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2010.03.22

3/22 アメリカの医療保険制度改革をめぐって見える「社会主義」とレッテルを貼ることの愚かさ

アメリカで医療保険制度の改革が行われ、僅差の議会の可決で前向きな方向に向かったが、それでも「社会主義になる」などと愚にもつかない批判をしている人たちがいるというのでびっくり。日頃、政府の効能を言えばすぐに「社会主義者」とレッテルを貼る日本の新自由主義者でも、公的医療保険制度を否定する人はごくわずかで、このアメリカの自由主義の原理主義者の存在には毎度驚かされる。でも白人ばっかり。

●この場合の「社会主義者」とは魔物としての社会主義者という意味で、共産主義に対する脅威を課題に宣伝されてきたアメリカならではのレッテルである。アメリカという新自由主義の母国と、中国という一足飛びに新自由主義化した共産主義国に挟まれた日本では、社会主義のイメージが中国・ソ連・北朝鮮しか浮かばず、公共事業ケインズ主義をもって社会主義などと言い放って無知をさらけ出しているバカもたくさんいる。

●こんなになってしまったのも、旧社会党が、社会民主主義の政党としてきちんとした道を歩まず、平和運動だけで団結して、右派は偽悪趣味的に自民党的な人間関係優先・コネ社会的行動をすることを政治だと思い、左派は左派内の統一と団結のために指導者自身も現実政治には使い物ならないと分かり切っているのに、わけのわからないイデオロギー論争に終始したことにある。日本ではついに社会民主主義を唱える政治勢力は無くなり、ポスト新自由主義の時代に、社会民主主義的な色彩のあるまともな処方箋があっても、何一つ通らない事態に立ち至っている。
日本では、きちんとした欧州標準の社会主義のイメージが根付かず、マルクスレーニン主義に毒された社会主義者と、社会主義=共産主義と宣伝してアレルギーを煽る保守勢力が、お互いに中国やソ連の受け売りの全体主義の変形としての社会主義を宣伝しまくったことに原因がある。
それでも80年代前半までは、そうじゃないと言い切る人も少なくなく、それなりに支持をする層も少なくなかったが、90年代からそうした基盤も崩壊していった。

●先週のAERAも社会主義化する日本などとタイトルを打っている。曰く子ども手当がそうなんだそう。現物サービスを充実せず、無差別現金給付を行うのであれば、それは新自由主義の変形である。

●私は社会民主主義者だが、それでも役に立って不幸な人が少なくなれば社会主義であっても新自由主義であってもいいと思っている。政策論争で負けそうになると、何かと社会主義とレッテル貼る方が、イデオロギーに振り回されすぎなんです。

米下院:医療保険改革法案を可決2010年3月22日 11時59分 更新:3月22日 12時38分

 米下院本会議は21日、公的補助を充実させて国民の保険加入率を拡大する医療保険改革法案を219対212の賛成多数で可決した。医療保険改革を内政の最重要課題と位置付けるオバマ政権にとって、大きな成果となった。

 オバマ氏は同日、ホワイトハウスで記者会見する。内政上の具体的な成果はオバマ氏の求心力回復に直結し、外交面にも影響を及ぼしそうだ。

 国民皆保険制度がない米国では国民の4千万人超が無保険状態で、2019年には5400万人に達する。保険会社の支払い拒否や医療に伴う破産も社会問題化。法案は中低所得層に税額控除や補助を付与した上で、国民の保険加入を事実上義務化。保険料高騰を抑制し、既往症による加入拒否などを禁ずるため保険業界への規制を強める。

 この日可決されたのは上院が昨年12月に可決した法案。下院の意向を反映した修正条項も同日可決し、週明けに上院を通過、成立の見通し。修正後の法案は10年間で9400億ドル(約85兆円)を費やして保険加入率を現在の83%から95%に拡大。公的保険の運用効率化などで財政赤字を1380億ドル削減する。

 共和党など保守派は財政支出拡大を批判し「社会主義化への第一歩」と強硬に反対。「国家の役割」をめぐり世論を二分する論争が続いた。

 1月下旬の上院補選で民主党が敗北し安定多数の60議席を割り、法案成立が危ぶまれたため、民主党は単純過半数での上院通過を可能にする特殊な採決手法を採用した。(共同)

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コメント

社会主義とばかりに非難するのは、これこそ論理のすり替えですよね。
極端な話、様々な要因で飢え死にした発展途上国の人々に対して「飢え死にするのは飢え死にした本人が悪い」などという考えそのものですよね。

投稿: リニモ1号 | 2010.03.23 17:28

やっぱり社会主義だと思いますが。
保険は各人にリスクに応じて各人が負担すべきものであって、他人の分まで負担させられるオバマケアや日本の国保は間違いです。

投稿: ユージ | 2010.03.24 09:44

ユージ様
そういうことが社会主義で他人の分まで負担されるのはかなわない、とおっしゃるなら、国保だけが問題ではなく、国民皆保険という理念が問題のはずです。公的健康保険に保険料を払わず、その分貯金して、病気になったときにその貯金を取り崩されるようなことをされた方がいいと思います。
給付を返上するかわりに保険料を払わない人を刑務所に入れたり、無理矢理保険給付をするような仕組みは日本にはありません。
まぁ、そういうことをやっている人が重病になって、民間保険料が不払いで加入者資格を失い、いよいよ医療費も何も払えなくなると、生活保護の医療給付にすがらざるを得なくなるわけで、これがまた究極の社会主義となるわけです。
やがて野垂れ死んで、死体が腐乱して、老親やご兄弟に多額のアパートの補修費用を請求されたり・・・。それも叶わなければ役所の行路死亡人として公費で処理されます。立ち会うのは市役所の福祉課の職員と、福祉的な活動をされている宗教家だけです。

民間医療保険の不払いトラブルというのも経験したことないでしょうね。払わなければ利益が出るというインセンティブが彼らに働くのですから、全加入者に比べて絶対に少ない病気の加入者の利益を最善に考えることはできません。疑って難癖つけて、それでもというときに保険金が出るものです。

たかが風邪で病院に行ったりして、保険証を出すことで、どれだけの公費を使ったか考えたことありますか?具体的にものごとを考える癖をつけられた方がいいと思います。

投稿: 管理人 | 2010.04.08 21:37

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