダでは捻出「出来ます」。増税が「必要ありません」。赤字国債で「借金をする必要もありません」

政府通貨でベーシックインカムをやると言う、
「社会信用論」と言うものがあります。

投稿: 浩由 | 2010.04.13 22:19

へぇ、ベーシックインカム論者って、そんな論立てをしているんですか?
そこまで知らなかったので、驚いています。

私の常識(世の経済学を多少とも囓った人ならケインジアンでも新古典派もマルクス経済学も同様に言うと思いますが)では、以下のように受け止めます。

政府通貨って、日銀を飛び越して政府が直接お金を刷るなり国民の銀行口座に振り込むということですよね。
お金と物とは相対的な関係で物価が決定されるわけですから、そんなことやって毎年毎年100兆円もの通貨がばらまかれたら、インフレが始まりますね。原因が実態経済に基づくものではないので、相当な悪性のインフレになるのではないかと思います。
インフレになれば、7万なり8万なり配っても、それは5万円分のものしか買えなくなったり、ひどいときには2~3万円分のものしか買えなくなります。
また、政府通貨は国が無期限の為替手形を国民にばらまくようなものですから、貸借対照表的に考えると国の債務になります。結果は赤字国債と同じなわけです。赤字国債と違って証券会社で保管されずどんどん人に渡っていきますから、最終的に誰が日本政府の債権者になるかわからなくなります。外国人の手に落ちれば、外為市場を通じてドルなりユーロなり、元だったりルーブルなどに換金請求されます。そのときに日本の民間経済の輸出代金で決済する能力がなければ、政府が弁済しなければならなくなるでしょう。
それがうまくいなかければ戦争に発展します。

投稿: 管理人 | 2010.04.14 00:39

社会信用論ってBIと結構関係しているんですね。ググってみたら、BI絡みのがヒットしてますし。
http://bijp.net/studybi/article/112
ただ、BIの財源については色んな案があるそうですね。
「2008年度の総所得総額は約257兆円。BI導入で所得控除が不要となるので、仮に一律45%の所得税を課せば115兆円が捻出可能。年金や生活保護などの現金給付も中止すれば更に5兆円捻出できる」(小沢修司)
「日銀を、民主的な政府の管理の下での国立銀行に転換。国立銀行から公共通貨(政府紙幣)を発行し、その公共通貨を財源とする。個人単位で無条件のベーシック・インカムで公共通貨を支給することで購買力が上昇する」(関曠野)
「現行貨幣と交換可能な公共通貨を電子マネーで発行、公共通貨には月1%程度の減価機能を持たせ、その減価分を財源に」(古山明男)
「税金を消費税に一本化し充当」(ヴェルナー)

ちなみにインフレ懸念については、こう回答しているそうです。
「人々の生活を保障する程度の額であれば、需要が生産を超えることはありません。 むしろ、休眠していた供給能力が目を覚まします」

投稿: 杉山真大 | 2010.04.16 20:25

社会信用論って、経済学のイロハすら押さえないとても雑な議論なんですね。信用であれなんであれ、現金がそれだけ根拠なく流通始めたら、どんなことになるかぐらいわからないで、観念的に空想を述べあっているだけですね。

何で社会は年金増額よりも介護保険創設という選択をしたのか、ということが全く理解されていません。
また介護保険制度が、家族介護への現金給付をしなかったその理由をきちんと学び取っていないからです。
健康保険制度がなぜ現物給付なのか、全く理解されていません。

現金をたくさんあげたところで救われるのは貧困層だけで、他の多くの福祉を必要としている人は、サービスがあるかないかの方が重大問題なのです。

福祉=現金配布という、年金くれくれ老人みたいな福祉論がよりによって左翼(家族の介護や保育で苦労もしたことない連中だから言えるのだろうけど)いまごろむっくり起き始めているというのは情けない話です。

ベーシックインカム推進論者は、否定論者のモラルハザードになるという批判に反論しているだけで、社会全体の仕組みのなかでどんな結末を迎えるのか、まったくリアルに考えていません。

紹介していただいたHPの一節です。
「Q4. ベーシック・インカムが出るかわりに社会保障がなくなるのではありませんか。
A4. いいえ。
もどる
ベーシック・インカムで豊かな経済ができ、医療、教育、福祉などの社会保障はいっそう充実します。 ただし失業保険、生活保護、基礎的な年金はしだいにベーシック・インカムに置き換わります。」
医療・福祉・教育(なぜかこれに保育や介護がないところに、高度成長期的オヤジの現金崇拝思想がよくわかるものです)がどうして充実するのか、全く書かれていません。私が不安なのは、こうした現物の公共サービスが現金やってんだから自分で何とかしろという話しにすりかわらないのか、ということなのですが、これでは何の証明にもなっていませんよね。

投稿: 管理人 | 2010.04.16 23:48

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