2/2 改善された内容・週刊ダイヤモンドの保育所記事
週刊ダイヤモンドが、電車の中吊り広告で、黒地に白抜きで「保育園の闇」と打っていて、そのダーティーな感じに、またか、という思いでおそるおそる手を出す。残念ながら「闇」という内容ではなくて、むしろ比較的冷静な記事で、前回記事と比べて、よく努力して学ばれたと思っている。前回が0点だとすると、今回は65点。
ダイヤモンドはその経営主体について、株式会社性善説で、社会福祉法人だって悪いことしているところあるだろ、という主張。それはそれでいいが、私は利益を上げなければ株主に突き上げられる株式会社が運営することは副次的であるべきだと考えている。そこが違う。一部の社会福祉法人の悪徳を、全体であるかのように書くのも、よろしくない。ここが減点。
あと厚生労働省が自治体独自の保育所制度を省益に反するから、規制緩和に踏み切っている、などという書き方もよろしくない。保育所制度が歪み続けているのは、保育財源不足で、厚生労働省の問題よりも、財務省、さらには国民世論の問題が大きい。
社会福祉法人の保育所ばかりを保護してきた保育所制度の問題を、仙谷行政刷新大臣の言葉をひいて自民党のせいだという決めつけもおかしい。自民党は保育所を守ってきた一方、その地方議員の後援会婦人部などの支持者はそれより圧倒的な大きな声で地域社会で働く親を非難し続け、西欧先進国が社会福祉に力を入れている時期に、その責任を伝統がどうした、女がどうあるべきと後ろ向きに対応してきた責任もある。自民党という存在が保育所を守ってきたのか否定してきたのか、単純に言い切れない。ただしプラスもマイナスも慎重に対応してきたというのが正しいと思う。
保育制度にとっての主要敵は、わずかばかりの税金を余計に払うのを惜しみ、無駄を無くせ、福祉の利用者は(経済的に)自立しろと絶叫してきたような類の、俗論である。
週刊ダイヤモンドを買わない人にまで誤解を招く「保育所の闇」という中吊り広告も問題。
イデオロギーにふりまわされてはいけません。で、マイナス35点。
以上のこと以外はおおむね、事実関係、因果関係をふまえており、今回の記事は評価したいと思う。
前回より考え方を変えて評価したい点は、最低基準が国際的な児童福祉施設のものより下回っているという事実認識をした上で、保育所への補助金について「この数字が最低基準を満たす部分のみの金額」で現行の最低基準が「国際的に見ても危険な水準」と、最低基準が最低限守られるべきものと軌道修正したことである。前回は、最低基準があるから待機児童が発生し、これを守ろうとする保育関係団体や労働組合、利用者団体が、自分たちの利権のために陰謀をはりめぐらしていると書いていた。認識が大きく改善された。
税控除より手当という考え方以外、政策効果が不明確ない子ども手当のために、セーフティーネットである保育所増設の資金を失ったことに対する痛烈な批判は同感。
また、社会福祉基礎構造改革にもとづき、社会福祉法人の第三者評価があるのに全国的には実施されていないと書いているのも、正確でかつ効果的な指摘である。
今回の記事については、ちゃんと取材したかはわからないが、筋道立ったものを調べて書いたと思う。
●副題「増えぬ新規参入減らぬ待機児童」
減らぬ待機児童はともかく、増えぬ新規参入は、規制緩和にあるのではなく、きちんとした保育所建設の補助金と、持続的に運営できる保育所運営費があって、かつやりたくもない人に保育事業をやらせるわけにもいかないことから、手を挙げる事業者が少なければ、直接、自治体営の保育所を作るしかない。
●保育所事業に対する株式会社参入に対する私の考え方は、規制付きで賛成。公益を最優先にし、保育園の補助金をきちんとスタッフに支払うのであれば、株式会社の参入そのものは否定しないし歓迎したい。鉄道会社など、地域から事業撤退・逃避できない産業が、関連事業として運営するなら歓迎されるべきだ。また、不動産会社などが、住宅を売りまくった罪滅ぼし的、あるいは購入者サービスとして、開放的な保育所を作り運営するなら、意味も大きいだろう。
かつて、NPO法人制度ができるまで、簡素な手続きで法人を作ろうとすれば株式会社・有限会社を設立するのが容易で、公益事業を株式会社でやっているところもないわけではないからだ。
しかし株式会社は、株主のものであり、今は企業転売が容易にできる。私のブログにかつて「株式会社でも一所懸命がんばっているんです」とコメントした都内の株式会社の認可外保育所の経営者が、今何しているのかと調べたら、保育事業をどこかに売り払ったみたいで、その後転売され続けているということを最近知った。まじめに働く人の仲間は誰か、考えてしまうのである。
事業撤退に対する規制やルールもなく、さいたま市認可の家庭保育室、ハッピースマイルが破産し、突然閉鎖された事件を思い出すと、本質的には、保育事業には親和しないところもあるのではないかと思う。
また人件費や保育士の労働条件をダンピングすることに対する規制はこの日本にはなく、そのことのモラルも問われる必要がある。
株式会社が参入するのに、参入促進で規制緩和ばかりすることが適切なのか。以上のようなマイナスをどうクリアされるのか、必要な規制はまだまだあるだろ、と思うところである。
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